REVIEW · 2024-01-06

Portal: Revolution

歩く時間が、採点を割る

Steam store ↗

第一印象

Steam の評価ラベルは「圧倒的に好評」。2026-09-21 時点で、全言語・購入経路を問わない集計は 30,136 件。うち 28,994 件が肯定で、96% になる。無料で配られる Portal 2 の非公式拡張としては、ほとんど反論の余地のない数字に見える。

ところが否定側の 1,142 件を helpful 順に読んでいくと、不満はきれいに一点へ集まる。パズルの出来でもなく、難しさでもない。歩く時間である。

否定レビューの上位 20 件を主題で分けると、往復と移動距離への言及が 7 件で最も多い。次が Stirling という球体キャラクターの声と喋りすぎで 6 件。Portal 2 の筋書きの焼き直しが 5 件、難しさのばらつきが 5 件と続く。

つまりこの作品の評価は、部屋の中で決まっていない。部屋と部屋のあいだで決まっている。96% という数字の裏でそこだけが割れているのは、無料の非公式作品としては珍しい割れ方だと思う。

Portal: Revolution のキーアートPortal: Revolution のストア掲載画像(Steam ストア キーアート)

メカニクスの言語化

肯定側が新しさとして挙げる要素は絞られている。レーザーを反射する新種のキューブ、水を浴びせる仕掛け、そして序盤でポータルを片側しか撃てない期間。この三つがほぼ毎回出てくる。

なかでも片側ポータルは、Puzzlebyrinth の言葉でいえば動詞の減算にあたる。Portal 2 が新しいジェルや漏斗を足して広げていったのに対し、本作は最初に引くところから始める。同じ機構を使いながら、入口の設計思想が逆を向いている。

専門メディアの評も、この片側制限は効果的に使われていると書いている。減算が学習曲線の入口として正しく働いている証拠だろう。

ただし減算は、引いた動詞を返す瞬間まで含めて一つの設計である。両側が撃てるようになったあと、その解放をどう祝うか。肯定側の文章がそこで急に薄くなるのは、少し気になった。

Portal: Revolution のスクリーンショット(Steam ストアページ掲載の 1 枚目)Portal: Revolution のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の 1 枚目(Steam スクリーンショット)

難しさの手触り

難しさについては、肯定側の中ですでに割れている。「Portal 2 を遊んだ人には簡単」と書く人がいる。「いくつかの部屋は本当に考えさせられた」と書く人もいる。どちらも同じ推薦の列に並んでいる。

否定側はもう少し踏み込む。難しさが一定しない、解が試行錯誤で出てしまう、解けたときの手応えが薄い。繰り返し現れるのは「aha がない」という言い方だ。

面白いのは、開発者がストアページに「徹底したテストを重ねたので、どのプレイヤーも解ける」と書いていることである。この宣言と、難しさが割れているという読後感は、実はきれいに噛み合っている。

全員が解けるように均された部屋は、詰まりの谷を浅くする。谷が浅ければ、登りきったときの眺めも低くなる。解けることと、解けたと感じることは別の目標であり、本作は前者を選んだ。ポータルはそもそも解の形が見えやすい機構でもある。

Portal: Revolution のスクリーンショット(Steam ストアページ掲載の 3 枚目)Portal: Revolution のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の 3 枚目(Steam スクリーンショット)

テンポと尺

本作でいちばん書かれているのは、移動である。「歩きすぎる」「戻らされる」「同じ手順を二度踏む」。否定側の最大勢力がここにいる。

設計の言葉に置き換えると、これは思考の時間と実行の時間の比の話だ。解を見つけるまでにかかる時間と、見つけた解を盤の上で実行しきるまでにかかる時間。後者が伸びると、解けた気分は移動のあいだに薄まっていく。

Portal 2 の試験室は基本的に閉じていて、解がわかった瞬間にほぼ終わる。本作は試験室のあいだの施設そのものを歩かせる構成を選んだ。Portal Reloaded が部屋の内側に時間軸を足したのとは、逆向きの拡張である。

8 時間という長さは、非公式作品としては誇ってよい数字だと思う。ただしその一部は移動で稼がれている。尺を部屋数ではなく歩数で伸ばすと、不満は必ずここに出る。

Portal: Revolution のスクリーンショット(Steam ストアページ掲載の 5 枚目)Portal: Revolution のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の 5 枚目(Steam スクリーンショット)

系譜と位置づけ

レビュアーが引き合いに出すのは、ほぼ Portal 2 本編と Portal Stories: Mel の二つだ。実際、開発は 2016 年に Stefan Heinz 氏が Mel に触発されて始めたとされる。

技術的な土台は Strata Source という Source エンジンの派生だとされる。Portal 2 のコミュニティ版から伸びた系統にあたる。公開は 2024 年 1 月 6 日、Windows と Linux 向け、無料。

ここで物差しが二本立つ。「mod としては驚異的」と「Portal としては焼き直し」である。96% は前者の物差しで付いた点数であり、筋書きが Portal 2 の反復だという不満は後者の物差しから出ている。

専門メディアの評は、パズルは一貫して強いと書き、Stirling を弱い部分と見る。ユーザーと一致するのは登場人物の方で、パズルの方ではない。プロは 8 時間を通して採点し、プレイヤーは詰まった一室で採点する。ズレはそこから来ている。

Portal: Revolution のスクリーンショット(Steam ストアページ掲載の 7 枚目)Portal: Revolution のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の 7 枚目(Steam スクリーンショット)

参照したレビュー群

本記事は 2026-09-21 時点での Steam ストアページのユーザーレビュー群を読んで書いた。レビュー本文の直接引用はせず、繰り返し現れる主張を再構成している。

Steam: Portal: Revolution(圧倒的に好評 / Overwhelmingly Positive。全言語・購入経路を問わない集計で 30,136 件中 28,994 件 = 96%。英語プールのストア表示は 17,595 件中 96%、日本語プールは 52 件中 48 件 = 92%)

・helpful 順の肯定上位 10 件と否定上位 20 件、新着 8 件を WebFetch で読了(計 38 件)

・開発の経緯と専門メディアの評は 英語版 Wikipedia の Portal Revolution の項(PC Gamer / PCGamesN / TechRadar / Rock Paper Shotgun などの評をまとめている)に拠る。開発元・配信日・紹介文は Steam ストアページおよび公式 API の記載。

・本文の画像は Steam 公式 API が返した URL をそのまま使っている。ただし今回の実行環境では画像ファイル自体を開けなかったため、キャプションと alt には内容の説明を書かず、掲載順だけを記している。

結論

私は 8.2 を付ける。Steam の 96% との差は、主に二つある。一つは移動で伸ばされた尺、もう一つは借りてきた筋書きだ。

ただしどちらも、この作品が何を目指したかを外している批判ではない。目指したのは新しい Portal ではなく、もう一度あの施設を歩くことだった。40 室を 8 時間かけて配り、そのあいだ施設を見せ続ける構成は、その目的には合っている。

向くのは、Portal 2 を終えてから時間が経ち、あの白い壁をもう一度歩きたい人。向かないのは、部屋と解だけを最短で欲しい人だ。後者にとって、本作の歩数は純粋な待ち時間になる。

無料であることは欠点を免除しない。ただ、射程は確実に広げる。2007 年の Portal から積み上がってきた語彙を、外部の作り手がここまで扱える。その事実そのものが、30,136 件の一部を説明していると思う。

Portal: Revolution のスクリーンショット(Steam ストアページ掲載の 9 枚目)Portal: Revolution のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の 9 枚目(Steam スクリーンショット)

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