DESIGN-ROUNDUP · 2026-08-22

「片付けると気持ちいい」——『Forbidden Solitaire』が積み重ねた、ソリティア系ゲームの設計史

Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年8月22日

はじめに

今日の Tsumiki まとめ。今日は1本。2026年8月17日、専門メディア Game Developer(旧 Gamasutra)に、記者 Khee Hoon Chan による記事「How Forbidden Solitaire Brought Solitaire Games to the Forefront」が載った。90年代ホラーVHS風の一人用カードゲーム『Forbidden Solitaire』が、なぜソリティア系ゲームとして異例のヒットになったのか。開発元 Grey Alien Games への取材をもとに、その設計の積み重ねを追った記事だ。『Forbidden Solitaire』のキー画像『Forbidden Solitaire』(Steam公式ヘッダー画像より)

『Forbidden Solitaire』はどうやってソリティアを表舞台に引き上げたか

『Forbidden Solitaire』は2026年4月の発売直後、同時接続880人を記録した。同じ開発元の『Regency Solitaire II』は98人、『Shadowhand Solitaire』は20人止まりだったというから、この差は大きい。発売48時間で1万本を売り、続編の検討も始まっているという。記事の原文はこちら。『Forbidden Solitaire』のプレイ画面。VHS風のノイズがかかったカードレイアウト『Forbidden Solitaire』のプレイ画面(Steam公式スクリーンショットより)

開発元 Grey Alien Games を率いる Jake Birkett によれば、『Forbidden Solitaire』は同社にとって17本目の作品だ。過去にはマッチ3が7本、ソリティアが7本、街づくりゲームなども手がけてきた。Birkett 自身、1995年に初めて自作ソリティアを組んだ経験があり、勤めていたパソコン店でマイクロソフト版に没頭したのが出発点だったという。『Regency Solitaire』のキー画像『Regency Solitaire』(Steam公式ヘッダー画像より)

多くのソリティア系ゲームはマイクロソフト版と同じクロンダイク方式を採るが、Grey Alien Games は『Regency Solitaire』以来、トライピークス/ゴルフ方式を選んでいる。Birkett は、カードを積むだけの Windows 版より速くアーケード的で、コンボを組んで楽しめる点を利点として挙げている。ショップ・装飾・パワーアップといった追加要素も、2015年に加わった Helen Carmichael(Birkett の妻)が発案した、リージェンシー時代を舞台にする着想とともに生まれた。『Regency Solitaire』のプレイ画面イメージ『Regency Solitaire』(Steam公式ヘッダー画像より)

この積み重ねは続く。Positech Games の Cliff Harris の勧めで Steam 向けの新作を作った際に生まれたのが『Shadowhand』だ。ターン制の戦闘や装備といった RPG 的な要素を、ソリティアのレイアウトの上に重ねている。素材はあくまでカードの並びだが、そこに“戦う”という新しい意味を与えた設計と言える。『Shadowhand: RPG Card Game』のキー画像『Shadowhand: RPG Card Game』(Steam公式ヘッダー画像より)

続く『Ancient Enemy』では、この戦闘システムに属性攻撃や術のような RPG 的能力が加わった。Birkett は「Forbidden Solitaire は、その戦闘システムのもっとも良い到達点だと思う」と述べている(筆者訳)。一つの核となる仕組みを、作品をまたいで少しずつ磨き続けてきたわけだ。『Ancient Enemy』のキー画像『Ancient Enemy』(Steam公式ヘッダー画像より)

Birkett は、この“ソリティア屋”という立ち位置に窮屈さを感じたこともあると明かす一方、『Forbidden Solitaire』の成功が過去作(特に『Ancient Enemy』)の売上にも跳ねたことも語っている。一つの手触りを長年かけて育てていく——派手な新機構の発明より、既存の型を少しずつ組み替え続ける姿勢に、パズル/カード系ゲームの設計の一つの筋道を見た。『Forbidden Solitaire』のキー画像『Forbidden Solitaire』(Steam公式ヘッダー画像より)

今日の気になった一文

"When you play solitaire, specifically the type in our game, you tidy up, you clear the layout, it's gone."(「うちのようなソリティアをプレイすると、片付けて、レイアウトを消していく。それで終わりだ」/筆者訳)——Jake Birkett の言葉。派手な物語より前に、盤面が“消えていく”感触そのものを設計の軸に置いている点が印象に残った。『Forbidden Solitaire』のプレイ画面『Forbidden Solitaire』のプレイ画面(Steam公式スクリーンショットより)

参考リンク

本日扱った記事:

・How Forbidden Solitaire Brought Solitaire Games to the Forefront(Khee Hoon Chan、Game Developer、2026-08-17)

おわりに

自分でパズルを解くのは苦手なくせに、こうして設計の話を読むのは好きだ。今日読んだ記事は、一発のひらめきよりも、17本の積み重ねの方が強いこともあると教えてくれた。また明日。『Forbidden Solitaire』のキー画像『Forbidden Solitaire』(Steam公式ヘッダー画像より)

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