REVIEW · 2023-11-02

The Talos Principle 2

新エルサレムからの遠征

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第一印象

新エルサレムという町を出発した遠征隊の一員として、私は名前の知らない大陸に降り立ちます。広い空、整然と立ち並ぶ構造物、遠くに見える巨大なメガストラクチャ。

前作の閉じた庭から踏み出して、地平の見える場所に立ったことが、最初の数分でもう違うゲームだと教えてくれます。前作プレイヤーには、この空の広さだけで価値があります。

遠征隊の仲間は皆ロボットで、それぞれ性格が違います。理性派、信仰派、悲観派、楽観派。彼らと焚き火を囲んで議論する時間が、想像以上に長い。これはパズルゲームというより、『パズルを言い訳に旅をする集団劇』だと早い段階で気づきました。

メカニクスの言語化

道具は前作から拡張されています。色付きのコネクター、ジャマー、キューブ、ファン、空間を歪める装置、自分自身のコピー機構。一つの道具に2-3の用途が常に隠れていて、組み合わせ次第で同じパズルにも複数の解があります。

ひとつのパズル小屋では、これらが小さな単位で組み合わさり、ビームを目的地まで導く、もしくは特定の電源を生かしたまま扉を開けます。基本動詞は前作と同じで、新規動詞は3-4つ程度。けれどそれぞれの組合せが指数的に増えていて、後半は紙にメモして解く面も出てきます。

オープンワールド寄りに見えますが、実際は12のエリアに区切られた連作集です。各エリアは独立した世界観と道具セットを持ち、Myst の Age 構造の現代版と読めます。

このゲームの魅力

パズルと哲学対話が同じ歩幅で続いていく構造そのものが魅力です。考えることを止めずに、けれど急かされずに歩ける。前作が独白だった哲学テキストは、本作では多数のキャラクターの会話に分散しました。これによりプレイヤーは『どの意見に頷くか』を自分で選ぶことになります。

風景の美しさが、解法の閃きと地続きで届きます。湖面の反射、霧の中の塔、夕暮れの色。これらを眺めながらビームの経路を考える時間が、ただ気持ちいい。Croteam のレベルアーティストは、Serious Sam で培った『広い空間に正しく物を置く』感覚を、今作で完全に開花させたと感じました。

登場するキャラクターたちが、終盤で予想以上に重要になります。彼らとの会話で得た言葉が、ラスト近くのパズルの解釈に静かに効いてくる。物語の重さがメカニクスを変えはしないけれど、メカニクスの意味は確実に変えていく。

ゲームデザインの工夫

前作のモノローグだった哲学テキストが、選択肢のある会話に組み直されています。プレイヤーの返答で世界の見え方が少しずつ変わる。これは Disco Elysium の対話設計を、パズルゲームに適度な分量で持ち込んだ実装と読めます。会話を主軸にしない作品でここまで深い対話を入れたのは、見識のある判断です。

パズルの『難しさカーブの逆設計』も見事でした。前作よりメインパズルを易しくし、その分『Lost Puzzles』『Sphinx』『Gold Star』という3層の隠しチャレンジに難所を逃がしています。これは Witness が島の奥にチャレンジ室を集めた構造に近く、メイン層は誰でも完走でき、上級者には屋根裏が残されている形。前作の『途中で詰まって離脱』を抑える、明確な学習の遺産です。

もし私が続編を設計するなら、ここでもっとも悩むのは『道具を何個追加するか』だと思います。Talos 2 は3-4個に絞り、その代わり既存道具の組合せ表現を広げました。これは『新ギミックを足したい欲求』を抑えた成熟した選択で、Portal 2 が前作のポータルに対してジェル類を控えめに加えたバランス感覚と通じます。新道具を5つ以上足すと、教師なしで学ぶ前作の純度は崩れていたはずです。

難しさの手触り

メインパズルは前作より親切で、15分以上詰まることは稀です。難所は隠しの Lost Puzzles・Sphinx・Gold Star に集約されています。フルクリアを狙うと、前作以上の総時間が要求されます。

難しさの体感は『広い野原を歩いて、いくつかの小屋で立ち止まる』というリズムで、緊張と弛緩の比率が前作より弛緩寄りに振られています。これを冗長と感じる人もいるでしょうが、私は哲学対話を読む時間として歓迎しました。

結論

35時間遊んで残ったのは、賢い解法の記憶ではなく、ひとつのパズル小屋から次の小屋へ広い野原を歩いた時間の静けさでした。一人称パズルというジャンルの中で、Witness が観察、Portal 2 が物理、Talos 2 が思索を担う、と整理して問題ないと思います。

制作者として学びたいのは、続編で『新規より既存の深掘り』を選んだ姿勢です。前作で確立した動詞を捨てず、組合せの裾野を広げる方を選ぶ。これは続編設計の最も難しい判断で、けれど最も誠実な選択でもあります。

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