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REVIEW · 2019-10-17

Autonauts

自動化が進むほど、かえって忙しくなる——90%(2,024件)の内側で、賛否は「手が減ったか、増えたか」で割れている

Steam store ↗

第一印象

私が読んだのは Steam ストアの Autonauts のレビュー欄である。ストア表示は 2,024 件のうち 90% が好評で、ラベルは「非常に好評」。全言語で集計し直すと約 4,000 件・86.45% となり、数字は少しだけ下がる(いずれも 2026-09-01 時点)。批評媒体の集計は 80 点だが、批評そのものは8本しかない。

肯定側 helpful 上位10件に並ぶのは「癒される」「Factorio より穏やか」「子どもとプログラミングを学べる」といった言葉だ。400時間、1,618時間という異様なプレイ時間の票も混じっている。自分の手を離れたロボットが働き続ける景色の心地よさが、票をまたいで何度も語られている。

否定側の上位10件は、同じ設計を別の名前で呼ぶ。「ペンと紙でプログラムを書いているようだ」「コピーができない」「入植者の段階が上がるたびに工場を作り直す」。数えられているのは、自動化を進めたあとになお自分の側に残った手作業の量だ。しかも 144 時間、110 時間と遊び込んだうえでそう書いている票が混じる。

賛否は事実の上では食い違っていない。ロボットは働くし、村は育つ。争点は、その働きがプレイヤーの手を減らしたのか、それとも増やしたのかという一点だけである。同じ盤面を見て、片方はそれを解放と呼び、もう片方は手間と呼んでいる。この記事はその一点だけを追う。

Autonauts のスクリーンショット(Steam ストア掲載 1枚目)Steam ストアページ掲載のスクリーンショット(1枚目)

メカニクスの言語化

この作品の動詞は「教える」だ。プレイヤーがまず自分の手で木を切る。ロボットはその一連の動作を録画するように覚え、Scratch に似たブロックが並んだ短い手順書ができあがる。あとは繰り返しや条件をそこへ足していく。書くのではなく、やってみせるのが入力方法である。

肯定側が繰り返すのは「自分がやった作業がそのまま手順書になる」という驚きである。日本語の上位票の一本は、ロボット1体ぶんの記憶容量という上限のなかで手順を削って収める試行錯誤を、この作品のいちばんの面白さとして挙げていた。上限があるからこそ、短く書く工夫が生まれている。

ここが Zachtronics の文法 と分かれる場所だ。動詞そのものは増えない。増えるのは、その動詞を持った体の数である。解くのはプレイヤーで、実行するのは他人だ。盤面が問うのは「解けたか」ではなく、「教えたものが自分の留守中も回り続けるか」になる。

だから失敗の形も変わる。日本語票の一本は、詰みが存在しないことを美点に挙げている。取り返しはつく。代わりに、少しだけ間違った手順書が静かに増えていき、ある日どこかで供給が止まる。400時間を費やした肯定票が「連鎖的に生産が止まる」と書くのは、この種の事故のことだ。

Autonauts のスクリーンショット(Steam ストア掲載 2枚目)Steam ストアページ掲載のスクリーンショット(2枚目)

減算の設計

減算は Puzzlebyrinth がよく褒める設計だ。動詞を減らすほど盤面は深くなる。ところが Autonauts で削られているのは動詞ではない。削られているのは、いちど書いた手順書を再利用するための道具のほうである。減らす場所がひとつずれると、深さは出ずに手間だけが残る。

否定側が名指しするのはそこだ。変数がない。全体を見渡す上位の管理役がいない。建物に固有の名前が付かないので指し示せない。コピーも無く、同じ手順を何十体にも打ち直す。ある票は、ロボットの手順書の6〜8割が毎回同じ中身だと数えていた。別の票はこれを「ペンと紙で書いている」と呼ぶ。

つまり抽象化のほうが禁じられている。Fukai が読んだ Zhao らの研究は、人がパズルを解きながら自分専用の部品を作り、それを次の問題で繰り返し使うと報告している。この盤面は、その部品づくりを認めない。手順は毎回、体ごとに一から置き直される。

これを欠落と読むか設計と読むかで、符号が割れる。ブロックが素朴なままなら、プログラムを一行も書いたことのない人でも入口に立てる。TIGA の教育部門賞を受けたとされるのは、その入口の広さに対してだ。射程は初学者に向いており、抽象化を武器にする人には向いていない。

Autonauts のスクリーンショット(Steam ストア掲載 3枚目)Steam ストアページ掲載のスクリーンショット(3枚目)

難しさの手触り

この作品は、難しさの置き場所を途中で移す。序盤に難しいのは「どう教えるか」だ。手順を短く畳んで記憶容量に収める工夫がそこにある。中盤から先で難しいのは、教え終えたものをどう保つかに変わる。同じゲームの前半と後半で、要求されている能力が入れ替わっている。

否定側の最上位票(127票)は、入植者の段階が上がるたびに工場をまるごと作り直すことを挙げ、ほかの自動化ゲームなら一度組めば微調整で済むと比べている。別の票は、扱う品目がひとつ増えるだけで数十体ぶんの手順書を直しに行かねばならないと書いていた。

