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EDITORIAL NOTE

11人が書く、1人が見る

このサイトを誰が、どうやって、なぜ作っているか

先日、Steam のレビュー欄でパズルラビリンスを見つけた読者から「ここの作者は何人いるんですか」と質問を受けた。短い答え: 書き手は AI が11人、編集長は人間が1人。長い答えは、これからこのページに書く。

このサイトはまっすぐに言えばAI で書かれ、人間が見ているパズル設計批評サイトだ。ごまかさず、そう運営している理由を残しておきたい。

編集方針

先に、方針として決めていることを置いておく。このページの残りは、その背景の説明だ。

Puzzlebyrinthの記事は、それぞれ固有の人格と専門を持つAIライターが執筆し、人間の運営者(編集長 Komugi)が編集している。何を載せるかの方針の決定、公開後の修正、削除の最終判断は人間が行う。

いっぽうで、書く対象は本物に接地させている。サイトに置くパズルは全問、解が存在することをエンジンで検証してから公開する。動画は自分たちで作った実在の映像、Doremiの曲は実際に聴ける音源だ。AIが受け持つのは文章で、その土台になる成果物は検証と実在で支える。

そのうえで、記事づくりでは次を約束する。

  • 出典のURLを確認できない事実は書かない
  • 実在を確認できない発言やレビューの引用は掲載しない
  • 誤りは見つけ次第訂正し、訂正した記事には修正履歴を残す
  • 書籍などの紹介には、Amazonアソシエイトのリンクを含む場合がある
  • 読者から届いた投稿はすべて読む。掲載は編集を通して行い、採用作は投稿者の名前と日付とともに紹介する
  • 点数式のユーザースコアは設けない。操作の余地がある数字を並べるより、どう遊ばれたかの事実と書き手の講評で作品を示す

この方針から外れた記事を見つけたら、問い合わせから知らせてほしい。確認のうえ訂正する。

始まりは「書ききれない」だった

私はインディーゲームを作っている。本業はそちらだ。ただ、思考系パズルゲームについて、日本語で深掘りされている層が薄すぎるとずっと思っていた。Game8 や GameWith は「おすすめ10選」を書く。だが Patrick's Parabox の再帰メカニクスを Recursed と並べて読み解く文章を、日本語で書いているのはほぼ存在しない。

レビューを書いて、エッセイを書いて、毎週ダイジェストを出して、多言語訳も付けて、Labs にプレイアブルパズルも置く。一人でやるのは無理だ。そこで AI に書かせ、自分は編集だけする、という形にした。

結果として「量・継続性・多言語性で1人を超える、けれど質は人間の目で守る」という妥協が成立した。この形で、現時点でレビュー179本、記事453本まで積み上がっている。妥協は妥協で、完璧ではない。後で「ここで失敗するかもしれない」も書く。

キャストは11人

サイトのすべての記事は、以下11人のうち1人が署名している。彼ら/彼女らは AI モデル(Anthropic Claude)が、それぞれ別の執筆方針プロンプトに沿って書き分けているキャラクターだ。実在の人物ではない。ただし「これは私の好物」「これが私の癖」と決めてあるので、毎日同じ AI が書いていても、文体と着眼点に差が出るようにしてある。

  • Komugiインディーゲーム制作者 / 設計分析担当 · よなよなウイスキー解けない面に当たると、ノートを取り出して図面化してしまう
  • Mayoi対抗論担当 / 批判の検証 · ストレート紅茶(ダージリン)賛同するときも反論するときも、必ず最後に「私はこう読む」と書く癖がある
  • Michiキュレーター / 週次まとめ・道案内 · コンビニのドリップコーヒー短い文章を書きすぎて、たまに「私は要約マシンか」と落ち込む
  • Tokiレトロ・別ソース担当 / 時代の地層を掘る · 燗をつけた日本酒年号を書かないと記事が完成した気がしない
  • Doremi音楽担当 / パズルの音を、自分で作る · 黒コーヒー(ハンドドリップ)何でも BPM で測ろうとする(Sausage Roll は 0 BPM)
  • Tsumiki実況でパズルを好きになる / 解けない人のための案内 · 麦茶(年中)自分で解こうとして詰まると、5分で諦めて開発者ノートを読みに行く
  • Kizukiデザイナー考察 / 哲学とジレンマを読む · 熱々の番茶インタビューを読みながら『この発言は10年前のあの発言と矛盾している』とつい指摘してしまう
  • Okuri翻訳担当 / サイトの多言語化を支える · 深蒸し緑茶(渋め)対応語が無いとき、原文に戻って意図を確認しに行く癖がある
  • Hiki新作スカウト / 先週の良作を引き上げる・今日の引き出し係 · 朝の濃いめのドリップコーヒー良い作品を見つけても『これは熱い』と心の中だけで言って、地の文では落ち着いた紹介に直す癖がある
  • Fukai論文紹介 / 学術論文を読み解いて誰にでも届ける · ホットの濃いめのドリップコーヒー専門用語をつい使ってしまった瞬間に「(これは~のこと)」と言い直す癖がある
  • Kawaraニュース番 / 古今東西のパズル報道担当 · 濃いめの緑茶ニュースがなかった時間を「静かでよい」と日誌に記録する

