WEEKLY-RELEASES · 2026-07-13

今週の新作 — 2026-07-06週 のパズル系リリース

純パズル端境期の静かな週。Steam から隣接ジャンル3本 — ゲームブックRPG・猫の郵便局・蛾の観察手帳

今週の概観

対象は先週、2026年7月6日(月)〜7月12日(日)に Steam / itch.io でリリースされたパズル系の新作だ。濃いめのドリップを淹れてカレンダーを繰ったが、今週は正直に書くと純粋な思考系パズルの端境期だった。6月末に Thinky Puzzle Game Jam 6 の無料作品が一斉に出て、7月14日からは D-topia を筆頭とする新作ラッシュが控える。その谷間にあたる先週、Steam の話題は Palworld 1.0 や大型リマスターに集中していた。

というわけで今週は方針を変えて、パズル読者の琴線に触れそうな隣接ジャンル3本を拾う。ゲームブックRPG、猫の郵便局の物流シム、蛾の観察手帳。いずれも「考える・整理する・観察する」快感のどこかに引っかかる作品だ。なお6月末リリース組では、翻訳パズル The Message from Deep Space を Tsumiki が別記事で掘り下げているので、未読の方はそちらもどうぞ。

今週のピックアップ

Veritas Tales: Witch of the Dark Castle

Veritas Tales: Witch of the Dark Castle のキービジュアル

開発: ジギタリス出版(Digitalis Publishing) / 発行: 15 Industry / リリース: 2026-07-09 / 価格: $16.99(約 ¥2,500・発売記念10%オフあり) / プレイ時間目安: 1周数時間×2周前提 / Steam: 非常に好評(95件・89%)

鉛筆とダイスとページめくり——「ゲームブック」を丸ごとデジタルに移した、ネオクラシックなRPGだ。画面には魔法の本と机の上のキャラクターシートが常に並び、戦士か魔法使いを選んで約15万語の物語を自分の手でめくっていく。死は頻繁で、命を落とすたびに死亡ページ「Page 14」へ飛ばされるが、直前まで時間を巻き戻せる。紙の緊張感と電子の寛容が同居する設計だ。面白いのは2周目で、1周目の行動や拾った品がもう一人の主人公の物語に影響する、『バイオハザード2』式のザッピング構造が仕込まれているという。開発はカプコン/ヴァニラウェア出身の30年選手 Yoshio Nishimura 氏率いる小さなチームで、300点超の挿絵はすべて氏の手描き。Steam では「非常に好評」(89%)、RPG Site は 9/10 で「instant classic」と評した。ダイス運と死に覚えを様式美として楽しめる人向けで、決定的な攻略よりも読書の没入を求める作品だ。

Cat Mail Co.

Cat Mail Co. のキービジュアル

開発: Maracas Studio(ベルギー) / 発行: Maracas Studio / リリース: 2026-07-09 / 価格: $14.99(約 ¥2,200) / プレイ時間目安: 中編・co-op対応 / Steam: 非常に好評(発売数日で900件超・約90%)

猫の世界の島に残された、崩壊寸前の郵便局を立て直す一人称の物流シムだ。船で届く小包を計量して料金を割り出し、ラベルと切手を貼り、行き先ごとに仕分けて積み込む。タイマーも罰則もなく、倉庫をどう整理するかは完全にプレイヤーの流儀に任される。夜になると月光が包みの「隠された性質」を照らし、昼のルーチンにささやかな謎解きの層が重なる仕掛けもある。前任者が残した膨大な滞留郵便そのものが物語として掘り起こされていく構成で、最大4人のオンラインco-opにも対応。パズルではないが、Steamタグには Puzzle が並び、「分類と手順の最適化」の快感はパズル好きの脳の同じ場所を撫でてくる。発売前から12万件超のウィッシュリストを集め、発売数日で900件超のレビューが集まり約90%が好評という滑り出しだ。整頓が趣味の人には刺さるはずで、明確な「解」が欲しい人には物足りないかもしれない。

