DESIGN-ROUNDUP · 2026-09-14

「1マイルごとに1マイルぶんだけ」——『Burn With Me』が選んだ、暴走しないデッキ構築の設計

Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年9月14日

はじめに

今日の Tsumiki まとめ。今日は1本。パズル専門メディア Thinky Games に2026年9月9日付けで掲載された、Dayten Rose記者による記事を取り上げる。デッキ構築ゲーム『Burn With Me』(Nozomu Games開発、Inner Pocket発売、2026年10月12日発売予定)の体験版評だ。

「デッキ構築を、儀式のパズルに変える」——『Burn With Me』の錬金術

Rose記者は、このゲームを「見たことのあるデッキ構築の要素を、格好よく、雰囲気があり、心地よく有限な、線形のパズルへと変える、見事な錬金術」と評する。盤面は五角形で、その各頂点を埋めるには、つねにちょうど5枚のカードを置かなければならない。得点がしきい値を上回れば成功、下回れば失敗——このはっきりした条件が、ゲーム全体の戦略を決めている。原文 ↗

記事が特に踏み込むのは『Balatro』との対比だ。あちらでは得点表示に浮かぶ炎が「暴走」——デッキが制御不能な加速度で得点を伸ばしていることのしるし——を意味する。だが『Burn With Me』の炎はそうではない。Rose記者いわく、このゲームは「1マイルごとに1マイルぶんだけ」進み、「すべての計画は、予想どおりに進む」。隣接するカードごとに+2点を与えるカードは、両隣にカードがあれば+4点になる、というふうに、得点の伸び方そのものが読める設計になっている。

『Balatro』以降、商業的なデッキ構築ジャンルでは、得点が暴走的にインフレしていく快感を競う設計が主流になりつつある。その流れの中で、あえて「暴走しない」「先が読める」ことを美点として打ち出す作り手がいるのは、パズルゲーム設計を考えるうえで興味深い。ジャンルの見た目(カード・デッキ・シナジー)を保ったまま、中身を線形パズルへ寄せるという手つきは、デッキ構築とパズルの境界線がどこにあるのかを考える材料になる。

一方でRose記者は、悪魔をカードを「加える」ことで召喚するという核となる仕組みについて、デッキ構築というジャンルの通例(カードを減らすことのほうが増やすことよりずっと価値が高い場合が多い)と摩擦を起こしうる、とも指摘している。派手な逆転劇より精密さで勝負するタイトルだ、という評価だ。

本サイトのレビューでは、同じくカードを軸にしたパズル『Inscryption』(レビュー ↗)も、盤面の外側の仕掛けまで含めて高く評価されている。デッキ構築の皮をかぶったパズルというジャンルの線引きは、今後もこの手のタイトルで繰り返し問われそうだ。

今日の気になった一文

"Burn With Me moves instead at one mile per mile. Every plan develops as expected."(『Burn With Me』は、1マイルごとに1マイルぶんだけ進む。すべての計画は、予想どおりに進む。)

—— Dayten Rose「Burn With Me transmutes deckbuilding mechanics into dark, puzzling rituals」より。暴走することそのものが快感になりがちなジャンルの中で、あえて「暴走しない」ことを言い切った一文として印象に残った。

参考リンク

本日扱った記事:

Burn With Me transmutes deckbuilding mechanics into dark, puzzling rituals(Dayten Rose、Thinky Games、2026年9月9日、英語)

おわりに

デッキ構築もカードゲームも、私は遊ぶ側ではなく眺める側の人間だけれど、盤面の情報だけで先の展開が見えてしまう、というこの記事の指摘には妙に納得してしまった。派手に化けることより、地に足のついた読み合いを面白がる作り手がいるというのは、なんだか励まされる話だ。明日もまた、世界のどこかの設計議論を探しに行く。

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