DESIGN-ROUNDUP · 2026-09-08
「レベルではなく、ルールを生成する」——RuleSweeper、AIにマインスイーパーの新機構を作らせる(IEEE CoG 2026)
Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年9月8日
はじめに
今日のTsumikiまとめ。今日は1本。
ゲームAI研究の学術会議IEEE Conference on Games(CoG)2026が、2026年9月1日から4日にかけてスペインのマドリードで開かれた。パズル設計として面白いのは、盤面(レベル)ではなく「ルールそのもの」を生成しようとする研究が出てきたことだ。
マインスイーパーの新しい遊び方を、AIに考えさせられるか?——RuleSweeper(IEEE CoG 2026)
答えは「一部はできる」だ。マインスイーパーは数字を手がかりに地雷を避ける論理パズルとして知られるが、IEEE CoG 2026で発表された研究「RuleSweeper」は、盤面配置(レベル)ではなく、そのルールそのものをAIに作らせた。100回の生成サイクルの末に、実際に「別のゲームとして成立する」新ルールを51種類も見つけ出している。著者はRyan Fleishman、Shresth Kapoor、Teddy Clark、Jan Borowski、Tim Merino、Julian Togelius(いずれもニューヨーク大学)の6人。研究の概要はプロジェクトサイトで公開されている。
出発点にあるのは、著者らが書くこの一文だ。「ゲームの手続き生成は従来、決まった機構の中で新しいレベルを作ることに集中してきた。機構そのものを生成する研究はずっと少ない」。パズルの自動生成というと盤面(レベル)を大量に作る話が中心になりがちだが、この研究は一段上の「ルール設計」そのものを機械に任せようとする。
仕組みはこうだ。まず大規模言語モデル(LLM)が、盤面サイズ・地雷の数・隣接マスの数え方・クリア条件などをまとめた設定オブジェクトを少しずつ書き換え、新しいルール案を作る。次にその案を3種類のプレイヤーに実際に解かせる——完全にランダムに手を打つエージェント、従来型の記号処理ソルバー(PAFG)、LLMで手を考えるソルバー(PAFG-LLM)。上手なエージェントとランダムなプレイの成績差(論文は「スキル差」と呼ぶ)が0.10以上あるルールだけを「遊べるゲームになっている」と判定して保存し、次の変異元に選ぶ。この手続きを100回繰り返し、51種類のルールがアーカイブに残った。
実際に残ったルールの例を見ると、狙いがわかりやすい。数字のヒントを5マス四方でまとめて表示しつつ地雷が毎ターン動く「Radius + Drifting Mines」、一部の地雷が事前に点滅して知らせる「Telegraphed Mines」、絶対数ではなく周囲との相対的な多さだけを教える「Ranked Neighborhood」。どれも「数字を数えて地雷を避ける」という核だけは残しながら、情報の渡し方や盤面の変化のルールを一つずつ変えている。スキル差が最大0.72まで確認されたルールもあり、単なる乱数のいたずらでは終わっていない。
結果面では、LLMを使う解き方(PAFG-LLM)が、従来型の解き方に対して51ルール中40ルール(78.4%)で勝率が上回ったという。これは新しく生成されたルールほど、決まった手順のソルバーでは崩しにくいことを示しており、ルール生成そのものを設計の検証に使える可能性を示唆する。
当サイトのカタログにも『14 Minesweeper Variants』のように、人力で考え抜かれたマインスイーパー派生ルールを集めたゲームがある。RuleSweeperが示すのは、そうした「一つのルールを見つけて磨く」作業の初期段階を、機械が下請けできるかもしれないという可能性だ。ルール自体を評価対象にする視点は、パズル設計の議論としてはまだ新しく、レベル生成の研究に比べて量も少ない。今後は、人間の設計者が「どのルール案を掘り下げる価値があるか」を選ぶ側に回る、という分業になっていくのかもしれない。
今日の気になった一文
"Procedural content generation in games has traditionally focused on producing new levels within a fixed set of game mechanics, but there is much less work around generating the mechanics themselves."(ゲームの手続き生成は従来、決まった機構の中で新しいレベルを作ることに集中してきた。機構そのものを生成する研究はずっと少ない。)
—— RuleSweeper プロジェクトサイトより。「レベルを増やす」話に偏りがちな議論の中で、「ルールを増やす」方に踏み出した一文として印象に残った。
おわりに
私はパズルを解くのが得意ではないが、ルールそのものが生成されるという話には、デザイナー志望として素直にわくわくする。人が思いつかなかった規則の組み合わせを機械が見せてくれるなら、それは「解く」側ではなく「作る」側への贈り物だと思う。明日もよろしくお願いします。
参考リンク
本日扱った記事:
・RuleSweeper: Procedurally Generating Gameplay Mechanics In Minesweeper(Ryan Fleishman, Shresth Kapoor, Teddy Clark, Jan Borowski, Tim Merino, Julian Togelius、ニューヨーク大学、IEEE CoG 2026・プロジェクトサイト)
・IEEE CoG 2026 Accepted Papers(採択論文一覧。開催: 2026年9月1〜4日、マドリード)
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