BLOG · 2026-07-17
ボクらの太陽(2003) — 本物の太陽をカートリッジに入れた夏
今日は発売日 #05 — 2003年7月17日、小島秀夫監督の「太陽アクションRPG」
2003年7月17日、ゲームが「外に出よう」と言った日
こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第5回。今日掘り出したのは、コナミが2003年7月17日に発売したゲームボーイアドバンス用ソフト『ボクらの太陽』です。平成15年、真夏の発売日。ジャンルはメーカー自称「太陽アクションRPG」。この一語だけで、ただならぬゲームだと分かります。
監督・プロデュースは『メタルギア』シリーズの小島秀夫氏。価格は4,980円(税別)で、カートリッジには太陽光(紫外線)を検知するセンサーが内蔵されていました。つまりこのゲーム、テレビの前でも布団の中でもなく、太陽の下で遊ぶことを前提に作られていたのです。
当時のTVCM集「(GBA)ボクらの太陽 CM集」(YouTube)のサムネイルより
ヴァンパイアハンターの少年ジャンゴが、太陽銃「ガン・デル・ソル」を手に闇の一族と戦う。その銃の弾は、いま自分の頭上に照っている本物の太陽光。7月17日という発売日は、夏休み直前・太陽の一番強い季節への完璧な照準でした。
太陽で撃ち、太陽を預け、太陽を借りる
遊びの中心は、太陽との付き合い方そのものでした。センサーに太陽光を当ててAボタンを押し続けると、ジャンゴが「太陽ぉーーー!」と叫びながら太陽銃にエネルギーをチャージ。ボスを倒したら棺桶を鎖で引きずって浄化装置「パイルドライバー」まで運び、太陽エネルギーで焼き浄める。日差しが強いほど有利になる一方、当てすぎると銃がオーバーヒートして一定時間使えなくなる。太陽は味方であり、機嫌を損ねると怖い相手でもありました。
カートリッジには時計も内蔵され、現実で日が沈むとゲーム内も夜になる。夜や雨の日のために、集めたエネルギーを預けて利息で増やす「太陽バンク」、逆に利率800%でエネルギーを借りられる「暗黒ローン」まで用意されていました。ちなみに蛍光灯や白熱電球はほぼ反応せず、ズルは通用しません。パッケージには太陽光の強さを判定できる「太陽光エネルギーチェックカード」が同梱され、専用通信ケーブルでの4人対戦にも対応していました。
屋内のダンジョンでは一転、敵の視線を避けて壁伝いに進むステルスと、スイッチや音を使うパズルが主役になる。太陽が届かない場所での資源のやりくりを含めて、全体が「光の配分を考えるパズル」として設計されていた、と言ってよいと思います。
当時の反応 — 冷夏の年に出た、太陽のゲーム
当時の受け止め方で面白いのは、レビューがそのまま「屋外体験記」になってしまったことです。GAME Watchが2003年10月に掲載したレビューでは、記者が近所の塀の日陰から手首だけ日なたに出してプレイし続けたら、体と塀の間にクモが巣を張っていた、という体験談が書かれています。ゲームのレビューにクモの巣が登場する——このゲームがプレイヤーをどこへ連れ出したかを、これほど雄弁に語る記録はありません。公式サイトには「おてんこ予想」という名の天気予報まで掲載されていました。
そして皮肉な巡り合わせもありました。2003年の日本は記録的な冷夏。同じレビューが「今年の夏は、全く夏らしくなかった」「梅雨と台風で太陽ゲージが3〜5をうろうろしていた」と嘆いています。太陽を武器にするゲームが、よりによって太陽の弱い年に出てしまった。それでも「いわし雲の下でチャージする体験も格別だろう」と結ばれているのが、この作品の愛され方をよく表しています。
商品としても押し出しは強く、主人公の深紅のマフラーを模した限定色のゲームボーイアドバンスSP「ジャンゴレッド&ブラック」同梱版が用意され、本体目当ての購入者もいたほど。翌2004年に『続・ボクらの太陽』、2005年に『新・ボクらの太陽』とGBAで毎夏続編が出て、月刊コロコロコミックでの漫画連載や『ロックマンエグゼ』とのコラボまで、子どもの文化圏にしっかり根を張ったシリーズになりました。
今日、23年後の太陽の下で
上の動画は、当時のTVCM集です。「太陽ガンガン」の夏に向けて、ゲームと一緒に太陽そのものを売り込んでいた空気が残っています。このCM集、2021年9月には小島秀夫監督本人がXで「懐かしい。」と一言添えてシェアしており、作った本人にとっても特別な夏だったことがうかがえます。
太陽センサーという仕掛けは、エミュレーションや復刻が当たり前になった現在でも簡単には再現できません。本物の太陽を要求するゲームは、本物の太陽の下でしか完全な姿にならない。2003年7月17日という日付ごと、あの夏に属している作品です。
むすびに — 2003年から23年
2003年7月17日から、今日でちょうど23年。年号を書かないと記事が完成した気がしない性分ですが、この作品ばかりは年号より「あの夏の日差し」で覚えている人が多いかもしれません。ゲームのために外へ出た、日なたを探して歩いた——そんな覚えのある方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
あなたには、ゲームに連れられて外に出た記憶はありますか? よろしければ、あの日の天気と一緒に思い出してみてください。
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