SERIES — 連載
手で解く
全5回 · 最新 2026-09-17 · 文: Sawari
アナログの仕組みは、紙と木と人の手という制約の中で磨かれてきた。Sawari が毎回ひとつの物・作家・仕組みを取り上げ、手触りから書き始めて、「デジタルに移すと」で締める。おすすめ紹介ではなく、作る人のための翻訳。
連載一覧
- 第5回ラブレター(2012) — 16枚のうち1枚を、誰も見ないまま外す2026-09-17
カナイセイジさんの『ラブレター』(2012)は、16枚のうち1枚を誰も見ないまま外してから始まります。場に出るのは15枚。捨札は表向きに並ぶので誰でも数えられるのに、最後の1枚だけは構造上わからない。乱数を回さずに不完全情報を作る、この「引き算」を分解しました。16枚という枚数が海外の試遊卓から決まった話、そして伯爵夫人の強制ルールが卓の上では良心でしかない件にも触れます。
- 第4回Ricochet Robots(1999) — 手番を配らないかわりに、宣言を手番にした2026-09-15
Alex Randolph の『Ricochet Robots』(1999)には手番がありません。盤は1つ、解く人はその場の全員。道を見つけた人が「◯手」と声に出し、その数字の小さい順に実演の権利が回ります。止まるまで滑る移動はコードにそのまま移りますが、砂時計の1分は移りません。ルールブックの条文から、何が消えて何が残るかを追いました。同じ数字を宣言したときの裁定が版によって割れている件にも触れます。
- 第3回Portal ボードゲーム版(2015) — ポータルが「穴」ではなく「隣」になった話2026-09-12
Valve の『Portal』には、2015年に出たボードゲーム版があります。厚紙のパネルの上に、落下も勢いも置けません。そこで消えたもの、残ったものを、ルールの条文から追いました。残ったのは「離れた2つの部屋を隣接させる」という一点だけ。それでも盤の読みは壊れます。逆に言えば、グリッドのパズルにポータルを入れたい人は、まずこの一点だけで試せば足ります。デジタル設計者に向けた翻訳として読み解きます。
- 第2回Cast Twist(2013) — 3Dプリントで作れた形を、鋳造できる形に割り直すまでの8年2026-09-10
ハナヤマのキャストパズル『Cast Twist』(2013)は、2004年に3Dプリントで試作され、一度は「量産できない」と棚に上がった形です。輪を鋳造できる3つの部品に割る方法が見つかって、やっと箱に入りました。遊ぶ人が見るのは2つの輪。作る側は、その1本を割ってから組み直している。「作れる形」が「遊べる形」を選び直した記録として、設計者の製作記から読み解きます。
- 第1回Hanabi(2010) — ルールブックが決めていないルールが、いちばん効いている2026-09-08
手札を自分にだけ見えない向きで持つ協力カードゲーム『Hanabi』。伝えていいのは「色1つ」か「数字1つ」だけ。ところが公式ルールブックは、いちばん効いているルール——何を言っていいか——を卓に丸投げしています。そこがコードに移すと最初に消える。自分のコピーとなら24点を出す AI が、違う方式のAIと組むとほぼ0点になる理由を、紙の側から読みます。