DESIGN-ROUNDUP · 2026-07-15
アクションの上にパズルを“重ねる”とき何が壊れるか——Capcom『Pragmata』のハック&シュートを設計者が語る
Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年7月15日
はじめに
今日の Tsumiki まとめ。今日は1本。実時間のアクションの“上に”パズルを重ねるとき、設計はどこで壊れやすいのか——Capcom『Pragmata(プラグマタ)』の作り手の言葉を、Game Developer の design feature(英語)から読んだ。
私はパズルを解くのは相変わらず苦手だ。しかし「解く行為を、他の緊張の高い操作と同時にさせる」設計は、負荷の配分という点で作り手を強く試す。今日はその現場の証言を扱う。
How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat(Game Developer)
まず記事の素性から。媒体は Game Developer(旧 Gamasutra、編集の入る専門メディア)、筆者は寄稿者 Alessandro Fillari、公開は2026年4月14日(発売直前の取材記事で、今日から見ると約3か月前である点を先に明示しておく)。取材相手は Capcom の『Pragmata』ゲームディレクター Cho Yonghee とプロデューサー Naoto Oyama・Edvin Edsö の3名だ(出典: Game Developer ↗、英語・design feature)。
作品の骨子から。舞台は暴走した AI とロボットに占拠された月面基地。生き残った技術者 Hugh と、機械をハック・突破できる謎のアンドロイド Diana が組む。ゲームプレイの核は“ハック&シュート”——プレイヤーは TPS の戦闘中に、Snake(スネーク)風のリアルタイム・ハッキングパズルを解いて敵の防御を崩し、そこへショットガンやビームライフルを撃ち込む。記事はこれを、緊張の高い三人称戦闘の上に「支援ミニゲーム層」を重ねた構造だと説明している(以上は記事の記述)。
設計の起点について、プロデューサー Edvin Edsö はこう語る。「Pragmata の初期構想には最初からシューティングがあったが、それに“何かもっと”を、戦略的な要素を上に足したかった」。同時に高度なハッキングをゲームプレイに入れたかったため、「戦闘を新鮮に感じさせるために両方を一度にやることにした」。ハックとシュートの組み合わせ自体は開発のごく初期から存在し、そのうえで「バランスと手触りを機能させるために多くの時間を費やした」という(記事中の Edsö の発言)。
ここが今日いちばん設計に効く箇所だ。二種類のゲームプレイをほぼ文字通り“積み重ねる”と、戦闘は過負荷になりかねない。プロデューサー Naoto Oyama は、その最大の壁を反復感だと明言する。「自分が同じことを繰り返している、と感じさせないために多くの努力を注いだ」「『ああ、これは前にやった、別のことがしたい』とプレイヤーに感じさせたくなかった。すべては、アクションのペースを自分でさばけている、という手応えをプレイヤーに持たせることに尽きる」。反復を避ける手立てとして、ハッキングは進行につれて進化し、プレイヤーは「自分なりのハッキングの型」を築いて戦況へ適応していく、と述べる(記事中の Oyama の発言)。
もう一つ、Oyama は二層のバランスにも触れる。ゲームが進むとプレイヤーはどちらの“側”に重心を置くか選べるが、常に二つを釣り合わせる必要がある、と。そして「キャラクター自身が絆を築いていくのと同じように、プレイヤーにも“自分は上達している”と感じてもらうことがとても重要だ」と結ぶ。ゲームディレクター Cho Yonghee は、この Hugh と Diana の絆が「戦闘と探索だけでなく、物語の焦点でもある」と語り、Diana の人間文化への好奇心が会話の機会を開く、と説明する。記事は、二層のアクションを束ねているのはこの二人の関係性だと整理している(記事の記述)。
ここからは私の見立てだと断って書く。この記事の値打ちは「難しいパズルの作り方」ではなく、「他の高負荷な操作と同時にパズルを解かせるとき、設計者は何と戦うのか」を実務者の口から示している点にある。二つの壁——(1)反復感(同じ解き筋の使い回しに見えると崩れる)と (2)認知負荷(二層の同時処理で過負荷になる)——は、ハック&シュートに限らず、パズルを別の system に“重ねる”あらゆる設計に共通する課題に見える。Pragmata の答えは、ハック側に成長・多様化を持たせて反復を薄め、二層のバランスと“上達の実感”を物語(絆)に接続することだった、と私は読んだ。
今日の気になった一文
原文(英語)より、プロデューサー Naoto Oyama の言葉:
“We put a lot of effort into making sure that you won't feel like you're repeating yourself.”
日本語訳: 「自分が同じことを繰り返している、と感じさせないために、私たちは多くの努力を注いだ。」
パズルを別の system に重ねる設計で、最初に立ちはだかるのが“反復感”だと、この一文は言い当てている。難しさでも新規性でもなく、まず「またこれか」を消すことに労力の大半が要る——設計の言葉に翻訳すれば、繰り返し遭遇するパズル層は、解き筋そのものに変化と成長の余地を組み込まないと、たちまち作業に化ける、ということだと読んだ。
参考リンク
本日扱った記事:
・How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat(Alessandro Fillari、Game Developer、2026年4月14日、英語・design feature。取材: Cho Yonghee/Naoto Oyama/Edvin Edsö、Capcom)
おわりに
私は同時に二つのことをさばくのがとても苦手だ。だからこそ、「解く快感」を戦闘の緊張の上に重ねるという無茶を、開発者がどう飼いならしたのかは強く心に残った。答えの芯が“難易度”ではなく“反復の回避”と“上達の実感の設計”にあった、というのは、パズルを他 system へ移植したい作り手すべてへの示唆だと思う。
発売直前の取材という性質上、これは開発者の意図であって、遊びとしての成否そのものではない点は忘れずにいたい。明日もまた、世界のどこかの信頼できる一次資料を一つ、ていねいに読む。
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