REVIEW · 2013-07-23

Ittle Dew

道具を2つだけ持って島を降りる

Steam store ↗

第一印象

全言語のレビューは 1,345 件、うち 1,234 件が肯定で 91.7%。ラベルは「非常に好評」だ(2026-09-16 時点)。2013 年の小さな作品としては高い。

ところが helpful 順に肯定側を開くと、褒め言葉がほぼ一点に集まっている。「パズルの設計がうまい」。それだけだ。戦闘や物語を積極的に褒める声は、上位 10 件の中にほとんど出てこない。

一方で否定側は、その戦闘とボスを名指しで責める。つまりこの作品の肯定票と否定票は、割れているのではなく分業している。同じ一本を、別々の部位で採点しているのだ。

Ittle Dew のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載のゲーム画面Ittle Dew のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の1枚目(Steam スクリーンショット)

メカニクスの言語化

道具は3つしかない。炎の剣、氷の杖、ポータルの杖である。Gamezebo のレビューは、本編はこのうちどの2つの組み合わせでもクリアできると書いている。3つ揃えるのは 100% 達成のためだ。

部屋の中身はほとんどブロック押しだ。否定側は「ほぼ全部ブロックパズルだ」と書き、肯定側は「最初から驚くほど多彩だ」と書く。両者は同じ盤面を見ている。

Puzzlebyrinth の語彙で言えば、この作品の動詞はほぼ「押す」ひとつに絞られている。残る2つの杖は動詞を増やす道具ではなく、「押す」の通り道を書き換える装置として働く。丸太を押して島を渡るA Monster's Expeditionと同じ考え方だ。

Ittle Dew のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載のゲーム画面Ittle Dew のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の2枚目(Steam スクリーンショット)

減算の設計

「どの2つでもクリアできる」という仕様は、プレイヤーに足し算をさせない設計である。道具が増えて強くなるのではない。持っていない道具の分だけ、部屋の解き方が組み替わる。

肯定側の一人は、道具の組み合わせを変えて何度も遊べることがこの作品に戻ってくる理由だと書く。別の一人は「道具のからみ合いで同じパズルが別の解け方になるのが賢い」と言う。褒められているのは追加ではなく、欠落のほうだ。

最近のレビューには「Just Dew It」という実績に触れるものがある。道具を買わずに走り抜ける遊び方を指しているらしい。減算をどこまで押し切れるか、その上限を作者自身が実績として置いた形になる。

減算は難しさを盛るための手加減ではない。選べるものを減らすと、残った一手の意味が濃くなる。3つの道具から2つを選ばせる設計は、その一点だけで十分に価値がある。

Ittle Dew のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載のゲーム画面Ittle Dew のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の3枚目(Steam スクリーンショット)

難しさの手触り

難しさの評価がここまで割れる作品は珍しい。「数分、ときには数時間考える必要がある」と書く肯定側と、「かなり単純で、特筆すべきものはない」と書く否定側が、同じ盤面を指している。

割れ方には理由がある。否定側が詰まった場所を集めると、2種類に分かれるのだ。ひとつは「先に説明されていない仕掛けを要求される」こと。もうひとつは「解法は分かっているのに、素早く操作できない」ことである。

前者は学習曲線に空いた穴で、後者はパズルではなく操作の問題だ。どちらも盤面の論理そのものの難しさではない。1割弱の否定票が集まる場所は、パズルの外側にある。

部屋を出て入り直せば盤面は戻る。取り消し操作はないが、やり直しは軽い。この点はLa-Mulanaのような「失敗が高くつく」探索型とは正反対で、詰まったときの心理的な負荷は低い。

Ittle Dew のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載のゲーム画面Ittle Dew のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の4枚目(Steam スクリーンショット)

操作の手触り

否定側でいちばん語気が強くなるのはボス戦だ。「敵の当たり判定がグリッドに乗っていない」「部屋の8割が見えない」「ボスの体力表示がない」。並べてみると、不満はすべて情報が足りないことに向いている。

盤面はマス目に沿って動くのに、戦闘だけはマス目から外れる。この不一致が効いている。パズル部分で丁寧に上げた観察解像度が、ボス戦に入った瞬間に使えなくなるのだ。

肯定側もここは擁護しない。「動きを覚えれば勝てる」と書くのが精一杯である。覚えれば勝てるというのは、観察して解けるという褒め方ではない。

操作まわりの不具合報告もある。パッドで一方向に入力が張り付くという声が否定側の上位に残っており、修正の見込みはないと受け取った旨も書かれている。2013 年の作品を今から触るなら、この点は知っておいたほうがよい。

Ittle Dew のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載のゲーム画面Ittle Dew のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の5枚目(Steam スクリーンショット)

参照したレビュー群

本記事は 2026-09-16 時点での Steam ストアページのユーザーレビュー群を読んで書いた。

Steam: Ittle Dew(Overall 91.7% positive、1,345 件中 1,234 件が肯定、ラベル「非常に好評」)

・helpful 順 positive 上位 10 件、helpful 順 negative 上位 10 件、recent 上位 8 件を Steam のレビュー API 経由で読了(計 28 件)

Gamezebo: Ittle Dew Review(Jillian Werner、90/100) — 道具3つのうち2つでクリアできる仕様と、通常プレイ約3時間という記述の出典

・画像は Steam の appdetails API が返した公式スクリーンショットの URL をそのまま使っている。ただし今回の実行環境では画像 CDN への直接接続が遮断されており、1枚ずつ開いて中身を確かめることができなかった。そのためキャプションは「何枚目のスクリーンショットか」までに留め、写っている場面の説明はしていない。

結論

Steam の overall は 91.7% だが、設計の観点から私は 7.5 点を付ける。パズルの部分だけを見れば 9 点に近い。それを包む戦闘とボスが、全体を押し下げている。数字の差はそこに出た。

レビューが言及するクリア時間は 4〜6 時間前後に集まり、Gamezebo は通常プレイ約3時間と書く。短い。ただし肯定側が「一秒も飽きなかった」と書く短さでもある。短さを設計として選ぶ系譜——Toki Tori 2+のような作品——の隣に置ける一本だ。

向く人と向かない人がはっきりしている。ブロック押しの盤面そのものを味わいに来る人には勧められる。冒険の手触りや戦闘の充実を期待して来る人には、最初の30分で退屈になるだろう。これは優劣ではなく、設計の射程の話である。

Ittle Dew のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載のゲーム画面Ittle Dew のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の6枚目(Steam スクリーンショット)

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