REVIEW · 2005-04-19

Psychonauts

他人の頭の中へ

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第一印象

サマーキャンプに紛れ込んだ少年 Raz。彼は他人の頭の中に潜入できる超能力者で、教師 Olelander Cruller の頭の中で軍隊式の訓練を受けます。

頭の中の世界は、その人の性格そのものです。完璧主義者の脳は整理整頓された箱庭、被害妄想者の脳は陰謀論にまみれた郊外、舞台俳優の脳は永遠に客のいない劇場。

Tim Schafer は Grim Fandango、Day of the Tentacle、Monkey Island などの LucasArts アドベンチャーで知られる脚本家で、Psychonauts は彼が Double Fine を設立した最初の大作です。

メカニクスの言語化

Raz は念力、火炎、テレキネシスなどの超能力を使い、3D プラットフォームと環境パズルを越えていきます。各キャラの脳ごとに、メカニクスが全く違う。

牛乳屋の精神世界、レスラーの精神世界、革命家の精神世界。脳の数だけ別ジャンルのゲームが並走しています。

プラットフォーマーとアドベンチャーが融合した構造で、操作系は3Dアクションですが、解法はアドベンチャー寄りの観察と組合せが中心。

このゲームの魅力

各キャラの内面が全く別ジャンルのパズルステージに化ける、構造そのものが脚本である稀有な体験。Tim Schafer の脚本も最高です。

Milkman Conspiracy のステージは特に有名で、被害妄想者の脳の中で、家具が監視カメラに化け、住民が政府の工作員に化ける。プレイヤーは奇妙な郊外の風景の中で、被害妄想者の世界観そのものを歩くことになります。

そして全編にユーモアが溢れています。Schafer の脚本は LucasArts アドベンチャー直系で、台詞の一つ一つが小粋な笑いを誘う。けれど終盤は意外に重い心理ドラマに転じ、笑いと感動の両方が同居する。

ゲームデザインの工夫

『Memory Vault』『Mental Cobweb』『Emotional Baggage』など心理学概念をゲームメカニクス化。世界観と操作が直結しています。プレイヤーは『精神世界』をビジュアルとメカニクスの両方で体感する。

もう一つの工夫は、各精神世界のジャンルの違いです。Milkman は探偵もの、Black Velvetopia はメキシコ風闘牛、Waterloo は戦略シミュレーション風の盤面。同じ Raz が操作するのに、ステージごとに別ゲームを遊んでいる感覚になる。これは商業作品としては非常にリスキーな設計で、開発工数も跳ね上がりますが、結果として『脳の多様性』が体感できる稀有な作品になりました。

もし自分が同じ題材を作るなら、ステージの統一感をどこまで諦めるかで必ず迷うはずです。Schafer は『各精神世界が全く違って良い』方向に振り切り、ジャンル横断を選んだ。これは商業的には危ない選択でしたが、結果として『脳の数だけゲームが入っている』濃度を実現した。続編 Psychonauts 2(2021) では更にこの方向が磨かれます。

難しさの手触り

15時間で完走、プラットフォーム操作の精度が要求される場面があるが、難所は限定的。Milkman の精神世界が特に印象に残ります。

難所は終盤の Meat Circus(劇場) で、プラットフォーマーとしての操作精度が急に要求される。ここで詰まる人が多く、後の Remaster 版では一部緩和されました。

結論

2005年の名作。続編 Psychonauts 2(2021) もあるが、まずはこちらから。インディーが何を目指せるかを示した、20年前の道標です。

制作者として真似たいのは、『ステージごとに別ジャンルになる』勇気です。統一感を捨てて、各キャラクターの内面に最適なジャンルを選ぶ。これは制作工数との綱引きですが、結果として濃度を生む。Schafer の脚本力が支えたからこそ成立した設計で、簡単には真似できないけれど、目指す場所として常に参照したい。

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