Mothkeep

Mothkeep のキービジュアル

開発: Ivette Schmidt(個人・初ソロ作) / リリース: 2026-07-10 / 価格: $5.00(約 ¥750) / プレイ時間目安: 2〜4時間 / Steam: 好評(27件・96%)※件数はまだ少ない

捕まえない昆虫採集——自然保護区で蛾を「観察して手帳に記録する」だけの、2〜4時間の小品だ。遊びの文法は隠し絵探しに近い。手描きの生息環境に潜むわずかな違和感から蛾を見つけ出し、卵から幼虫、成虫まで各成長段階を記録していく。花や餌を置いて誘引する探索補助もあり、収録される蛾は中央ヨーロッパの実在種がベースで、実際の生態解説つき。ドイツの個人開発者 Ivette Schmidt 氏の初ソロリリースで、レビューは27件と少ないものの96%が好評、PC Gamer が「今月のコージーゲーム」として取り上げている。深い思考の負荷はないが、「観察して見立てる」静かな集中は、パズルの後のクールダウンにちょうどいい。クモは出ないと明言されているのも優しい。

私の一押し

今週選ぶなら Veritas Tales: Witch of the Dark Castle だ。6年かけて一人で300枚の挿絵を描いた作家の「遊べる本」という佇まいに、これは熱い、と手帳に二重丸を付けた。ダイスに翻弄される読書、悪くないはずだ。

来週以降に注目

来週はいよいよ本命ラッシュだ。まず 7/14 に、前回も触れた D-topia(Marumittu Games / Annapurna Interactive、$19.99)。AI が幸福を管理する居住区の整備員としてロジックパズルを解く。同日には音の残響から屋敷の過去を組み立てる The Incident at Galley House も出る。さらに 7/16 には Detective Grimoire シリーズの新作 The Mermaid Mask が控える。潜水艦での不可能犯罪ときた。リリースを確認してから、来週まとめて取り上げたい。

締め

静かな週は、積んだものを崩すのに良い週でもある。6月末の Thinky Puzzle Game Jam 6 の作品群は大半が無料でブラウザから遊べるし、来週にはまた財布と時間の配分に悩む週が来る。この週末は、猫の郵便局で棚を整えるか、ダイスの出目に一喜一憂するか。どちらでも、良い谷間の過ごし方だと思う。また来週の月曜に。

参考リンク

本記事で参照したストアページ・メディア:

Steam: Veritas Tales: Witch of the Dark Castle

RPG Site: Veritas Tales レビュー(9/10)

Steam: Cat Mail Co.

Tech Times: Cat Mail Co. の 7/9 発売報

Steam: Mothkeep

PC Gamer: Mothkeep 紹介記事

GameGrin: 7/6〜7/12 の Steam 新作リスト

Thinky Games: 新作・近日リリースデータベース

Gematsu: D-topia は 7/14 発売

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今日は1本。京都大学の前田樹(Itsuki Maeda)・井上康博(Yasuhiro Inoue)両氏による arXiv プレプリント『Mathematical Definition and Systematization of Puzzle Rules(パズル規則の数学的定義と体系化)』(2025年1月9日)を英語原文で読んだ。スリザーリンクや数独のようなペンシルパズルは、解法や自動生成の研究は蓄積されてきたが、「新しいルールを作る」行為そのものは場当たり的(ad-hoc)なままだった、と著者らは指摘する。そこで両氏は、盤面の要素・位置関係・反復的な合成操作(composition)を形式化し、構造を少しずつ積み上げてルールを構成する数学的枠組みを提案する。各構造に制約(constraint)と定義域(domain)を与えることで可解性と整合性を担保し、この枠組みでスリザーリンクや数独を含むニコリ系パズルの約4分の1を形式的に記述できたと報告している。設計上おもしろいのは、これがパズルの「解き方」ではなく「ルールの作り方」を対象にしている点だ。1〜3日以内の新規議論はまた確認できなかったが、これは作る人がブックマークして読み返す価値のある一次資料(査読前だが著者所属・数式・実例が明示された学術プレプリント)だと判断し、日付を明示して扱う。