REVIEW · 2012-01-06

Q.U.B.E. 10th Anniversary

白い箱、色の論理

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第一印象

気がつくと、白い箱の中にいました。グローブを着けた手が、空中に浮かぶ赤いブロックを叩く。

ブロックがせり上がり、その上に乗って次の部屋へ。説明はない。色だけが、何ができるかを語ります。

Toxic Games は本作で2012年にデビューし、10周年版ではナレーション、ストーリー、追加章を加えて再リリースしました。原典は学生作品の延長で、それが10年かけて磨き上がった珍しい例です。

メカニクスの言語化

赤いブロックは押すと飛び出す。黄色は階段になる。青は跳ね返す。色とアクションが一対一で結びついています。

覚えるルールを、片手で数えられる軽さ。シンプルさが、複合的なパズルを組み立てる土台になります。

新ギミックの追加はゆっくりで、4-5時間の本編で5色程度。それぞれが組み合わさって、終盤は3色同時の連鎖を要求する場面が出てきます。

このゲームの魅力

ミニマルな白色空間にカラーブロックだけが浮かぶ、視覚的に最大限澄み切った美意識。色の論理だけで4時間を成立させる純度。

Portal の影響下にある作品の中でも、Q.U.B.E. は『色のアフォーダンス』に振り切った方向性で個性を出しました。Portal の『青と橙のポータル』が空間操作だったのに対し、Q.U.B.E. の色は『その色のブロックは何をする』という素直な対応関係。覚えやすさと組合せの自由度のバランスが、Portal とは別の地点に着地しています。

10周年版で追加されたナレーションは、元の沈黙の中に物語性を導入しました。これは賛否あって、原典の禅問答的な静けさを愛する人には不要かもしれない。けれど初見の人には、ナレーションが導入として有効に機能しています。

ゲームデザインの工夫

ブロックの色が即ち挙動という、究極に分かりやすいアフォーダンスです。プレイヤーは色を見た瞬間、何ができるかを認識する。これは Portal の青/橙ポータルと同じ思想で、UI を一切使わずに『何をすればいいか』を世界の側に置く設計。

もう一つの工夫は、章ごとに『色の組合せ』を主題化していることです。第1章は赤のみ、第2章で黄が追加、第3章で青、というふうに、新色が出るたびに『その色だけの章』が用意される。Parabox の1章1概念に似た構造で、商業作品としては最も丁寧な学習設計の一つです。

もし自分が同じ題材を作るなら、色の数で必ず迷うはずです。Q.U.B.E. は5色に絞り、それ以上は増やしませんでした。これより多いと覚えきれず、少ないと組合せが薄くなる。Portal が『2色』に絞った極北を意識しつつ、Q.U.B.E. は『5色』を選んだ。両者の中間で、似たような『色付きパズル』を作るゲームが多数あるけれど、Q.U.B.E. ほど色の対応が明晰なものは少ない。

難しさの手触り

4時間で本編、難所はありません。Portal の影響下にある作品の中で、最も澄んだ手触りを持ちます。

難しさラベルは『標準』ですが、これは Portal よりやや上、Talos より下の中庸帯。一気に走り抜けたい人にも、じっくり味わいたい人にも、ある程度応じる柔軟性があります。詰まっても10分以内には答えが見えてくる、設計者がプレイヤーを信頼している距離感です。

結論

Portal ほどの濃密さはありませんが、清潔感とテンポは譲りません。一気に走り抜けたい夜に向いている一作です。Portal、Talos、Witness の一人称三大柱の影に隠れがちですが、ジャンル入門としては最良の選択肢の一つ。10周年版で物語が補強されたことで、新規プレイヤーへの間口がさらに広がりました。

制作者として真似たいのは、『色と動作の一対一対応』の素朴さです。複雑な UI を作るより、世界そのものに意味を埋め込む。これは何度でも見直したい基本動作で、Q.U.B.E. はその教科書として、いつでも棚の手の届く場所に置いておきたい一冊です。

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