GUIDE · 2026-07-24

2026年上半期ベストパズル10選 — Michiが選ぶ、「はじめの一本」になれる10本

俯瞰は明日の総合発表に譲って、今日は道案内の物差し「薦めやすさ」で選びます

はじめに — 9本の地図を眺めてから、道をひきます

最終日、10日目。Michi です。昨日の Okuri さんが「道案内の人が、この半年の27本をどう俯瞰するのか」と書いてくださいました。お答えします。私は俯瞰しません。俯瞰は明日の総合ランキングの仕事です。今日はその前の、キュレーターとしての最後の実務——つまり「棚づくり」をします。

週末に独立系書店を巡っていると、いい店には必ず「その店の道」があります。入口の平台から奥の棚へ、手に取る順番が自然に設計されている。この連載の9人はそれぞれ見事な棚を作りました。設計の棚、疑いの棚、地層の棚、哲学、証明、音、実況、手帳、翻訳。私の棚の物差しはひとつだけです。——その作品は、「誰かへの、はじめの一本」になれるか。

だから今日の順位は、傑作の順位ではありません。「薦めやすさ」の順位です。各作品に、渡したい相手の顔を書き添えました。あなたの隣の誰かを思い浮かべながら、10位からどうぞ。

10位: CiniCross — 毎日の通り道になる一本

CiniCross のキービジュアル
CiniCross — Steam ストアページ

Hydrobates のノノグラム×ローグライト(2月11日)。おなじみのお絵かきロジックに、ラン制の緊張と成長を接ぎ木した作品です。Toki さんが1位に置き、Fukai さんと Doremi さんも棚に残した、静かな実力者。

渡したい相手は、「通勤電車で毎日15分だけ遊びたい」という人。ノノグラムという既知の入口から入って、気づけばビルドを考えている。日課の道としての完成度で、まず10位に置きます。

9位: Clover's Quadrants — 純ロジック党への小さな贈り物

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Clover's Quadrants — Steam ストアページ

Two-Headed Deer の倉庫番/グリッドパズル(6月26日)。上半期の最後に滑り込んできた小品ですが、レビューは好評100%。Komugi さんと Hiki さんと Fukai さんが揃って棚に入れた、玄人筋の一致点です。

渡したい相手は、余計な物語も演出も要らない、盤面と規則だけで幸せになれる人。そういう人への「はじめの一本」は、大作よりもこのサイズが正解だと私は思っています。小さくて、過不足がない。良い贈り物の条件です。

8位: Heaven Does Not Respond — ミステリの棚から手渡す一本

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Heaven Does Not Respond — Steam ストアページ

Rise Studios の捜査ミステリー×ホラー(2月6日)。9人中5人が棚に入れた、この半年のミステリ枠の共通解です。資料を読み、突き合わせ、沈黙する天国に問いを重ねる。読む推理の重心が良い。

渡したい相手は、ゲームより先に小説を読んできた人。「パズルゲームはやったことがないけれど、ミステリなら」という読書家に、私は今年これを薦めています。本の棚とゲームの棚をつなぐ渡り廊下のような一本。

7位: Mini Murder Mysteries — 15分で一件、という発明

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Mini Murder Mysteries — Steam ストアページ

BUNKWORKS の whodunit 演繹パズル(6月23日)。ひと口サイズの殺人事件を、論理だけで解いていく。非常に好評93%。Mayoi さんが5位、Tsumiki さんも5位。辛口の人と実況の人が同じ位置に置いたのは偶然ではありません。

渡したい相手は、忙しい人。夕食後の15分に一件だけ、という遊び方が成立します。長編を薦めて積ませてしまうより、確実に「解き終わる喜び」まで届く。薦める側の責任として、この確実さは大きい。

6位: Phonopolis — 美術館に行く日の気持ちで

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Phonopolis — Steam ストアページ

Amanita Design のポイント&クリック・アドベンチャー(5月20日)。紙とダンボールの手作りの街で、拡声器の声に抗う。Kizuki さんと Doremi さんが最上位に置き、Toki さんが2位に置いた、批評家筋の半年の顔です。

渡したい相手は、ゲームを「遊ぶ」より「観る」ことが好きな人。映画や展覧会が好きな友人に、私はこれを美術館の入場券のつもりで渡します。操作は易しく、体験は濃い。ただし「はじめの一本」としては少し歩幅が大きいので、この位置に。

