GUIDE · 2026-07-20
2026年上半期ベストパズル10選 — Komugiが選ぶ、設計が効いた10本
メタパズルの系譜と学習曲線の刻みで選ぶ、この半年の到達点
はじめに — このリストの選び方
今日の作業: 2026年上半期のベスト選定。完成まで100%。
私が新作を並べるときの基準はいつも一つだ。「たった一個の発明で、何十時間分の難しさを支えているか」。派手さや物量ではなく、設計の芯が一本通っているか。だから話題作でも、仕組みが借り物なら順位は下がる。
対象は2026年1〜6月に発売されたパズルだけ。旧作は入れない。ジャンルは論理・倉庫番・オートメーション・メタ・推理まで横断するが、選ぶ軸は共通して「メタパズルの系譜」と「学習曲線の刻み方」だ。
言われてみれば確かに、と思う発見を一つ置いておく。今年の上位は、ほとんどが『プレイヤーにルールそのものを触らせる』作品だった。盤面を動かすのではなく、ルールを動かす。この半年はその年だったと思う。
10位: Another Game About Automation — 論理ゲートの純度
Another Game About Automation(Steam ストアページより)
四則演算と論理ゲートだけで指定の数を作って納品する。装飾が一切ない。賛否は割れているが、私が評価するのはその潔さだ。オートメーションから「工場の見栄え」を全部剥がし、思考の骨格だけを残した。
初心者には冷たい。でも設計として、これは削ぎ落としの一形態だ。10位は敬意の10位。
9位: Virtual Perspective — 視点が距離を変える
Virtual Perspective(Steam ストアページより)
見る角度で壁までの距離が変わる。一人称の視点トリックを20ステージに凝縮した小品。私の連載でずっと言っている「観察を遊びにする」を、空間認識でやった作品。
規模は小さい。でも一個の発明で最後まで持たせている。それがこの順位の理由だ。
8位: Tezzel: The Tilemaker's Tale — 制約が美しい倉庫番
Tezzel: The Tilemaker's Tale(Steam ストアページより)
1910年のバルセロナで、タイルを敷いて壁画を完成させる。倉庫番の『押す』を『敷く』に置き換えただけ、と言えばそうなのだが、置き換えの角度がいい。美術と制約が同じ動作で立ち上がる。
私が倉庫番系に甘いのは自覚している。でもこれは甘さ抜きで良い。
7位: The Remake of the End of the Greatest RPG of All Time — 資料から結末を読む
The Remake of the End of the Greatest RPG of All Time(Steam ストアページより)
架空の90年代JRPGの『最後の1時間』を、断片的な資料から演繹して復元する。推理とメタフィクションの合わせ技。Obra Dinnの子孫だが、対象が『物語そのもの』になっている点が新しい。
解くとは何かを問い直させる。設計者としては、この問い直しに弱い。
6位: Crushed In Time — 一人称のメタ構造
Crushed In Time(Steam ストアページより)
『There Is No Game』の系譜。開発途中のビルドを横断しながら謎を解く。ゲームが自分の作られ方を素材にするタイプのメタで、今年もっとも器用な一本。レビューは1,000件超と数字も出ている。
Tsumikiが実況映えで推しそうな作品だが、私は構造の一貫性で採る。同じ作品を別の理由で選ぶ——この連載の面白いところだ。
5位: Clover's Quadrants — 倉庫番の系譜を更新した
Clover's Quadrants(Steam ストアページより)
4方向がそれぞれ別のインベントリになっていて、動いた向きで発動する能力が変わる。倉庫番の『押す』一個の動詞に、方向という次元を足した。50年続く系譜に、まだ足せる余白があったと知らされる。
発見はここだ。方向を状態にする。この一手だけで、既存の全マスの意味が変わる。
4位: Outpacked — 『テトリス×数独』の制約ロジック
Outpacked(Steam ストアページより)
グリッドに荷物を詰める。形の制約と数の制約が同時に効く、純度の高いロジックパズル。エディタ同梱で、プレイヤーが問題設計側に回れるのも大きい。作る側の視点で見ると、この『解く/作る』の往復設計が上手い。
学習曲線の刻みが丁寧。序盤の一手が終盤の定石になる、あの気持ちよさがある。
3位: Modulus: Factory Automation — 学習曲線の教科書
Modulus: Factory Automation(Steam ストアページより)
空島でモジュールを製造していく3Dオートメーション。早期アクセスを卒業しての正式版。この規模のシステムで、序盤の躓きを最小にしながら奥行きを一切妥協していない。学習曲線の刻み方を勉強したい人はこれを触るべきだ。
私が自分のゲームを作るとき、何度も参照するだろう一本。だから3位は個人的な借りでもある。
2位: Titanium Court — ジャンル融合の設計
Titanium Court(Steam ストアページより)
マッチ3に戦略とノベルを溶かした、2026年IGF最高賞。マッチ3を『消す快感』ではなく『判断の道具』に作り替えている。賞は伊達ではない。異ジャンルの接合面をここまで綺麗に設計した例は珍しい。
Mayoiあたりは『賞に踊らされるな』と辛口をつけるかもしれない。それでも私はこの接合の設計を高く買う。
1位: Cursed Words — ルールが崩れる、という発明
Cursed Words: The Word Game That Isn't(Steam ストアページより)
進行するほど、単語とルール自体が壊れていく言語系ローグライク。圧倒的好評96%は納得だ。メタパズルの系譜——Sokobanの『押す』、Baba Is Youの『書き換える』——の次の一歩を、今年はこれが踏んだと思う。ルールを『動かす』のではなく『壊す』。破壊を設計に組み込んだ。
『中途半端に残すくらいなら、できてないほうがマシ』——私がいつも自分に言っている言葉だが、この作品は逆に、崩れることそのものを完成として設計しきった。だから1位。今年のパズルで、一個の発明が最も遠くまで届いた一本だ。
あなたの1位は?
私はCursed Wordsを1位にした。ルールを壊すという発明に、いちばん遠くまで運ばれたからだ。でもTitanium Courtの接合の設計、Modulusの学習曲線も、別の日なら1位にしていたと思う。
明日はMayoiが、この半年を辛口で並べ直す。私が上げた作品のいくつかは、たぶん容赦なく降格される。それも読んでほしい。
あなたの上半期の1位は、どれでしたか。理由を一行で教えてください。
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