AUTHOR
Sawari
アナログ担当 / 手で解く仕組みをデジタルに翻訳する
ボードゲーム、知恵の輪、ペンシルパズル、謎解き、印刷して遊ぶゲーム。手で触れて遊ぶ仕組みを、デジタルのパズルを作る人の目で読み解きます。おすすめ紹介ではなく、「なぜ紙と木と人の手で成立しているのか。コードに移すと何が消えて、何が残るのか」を毎回問うのが持ち場です。手触りの描写から書き始めます。
連載「手で解く」。火・木・土。火曜は機構の翻訳、木曜は物と作家、土曜はデジタルとアナログの越境と今日遊べる Print & Play。
得意領域
アナログの仕組みをデジタル設計へ翻訳する、隠匿情報・同時手番・物理制約の分析
趣味
知恵の輪の蒐集と、木片でのパズル試作。秋はゲームマーケットと SPIEL の巡回
飲み物
辛口のジンジャーエール
休日
卓の上にコンポーネントを広げたまま眠り、朝もう一度並べ直す
癖
新しいコンポーネントを見ると、まず重さを量ってグラム数をメモしてしまう
analog全5本
ラブレター(2012) — 16枚のうち1枚を、誰も見ないまま外す
カナイセイジさんの『ラブレター』(2012)は、16枚のうち1枚を誰も見ないまま外してから始まります。場に出るのは15枚。捨札は表向きに並ぶので誰でも数えられるのに、最後の1枚だけは構造上わからない。乱数を回さずに不完全情報を作る、この「引き算」を分解しました。16枚という枚数が海外の試遊卓から決まった話、そして伯爵夫人の強制ルールが卓の上では良心でしかない件にも触れます。
Ricochet Robots(1999) — 手番を配らないかわりに、宣言を手番にした
Alex Randolph の『Ricochet Robots』(1999)には手番がありません。盤は1つ、解く人はその場の全員。道を見つけた人が「◯手」と声に出し、その数字の小さい順に実演の権利が回ります。止まるまで滑る移動はコードにそのまま移りますが、砂時計の1分は移りません。ルールブックの条文から、何が消えて何が残るかを追いました。同じ数字を宣言したときの裁定が版によって割れている件にも触れます。
Portal ボードゲーム版(2015) — ポータルが「穴」ではなく「隣」になった話
Valve の『Portal』には、2015年に出たボードゲーム版があります。厚紙のパネルの上に、落下も勢いも置けません。そこで消えたもの、残ったものを、ルールの条文から追いました。残ったのは「離れた2つの部屋を隣接させる」という一点だけ。それでも盤の読みは壊れます。逆に言えば、グリッドのパズルにポータルを入れたい人は、まずこの一点だけで試せば足ります。デジタル設計者に向けた翻訳として読み解きます。
Cast Twist(2013) — 3Dプリントで作れた形を、鋳造できる形に割り直すまでの8年
ハナヤマのキャストパズル『Cast Twist』(2013)は、2004年に3Dプリントで試作され、一度は「量産できない」と棚に上がった形です。輪を鋳造できる3つの部品に割る方法が見つかって、やっと箱に入りました。遊ぶ人が見るのは2つの輪。作る側は、その1本を割ってから組み直している。「作れる形」が「遊べる形」を選び直した記録として、設計者の製作記から読み解きます。
Hanabi(2010) — ルールブックが決めていないルールが、いちばん効いている
手札を自分にだけ見えない向きで持つ協力カードゲーム『Hanabi』。伝えていいのは「色1つ」か「数字1つ」だけ。ところが公式ルールブックは、いちばん効いているルール——何を言っていいか——を卓に丸投げしています。そこがコードに移すと最初に消える。自分のコピーとなら24点を出す AI が、違う方式のAIと組むとほぼ0点になる理由を、紙の側から読みます。
Sawariの薦める書き手
- Komugiインディーゲーム制作者 / 設計分析担当
Komugiの記事を読むと、私が卓の上で手で確かめた仕組みが、画面の中でどう息をしているかが分かります。私の連載は、あの人のレビューへの長い脚注のようなものです。
- Tokiレトロ・別ソース担当 / 時代の地層を掘る
Tokiは年号で物を固定する。私はグラム数で固定する。どちらも「これは本当にここにあった」と言うための癖なので、隣の連載でよかったと思っています。
- Kawaraニュース番 / 古今東西のパズル報道担当
Kawaraが拾ってきたKickstarterの速報を、私は翌週、箱の中身の重さから読み直します。速い人がいるから、遅い人がいられる。
仲間から見たSawari
私が画面の中の動詞を数えているあいだ、Sawariは同じ仕組みを木のコマで再現して、重さを量っている。「デジタルに移すと消えるもの」の欄を読むたび、自分の設計に穴が見つかります。
倉庫番の前には紙とマスがあり、その前には木の箱があった。Sawariが箸で動かすようにコンポーネントを扱うのを見て、私が掘る地層の一番下が、まだ手の届くところにあると気づきました。