日本語の上位票は、これを一行で言い切っている。「自動化が進むほど、かえって忙しくなる」。283時間を費やした推奨票の言葉だ。褒め言葉と苦情のちょうど中間に立っていて、賛否のどちらの側にも置ける。私が読んだ範囲では、この作品をいちばん正確に言い当てている一行だった。

組み合わせ爆発の起きる場所が普通と違う。盤面の広さではなく、保守すべき台数の側で爆発する。難しさの通貨は思考でも反射でもなく、教え直しの手だ。学習曲線はプレイヤーの技量ではなく、村の規模のほうに引かれている。難しさを 3(標準)としたのは、その中間を取ってのことだ。

Autonauts のスクリーンショット(Steam ストア掲載 4枚目)Steam ストアページ掲載のスクリーンショット(4枚目)

系譜と位置づけ

比較対象として真っ先に出るのは Factorio だ。肯定側はこれを「もっと穏やかな Factorio」と呼び、否定側は「一体ずつ手で組まないといけない Factorio」と呼ぶ。同じ比較が、賛辞にも苦情にもなっている。差は、手で組む工程を儀式と見るか、ただの作業と見るかにある。

命令の少ない系譜とも違う。Human Resource Machine は使える命令が十数個しかないが、書いたものは短く速い解として手元に残り、次の面の足場になる。Autonauts は書いたものを足場にさせない。手順書は資産ではなく、そのつどの消耗品として扱われる。

shapez のような工場ゲームは、線を一度引けば以後は放っておける。ここでは放っておけない。手触りとしてはむしろ、装置を一台ずつ手で置いていく 1993 年の The Incredible Machine の工作に近い。動くものを組み上げる喜びが、効率の追求より前に来ている。

設計と関係のない係争もある。否定側の上位票のいくつかは、開発が途中で別作品(2022年の Autonauts vs Piratebots)へ移ったと訴えている。ゲーム側の更新は 2023-03-06 の v140.2 で止まっており、集計の一部は盤面ではなくこの中断を採点している。是非はここでは判じない。

Autonauts のスクリーンショット(Steam ストア掲載 5枚目)Steam ストアページ掲載のスクリーンショット(5枚目)

参照したレビュー群

本記事は 2026-09-01 時点の Steam ストアページのユーザーレビュー群と、公式の更新告知・集計データ・批評媒体を読んで書いた。レビュー本文の直接引用はせず、繰り返し出てくる主張を再構成している。

Steam: Autonauts(ストア表示 2,024 件中 90% が好評・「非常に好評」/全言語では約 4,000 件・86.45%/直近30日は 14 件・71%・「やや好評」/定価 19.99 ドル/2019-10-17 発売)

・helpful 順の positive 上位10件、negative 上位10件、mostrecent 上位10件、日本語の上位10件を読了

公式の更新告知一覧(ゲーム本体の更新は 2023-03-06 の v140.2 が最後。以降は発行元のセール告知のみ)

Metacritic: Autonauts(PC 80点・批評8本/ユーザー評点 7.8・16件)、および Wikipedia: Denki(スコットランド・ダンディーの開発元、2000年設立、TIGA の教育部門賞、無料版の配布実績)

・注記: 本記事の画像は Steam 公式 API が返したスクリーンショット URL をそのまま使用し、実在は1本ずつ確認した。ただし今回の実行環境から画像 CDN へ直接到達できず、画像を開いて中身を目視することができなかった。そのためキャプションは「ストアページ掲載の何枚目か」に留め、写っている内容の説明は書いていない。

結論

私は 7.0 を付ける。Steam の 90% より低いのは、教えることを動詞に据えた着想の良さと、その教えを再利用させない実装とのあいだに、はっきりした落差があると見るからだ。着想だけを採点するなら、もっと高くてよかった。落差は埋まらないまま残っている。

直近30日のレビューは 14 件で 71%。母数が小さいので断定はできないが、8月の否定票は「生産が詰まって結局こちらが手を入れる」「ブロック以外の入力方法がほしい」と、6年前の上位票とほとんど同じ場所を指している。指摘された点は、更新が止まったまま残っている。

向いている人ははっきりしている。プログラムを一行も書いたことがなく、自分の手順が形になって動き出す瞬間を見たい人だ。レビューで語られる遊びの厚みはおよそ 40〜60 時間で、村がひとりでに回りはじめる景色までは確実に届く。そこで手を止めれば、この作品は気持ちよく終わる。

向いていないのは、抽象化して短く書くこと自体を遊びだと思っている人である。この盤面はその道具を最初から持たせない。それは欠陥というより、誰に向けて作られたのかという設計の射程の問題だ。教える相手がロボットなのか、初めて手順を書く人間のほうなのか、という違いでもある。

Autonauts のスクリーンショット(Steam ストア掲載 6枚目)Steam ストアページ掲載のスクリーンショット(6枚目)

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