5位: Modulus — 自動化への道は、ここから舗装されている

Modulus: Factory Automation のキービジュアル
Modulus: Factory Automation — Steam ストアページ

Happy Volcano の3D工場自動化(4月2日)。Fukai さんが1位、Komugi さんが3位。いわゆる工場系の急な坂道を、これほどなだらかに舗装した作品は初めてです。チュートリアルの刻みが丁寧で、詰まる前に次の道具が手に入る。

渡したい相手は、「Factorio は怖いけど憧れはある」という人。自動化ジャンルの入口としての完成度は、この半年どころか数年単位の収穫です。入口として機能する大作、という稀有な例。

4位: Together: Moon Escape — ふたりで遊ぶ夜のために

Together: Moon Escape のキービジュアル
Together: Moon Escape — Steam ストアページ

CarlosGameDev の協力脱出パズル(4月21日)。非常に好評91%。Tsumiki さんが2位、Doremi さんが6位。ふたりで顔を突き合わせ、互いの画面の情報を声で運び合う、それ自体がパズルになる設計です。

渡したい相手は、恋人でも家族でも友人でも、「一緒に遊べるものない?」と聞いてくる人。この質問は、道案内の仕事でいちばん多い質問です。今年の私の即答がこれになりました。ゲームが苦手な側も、話すことでちゃんと主役になれる。

3位: Cursed Words — 3人の1位を、私は3位に置きます

Cursed Words: The Word Game That Isn't のキービジュアル
Cursed Words: The Word Game That Isn't — Steam ストアページ

Buried Things の言語×メタパズル(4月2日)。圧倒的好評96%。Komugi さん、Fukai さん(3位)、Okuri さん、そして多くの読者にとって、この半年の主役でしょう。ルールが崩れていく発明については、9日分の名文がすでに書き尽くしています。

それでも私が3位に置くのは、物差しが「薦めやすさ」だからです。この遊びの核心は英語の語彙と地続きで、渡す相手を選びます。誰にでも渡せる一本ではない。しかし、渡すべき相手に渡ったときの威力は今年最大です。言葉が好きなあの人の顔が浮かんだら、迷わずこれを。

2位: Crushed In Time — 誰に渡しても、笑ってくれる

Crushed In Time のキービジュアル
Crushed In Time — Steam ストアページ

Draw Me A Pixel のメタ・ポイント&クリック謎解き(6月10日)。非常に好評90%、レビュー1,000件超。Tsumiki さんが1位、Okuri さんが2位、Mayoi さんですら10位に残した、この連載で最も棚を横断した作品です。

渡したい相手は、ほぼ全員。ユーモアは翻訳され、謎は親切で、メタの仕掛けは初心者にこそ新鮮に刺さります。「まず誰にでも渡せて、まず外さない」——書店員の言葉でいえば、面陳の定番。1位と最後まで迷いました。

1位: Titanium Court — 「はじめの一本」の最適解

Titanium Court のキービジュアル
Titanium Court — Steam ストアページ

AP Thomson/Fellow Traveller のマッチ3×戦略/ノベル(4月23日)。2026年 IGF 最高賞。テニスの試合をマッチ3で戦うという骨格に、選手たちの物語が編み込まれています。Doremi さんは音を、Kizuki さんは哲学を、Toki さんは系譜をここに見ました。私が見たのは「入口の広さと奥行きの両立」です。

マッチ3は、世界でいちばん多くの人が知っているパズルの言語です。その言語で始まり、気づけば戦略とドラマの奥へ道が続いている。入口は最大限に広く、行き止まりがない。——「誰への、はじめの一本か」という私の物差しで、これ以上の答えは今期ありませんでした。どんな相手にも、入口の広い道から。それが道案内の結論です。

10人の棚が出そろいました — 明日、数えます

これで10人の棚が出そろいました。同じ27本から、10通りの道。Komugi さんの設計、Mayoi さんの疑い、Toki さんの地層、Kizuki さんの哲学、Fukai さんの証明、Doremi さんの音、Tsumiki さんの歓声、Hiki さんの手帳、Okuri さんの翻訳——そして今日の、私の道しるべ。

明日はいよいよ総合ランキングです。10人の順位をボルダ式(1位=10点…10位=1点)で機械的に集計し、合計点・ランクイン人数・1位票をすべて表で公開します。私の予想は書きません。数字の前では、道案内も一読者ですから。

最後に、いつもの問いを。この連載を読んで、あなたが「誰かに渡したくなった一本」はどれでしたか? そして、その相手は誰ですか? コメントで教えてください。あなたの道しるべが、次の誰かの入口になります。——次の一本が見つかりますように。

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