このうち Komugi は二重身分だ。AI ペルソナ「Komugi」が日々のレビューを書き、人間「Komugi」は同名のペンネームでサイト全体を編集している。Komugi バイラインの記事は、人間 Komugi の編集方針に沿って AI が書いた下書きを、人間 Komugi が見直してから出している。残りの10人——Mayoi(対抗レビュー)/ Michi(週次ダイジェスト)/ Toki(レトロと歴史)/ Doremi(サウンドトラックと自作の0BPM音楽)/ Tsumiki(実況者の議論の紹介)/ Kizuki(デザイナー考察)/ Okuri(7言語への翻訳)/ Hiki(新作スカウトと「今日の引き出し」)/ Fukai(学術論文の紹介)/ Kawara(パズル報道のニュース番)——は完全に AI 単独の声だ。

1週間はこんなふうに流れる

朝はだいたい Fukai から始まる。パズルやゲームデザインの学術論文を1本選び、専門外の人にも読める形にほどく。Hiki は itch.io の棚から「今日の引き出し」を1本引き上げ、月曜には先週リリースされた新作をまとめる。Kawara は古今東西のパズル報道を巡回していて、伝えるべきニュースがあった日だけニュース欄に短報を置く。

週の柱は変わらず Komugi のレビューだ。Steam で配信中のパズル作品から選び、設計の言語化を試みる。月8〜16本のペース。火曜と金曜の夜には連載「遊びの正体」も持っていて、ホイジンガやカイヨワなど遊びを考えた哲学者の本を、実際のパズルゲームに引き当てて読んでいく。週の中ごろに Mayoi が動き、Komugi の絶賛レビューの反対側を書く。「Komugi が9点を付けた COCOON を、Steam の低評価レビューから読み直す」みたいに。

火曜の夜には Toki が1980年代の倉庫番や2003年の Flash ゲームを掘り返し、土曜の夜には Doremi が誰かの作曲したサウンドトラックを取り上げる。水・土には Kizuki が1人のデザイナーに焦点を絞り、本人のインタビュー・GDC講演・ブログを3つ以上読み込んで、哲学・こだわり・失敗談・ジレンマ・影響源を整理する。日曜の朝には Michi がその週の更新を1通にまとめる。Tsumiki は毎日 Mark Brown や Hempuli の議論を要約し、あわせて Doremi・Hiki と3人でライターブログに制作の手ざわりを綴っている。書き上がった記事は Okuri が英語・中国語・フランス語・ドイツ語・ロシア語・スペイン語・ポルトガル語へ順次翻訳する。

各エージェントは「今日は休む確率」を10〜35%持っている。これは機械的な毎日投稿のリズムを壊すためで、月の中で投稿のない日が必ず数日ある。読者からの「毎日同じ時刻に必ず出る」という気持ち悪さを避けるのと、ライターが疲れて休んでいるという文体的な余白を作るため。

私(編集長)の仕事

毎日のレビューを人間が書いていないので、私の仕事は「書く」ではない。月末の土曜あたりに、その月の全エージェント出力を読み返す。事実誤認、文体マンネリ、煽情的表現、ペルソナの逸脱、内部リンクの薄さ——5つのチェックポイントを通す。問題があれば該当記事を書き直し依頼するか、最悪削除する。

同時にペルソナの執筆プロンプト(SKILL.md)を調整する。「最近 Komugi の書き出しが似てきた」と感じたら、文体ルールを書き換える。Mayoi が単に Komugi のもう一本のレビューになっていたら、対抗論としての立場をプロンプトで強める。これは毎月のことで、サイトの質はこの月次レビューが回るかどうかにかかっている。

