REVIEW · 2011-04-18
Portal 2
Wheatley と Cave Johnson の遺産
第一印象
廃墟と化した Aperture Science。植物が壁を破って育っている朝の光。Chell は再び目覚め、Wheatley の道化めいた声に導かれて廃墟を進みます。
ポータルガンは健在です。けれど施設は崩壊しかけ、テストルームは壊れた家のように傾いている。
Valve は前作の3倍の長さの続編を作りながら、密度を落とさないことに成功しました。これは続編設計として極めて稀な達成で、Half-Life 2 の Episode 群と並ぶ Valve の調律技術の頂点です。
メカニクスの言語化
前作のポータルに加え、推進ジェル(青)、加速ジェル(オレンジ)、トラクタービーム、空気橋、白塗料が登場します。
新メカが1章ごとに導入され、最終章で全部が組み合わさる。教科書のような積層構造です。
新ギミックは多いけれど、ポータル自体の操作感は前作と完全に同じ。プレイヤーは既存の身体記憶を保ったまま、新道具だけを覚えればいい。続編設計の理想形です。
このゲームの魅力
Wheatley の掛け合いと Cave Johnson の過去録音、笑いとSF叙事詩が同居する濃密な脚本。前作の3倍の長さで、密度は落ちない。Stephen Merchant の声の演技が、Wheatley を映画級のキャラクターに引き上げています。
Aperture Science の歴史を、廃墟の構造そのものが語る背景設計。70年代、80年代、90年代の施設が地層のように重なり、プレイヤーは下に降りるほど古い時代を歩く。背景アーティストの執念が、解法の合間の景色に常に存在しています。
そして協力プレイモードの存在。2人がそれぞれポータルガンを持ち、相手のポータルに飛び込む。一人プレイとは全く別のゲームで、それでいて同じメカニクスから派生している。これは続編の追加要素として、ジャンル史でも数えるほどしかない達成です。
ゲームデザインの工夫
協力プレイモードでは、2人のプレイヤーがそれぞれポータルガンを持ち、相手のポータルに飛び込みます。物理ジョークが新しい言語になる。これは単に2人用モードを足したのではなく、『2人プレゼンスを前提にしたパズル設計』を一から組み直した結果です。同じポータルガンが、人数によって全く違う動詞に化ける。
新ギミックの導入順は前作以上に丁寧で、1章1ギミックの原則を貫きつつ、終盤で全部を同時に使う『集大成パズル』を必ず1-2面入れる。Patrick's Parabox の章構造と同じ思想を、3Dアクションパズルに適用したと言える設計です。
もし自分が続編を設計するなら、新ギミックを5つも足す勇気は出ないと思います。Valve はジェル類だけで3種、トラクタービーム、空気橋、塗料と6種以上を追加しつつ、ポータル自体の純度は守った。これは『新規より既存の深掘り』を選んだ Talos 2 とは逆で、Portal 2 は『新規追加で広げる』方向を取りました。両極の判断ですが、Portal 2 の方は基礎(ポータル)が極めて頑強だから成立した、と読めます。
難しさの手触り
詰まりすぎず、けれど中盤の複合ジェル面では考え込みます。シングル10時間、Co-op追加で15-20時間。
難しさラベルは『標準』。前作とほぼ同じ難しさ帯を狙っていて、これは続編で安全な選択でしたが、上級者向けのコミュニティチャレンジマップが Workshop で無限に提供されているため、欲しい人はそちらに行ける構造。
結論
ポータルというアイデアの完成形。これ以上の続編が出ないのも、ある意味では納得できる到達点です。一人称パズルというジャンルの教科書として、Portal と並んで永久参照されるべき一本。
制作者として真似たいのは、『協力プレイを後付けではなく根本設計に組み込む』姿勢です。Portal 2 の Co-op は、一人プレイの延長ではなく、最初から並列で設計された別ゲーム。これを一つのパッケージで両立させる体力は、Valve だけが持っている地力です。
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