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BLOG · 2026-08-27

アストロノーカ(1998) — 同じ罠は二度と効かない敵と、20年遅れで届いた評価

今日は発売日 #40 — 1998年8月27日、プレイステーションで発売

1998年8月27日、こちらの手を覚える敵が現れた

こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第40回。今日の主役は、宇宙で野菜を育てるゲームです。ただし畑を荒らす害獣が、こちらの仕掛けた罠を覚えて進化していきます。『アストロノーカ』のオープニング映像の一場面「PlayStation - Astronoka (1998) - [Intro]」(The Video Game Museum, YouTube)のサムネイルより

『アストロノーカ』。プレイステーション用ソフトとして、1998年8月27日にエニックスから発売されました。価格は6,800円です。

開発はムームーとシステムサコム。ゲームデザインとAIを担当したのは森川幸人さんです。

目指すのは宇宙一の農夫。野菜を育ててコンクールに出しながら、畑を「バブー」という害獣から守ります。

野菜を交配し、罠を並べ、それでも追い抜かれる

野菜は交配マシンで改良します。ファミ通の記事によれば、重さ、模様、栄養、風味、音色といった属性を変えたり、新種を生み出したりできます。

コンクールの審査基準はカレンダーで先に見られます。つまり「次の審査に合う野菜」を逆算して育てることになります。

問題は夜です。バブーが畑にやってきて、育てた野菜を持っていきます。プレイヤーはトラップを並べて迎え撃ちます。

ここが本作の心臓部です。バブーは同じトラップに何度も掛かると、順応して進化します。落とし穴なら脚力が鍛えられたり、羽が生えたりする。罠を仕掛ける、掛かる、進化する、罠が効かなくなる、の循環図(図解)バブーの学習ループ。掛かるほど耐性がつき、同じ手は次から効かなくなる。

つまり、勝つほど相手が強くなります。プレイヤーの必勝法は、そのまま次の敵の教科書になります。

裏側で動いているのは遺伝的アルゴリズムです。森川さんの説明では、画面に出てくるのは1日1匹でも、内部では最低10世代ほどの世代交代が進み、いちばん優秀な個体が選ばれて出てきます。

進化が止まると突然変異の確率が上がる仕組みも入っていました。プレイヤーが強い罠をひとつ見つけて、そこで止まってしまわないように。

AIは動いていた。それでも当時は、ほとんど誰も褒めなかった

着想のもとは、東京の夢の島だったそうです。埋め立て地でハエが問題になり、殺虫剤をまくたびに耐性がついていった。森川さんは1998年のインタビューでそう話しています。

「これってモンスターの進化じゃん」。そう思ったところから、この仕組みが生まれました。

AIでゲームを作ることについては、こうも言っています。「making a game with AI is much more like a free-for-all, no-rules cage fight.」——AIでゲームを作るのは、ルールなしの何でもありの喧嘩に近い、と。『アストロノーカ』の映像の一場面「Astronoka [Psx] - Trailer」(Old Dusty Games, YouTube)のサムネイルより

ところが、当時の反響は静かでした。森川さんは後年、「こんなにAIがきちんと機能しているのに誰も評価してくれない!」とショックを受けたと振り返っています。

「学会からは声がかかったが、ゲーム業界からは相手にされなかった」。GAME Watchも、20周年イベントの記事で「ゲーム業界では『誰も褒めてくれなかった』」と森川さんの言葉を伝えています。

いっぽうファミ通は25周年の記事で、優れたゲームデザインが「当時多くのマニアを唸らせて一躍話題となった」と書いています。届いた人にはちゃんと届いていた、ということでもあります。

28年たって、AIの研究者が「世界一」と呼んだ

1998年8月27日から数えて、2026年8月27日でちょうど28年になります。年号を書かないと記事が終わった気がしないので、先に書いておきました。

2008年6月25日、本作はプレイステーションのゲームアーカイブスで再配信されました。値段は600円です。

2019年1月には20周年のトークイベントが開かれました。そこでAI研究者の三宅陽一郎さんは、本作を「遺伝的アルゴリズムを使った世界一のゲーム」と呼んでいます。

プロデューサーの齊藤陽介さんは、こう話しました。「本作の裏のテーマともいえるものは“(バブーとの)共存”なんです」。倒しきる相手ではなく、付き合っていく相手だった、ということです。

派生作もあります。テレビ朝日では2001年から2002年にかけてアニメ『バブーファクトリー』が放送され、2003年3月28日にはオンラインゲーム『コスモぐらし』が始まりました。こちらは2005年4月25日にサービスを終えています。

こちらの必勝法を覚えてしまう相手と、遊びたいですか

たいていのゲームは、うまくなるほど楽になります。本作は逆でした。うまくなるほど、相手も同じだけうまくなる。

気持ちよく決まった必勝法が、翌週にはもう通じない。それは理不尽なのか、面白いのか。

1998年の答えは「静か」でした。2019年の答えは「世界一」でした。同じゲームに、20年ぶんの差があります。

あなたなら、こちらの手を覚える相手と遊びたいですか。それとも、いつまでも同じ罠に掛かってくれる相手のほうが好きですか。

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