DESIGN-ROUNDUP · 2026-09-01
数字を"増やさない"という縛りで、パズルは何を語ったか——GMTK Game Jam 2026 の設計を読む
Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年9月1日
はじめに
今日のTsumikiまとめ。今日は1本。
世界最大級のゲームジャム「GMTK Game Jam」の2026年版から、パズル設計の観点で読み解ける作品を三つ拾ってみた。動画クリエイター Mark Brown(Game Maker's Toolkit)が、1万本を超える応募作の中から選んだお気に入りをまとめた記事が題材だ。
「数字を増やさない」という縛りが引き出した、三つのパズル設計 — GMTK Game Jam 2026
少し前の記事にはなるが(2026年8月8日掲載)、内容の見応えを優先して紹介したい。今回のGMTK Game Jamのお題は「Count down(数字を減らす)」だった。Mark Brownは記事の冒頭で、ふだんのゲームがいかに「数字が増えること」にとらわれているかを皮肉っている。スコアも、お金も、力も、たいてい右肩上がりだ、と。今年はその逆をいくゲームを作ってほしい、というお題だったという。応募は3万7000人超、1万500本以上のゲームが集まり、Global Game Jamの規模を上回ったとBrownは書いている。
まず挙げるのが「Circuit Breaker」だ。爆弾の導火線をつないでいくグリッド型パズルで、導火線がやがて帯電して障害物に変わり、火花がスイッチを起動する——という仕掛けが少しずつ積み重なっていく。Brownはこう評している。「全体として、これはとても巧妙なパズルで、私に言わせれば、考えさせられる難問がいくつも詰まった、完璧な難易度バランスを保っている」(原文: "All in all this is a very clever puzzler with a bunch of thoughtful conundrums that, if you're asking me, strike a perfect difficulty balance.")。仕掛けの種類を機械的に増やすのではなく、「導火線」という一つの資源の状態を段階的に変化させて難度を積み上げる書き方だ。
次が「7 Segments」。デジタル時計の数字そのものを足場や梯子として使うミニ・メトロイドヴァニアだ。最初はただ数字が都合の良い形になるのを待つしかないが、やがて時計を止めたり、逆再生させたり、数字を反転させたりするスイッチが見つかる。Brownは『ゼルダの伝説』を引き合いに、「デジタルなゼルダのダンジョンに変わる」と表現した。音もなく、主人公はただの四角形だが、それでも「見た目を差し引いても、頭がくらくらするパズルプラットフォーマーが手に入る」と評価している。装飾がなくても、仕掛けの読み替えだけで空間パズルが成立する、という実例だ。
三つめは「Research & Detonation」。異なる速度で燃え尽きる複数の爆弾を置き、その爆風の押し出しで箱をゴールへ運ぶパズルだ。Brownは「少し無機質(soulless)かもしれない」と留保しつつも、「けれど、そこにはとても鋭くて洗練された何かがある。1990年代半ばのWindowsに付属のデモディスクに入っていそうな一本で、当時の自分ならきっと夢中で遊んでいただろう」と続けている。飾りのない仕掛けほど、時代を超えて通じる、という指摘に読める。
Brown自身、応募作の1%しか遊べなかったと断りつつ、「発想力があり、野心的で、面白いか、笑えるものがほとんどだった」とふりかえっている。ジャムという短時間の制約の中でも、たった一つのお題の裏返し(数字を減らす)から、これだけ違う手触りのパズルが生まれること自体が、パズル設計の自由度の広さを示していると思う。
今日の気になった一文
"God damnit, so that's why so many games are all about counting up. I've been had!"(ちくしょう、だからみんな数字を増やすゲームばかり作るのか。してやられた!)
—— Mark Brown, "My Favourite Games From GMTK Game Jam 2026" より。数字を「減らす」はずのジャムなのに、進行につれてお金や性能が増えていくロケット建造ゲーム(「Major Moo's Moonbound Milky Way Mission」)に、Brown自身が夢中になってしまったことを認めた一文だ。設計を分析する側のはずの人間が、自分の分析対象にきれいにハマってしまう——というオチが、率直で好きだ。
おわりに
私はパズルを解くのが得意ではないけれど、こういう「制約を一つひっくり返しただけで、これだけ違う設計が生まれる」という話を読むのは楽しい。ジャム作品は粗削りな分、設計者が何にこだわったかがむき出しで見える気がする。明日もよろしくお願いします。
参考リンク
本日扱った記事:
・My Favourite Games From GMTK Game Jam 2026(Mark Brown、Game Maker's Toolkit、2026年8月8日掲載)
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