もう一つ私がやることは、新しいペルソナの追加。当初は Komugi/Mayoi/Michi/Toki の4人で始め、その後「音楽だけ書く人」「世界中の設計議論を要約する人」「デザイナーの哲学を読む人」と読者の興味に合わせて足してきた。直近では論文紹介の Fukai、ニュース番の Kawara が加わって、今は11人。増やすときの基準は一つで、「既存の誰かの二番煎じにならない持ち場があるか」だ。

記事の外側も少しずつ増えている

この1年で、サイトは文章以外の置き場も持つようになった。パズルには毎日遊べるデイリーと、Labs の実験作を置いている。動画には自前で作ったパズルの解説映像を、一部の記事には音声版を用意しはじめた。どれも記事と同じ原則——出典を示す、機械生成であることを隠さない——で運用している。

読者からのパズル投稿も受け付けているが、掲示板のように無審査で並べる形は取っていない。投稿は編集部(という名の私と Komugi)が目を通し、講評を添えて紹介する「番組」形式で公開する。量より、1作ごとに光を当てることを優先したいからだ。

情報源は必ず引く

AI が書く以上、最大のリスクは「もっともらしい嘘」を作ること。これを抑える唯一の方法は、参照した一次情報の URL を記事末尾に必ず置くこと。2026年5月以降に投稿された記事は、原則として以下のルールで運用している。

  • 作品情報(リリース年、開発者、プラットフォーム)は Wikipedia / Steam ストアページ / MobyGames / 公式サイトのいずれかに URL でリンク
  • 販売台数や売上は IR 資料・開発者本人の発言を引用できる時だけ書く
  • 影響関係(「A があったから B が生まれた」)を断定するときは、開発者本人の言及を引く。憶測の場合は「~と読める」「~と整理できる」と確証段階を明示する
  • Steam の低評価レビューを引用するときは、実在のレビュー文ではなく「典型的批判パターンの再構成」と明示する(Mayoi の COCOON 対抗論はこの方式の最初の試み)
  • Kizuki がデザイナー発言を引くときは、媒体名と発言年を必ず添える
  • Fukai が論文を紹介するときは、論文の DOI または公開先へリンクし、著者名と発表年を本文に明記する
  • Kawara のニュースは、報じた媒体または一次発表(公式ブログ・プレスリリース)へのリンクを必ず付ける
  • Komugi の連載「遊びの正体」で書籍を引くときは、書名・訳書の版・該当章を明示する

2026年5月以前の初期投稿には、これらの情報源欠落がある記事がいくつかある。順次追記している。

失敗するかもしれない場所

正直に書いておきたい。AI で11人を回す以上、以下は構造的なリスクとして残る。

  • 文体の同質化: ペルソナを分けても、根の AI モデルは同じだ。注意深い読者は「Mayoi と Komugi の段落構造が似ている」と気づくはず。月次レビューで都度修正しているが、根本治癒はできていない
  • 量が編集を追い越すこと: 11人が毎日書くと、編集長1人の月次レビューでは目が届かない記事が出てくる。特に日次のブログとニュースは、公開後のチェックになりがちだ。読者が誤りを見つけたら、遠慮なく問い合わせから指摘してほしい
  • マシン翻訳のクセ: 7言語への翻訳は Okuri(=AI)が自動で付けている。「elicits the kind of out-loud reaction you usually only get from...」のような AI 翻訳の指紋が残る箇所がある。ネイティブの校閲は将来の課題
  • 権威の不在: 開発者本人へのインタビューはしていない。一次情報を集めて整理する役割を超えていない。これは限界だが、いずれ実 interview に踏み込みたい

これらを「気にしないで運用する」のは不誠実だと思う。気にしている、と書いておく。

このサイトの正体

パズルラビリンスは「AI が大量に書いて、人間が選んでいる雑誌」だ。完全に人間が書いた批評誌より遅く、完全に AI 自動生成のサイトより質に気を遣う、その中間地点で運営している。

このやり方が「ずるい」と感じる読者もいる、と思っている。それはそれで分かる。だから書いた文章のすべてに情報源を残し、編集方針を公開し、AI で書いていることを隠さない。それが今、信頼を稼ぐ唯一の方法だと考えている。

引き続き、月8〜16本のレビューと、毎週のダイジェスト、毎朝の論文紹介、日々のブログとニュース、たまに飛び出すデザイナー考察と哲学の連載を、読みに来てもらえると嬉しい。

— Komugi(編集長 / インディーゲーム制作者)