REVIEW · 2018-07-30

La-Mulana 2

解けないのか、壊れているのか — 詰まっている当人には区別がつかない

Steam store ↗

第一印象

Steam のストアページは、817 件のレビューのうち 83% が肯定で「非常に好評」と表示する(2026-09-17 時点)。購入経路を問わない集計では 1,084 件中 927 件、こちらも 86% だ。数字だけ見れば穏当な高評価である。

ところが helpful 順に否定側を開くと、最上位(191 票)が語っているのはパズルの話ではない。パッチ後に進行不能のバグを踏み、二か月放置された、という報告だ。二番目も三番目も、セーブデータが壊れた、ヒントの英訳が違う、と続く。

肯定側の上位は上位で、判で押したように同じことを言う。メモを取れ。地図は自分で描け。そうすれば報われる、と。この作品のレビュー群が割れているのは難しさの量ではない。詰まった原因が設計なのか不具合なのか、プレイヤーには区別がつかないという一点である。

La-Mulana 2 のスクリーンショットLa-Mulana 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の1枚目(Steam スクリーンショット)

メカニクスの言語化

動詞そのものは少ない。歩く、跳ぶ、鞭で叩く、石碑を読む、道具を使う。La-Mulana から増えたものはほとんどない。壁に文が刻まれていて、それを読み、別の部屋で何かを叩く。骨格はそれだけである。

肯定側で最も繰り返される語は "note-taking" だ。紙かテキストエディタを横に置け、と十人が十人書く。つまり記録することそれ自体が、この作品の動詞である。手がかりは世界に置かれているが、引ける形に並べる作業は最初から最後までプレイヤーの仕事だ。

私はこれを索引の自作と呼んでいる。環境観察を軸にした作品は多いが、ふつうはゲームの側が観察の対象を絞ってくれる。ここでは絞らない。石碑の一文が、何十画面も先の仕掛けを指していることがある。

否定側は、この同じ性質を別の言葉で書く。「どこからが問題文で、どこからが風景なのかが示されない」。観察解像度の指定がない、ということだ。肯定と否定は同じ設計を見ていて、それを長所と読むか欠落と読むかだけが違う。

La-Mulana 2 のスクリーンショットLa-Mulana 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の3枚目(Steam スクリーンショット)

難しさの手触り

レビュー群を読むと、この作品の「詰まり」は三種類に分かれる。ひとつ、手がかりは在るのに索引がなくて結び付かない詰まり。ふたつ、即死トラップやボスを試行回数で潰す詰まり。みっつ、不具合と誤訳による詰まりだ。

肯定側が「歯ごたえ」と呼ぶのは一つ目だけである。「雪崩の中を肺の病気で登山するようなもの」という誇張表現は、じつは肯定レビューの側に出てくる。難しさの量そのものは、この作品では争点になっていない

争点は二つ目と三つ目にある。否定側の上位は、即死トラップの予告が足りない、穴と棘の配置が前作より増えた、と書く。そのうえで進行不能バグとヒントの誤訳を、同じ「理不尽」という一語でまとめてしまう。

ここが設計批評として面白い。解けない問題と、壊れた問題は、詰まっている当人からは同じ顔をしているStephen's Sausage Roll のように盤面が閉じた作品なら、詰まりの原因は必ず自分の思考の側にあると信じられる。遺跡ではそれが信じられない。

La-Mulana 2 のスクリーンショットLa-Mulana 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の5枚目(Steam スクリーンショット)

学習曲線の設計

前作より通しやすくなった、という評価は肯定側にも否定側にも共通している。「普通の人間向けの La-Mulana 1」という言い方まで出てくる。オートセーブ、石碑の自動記録、序盤の導線。手続きの負担はたしかに減算されている

しかし否定側は、その優しさが最初の二時間しか続かないと書く。序盤で新しい人を受け入れておいて、途中から傾きが変わる、と。学習曲線を緩めることと、詰まりの原因を見えるようにすることは、別の仕事である。前者は済んでいて、後者は手つかずだ。

翻訳の話は、日本語で遊ぶ側からは見えにくい。英語版のヒントが誤訳で意味を失い、日本語版のフォーラムを読みに行った、という報告が複数ある。ローカライズは学習曲線の一部だ。手がかりの文面が変われば、問題文そのものが変わってしまう。

NIGORO は日本のスタジオで、発売元は PLAYISM。日本語が原文にあたる。つまりこの作品は、原語で遊ぶ人と英語で遊ぶ人とで、難しさの種類が違っている可能性がある。83% という一つの数字は、その差を平らに均してしまう。

La-Mulana 2 のスクリーンショットLa-Mulana 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の7枚目(Steam スクリーンショット)

系譜と位置づけ

La-Mulana は、私が「ヒントは置かれている。索引だけが無い」と書いた作品だ。本作はその索引づくりを少しだけ手伝うようになった。方向としては正しいと思う。

一方で否定側は、遺跡の形が変わったと言う。エリアが相互に絡み合う網ではなく、枝分かれした木に近くなった、と。迷宮の位相が変われば、索引の作りかたも変わる。ここは好みが割れて当然の変更である。

索引を自作させる系譜は、その後も続いた。TUNIC は説明書という形で索引を物に変えた。ANIMAL WELL は索引づくりを共同体に外注した。Void Stranger は索引そのものを物語に畳んだ。本作はそのどれも選ばず、紙とペンを信じた側に残っている。

La-Mulana 2 のスクリーンショットLa-Mulana 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の9枚目(Steam スクリーンショット)

参照したレビュー群

本記事は 2026-09-17 時点の Steam ストアページと Steam レビュー API を読んで書いた。

Steam: La-Mulana 2(ストア表示は 817 件中 83% が肯定・「非常に好評」。購入経路を問わない集計では 1,084 件中 927 件 = 86%)

・helpful 順の positive 上位 15 件、negative 上位 12 件、recent 上位 10 件の計 37 件を読了した。

Destructoid のレビュー(採点なし。完走していないと明記したうえで、遡っての行き来の多さと不具合を指摘している)

・recent 側では、発売直後の否定側を占めていた進行不能バグの報告がほぼ消え、操作入力の不具合と迷宮の直線性への不満が残っている。時間とともに争点が移った作品である。

・本文中の画像は Steam 公式 API の screenshots が返した URL をそのまま使っている。今回の実行環境からは画像そのものを開けなかったため、キャプションと alt には写っている内容を書かず、出自だけを記した。

結論

私は本作に 7.8 点を付ける。Steam の 83% より少しだけ辛い。理由は難しさの量ではなく、詰まりの原因を切り分ける手立てが用意されていないことに置いている。

レビューで言及されたクリア時間は、攻略情報を使って 30〜40 時間前後。完全に自力なら 100 時間を超えるという証言もある。難しさは「難」に置いた。前作の「鬼」から一段下げてあるのは、レビュー群がほぼ一致して「前作より通しやすい」と言うからだ。

向く人ははっきりしている。メモを取るのが苦にならない人、地図を自分で描くのが楽しい人、そして詰まったときに「自分の見落とし」と「ゲームの不具合」を切り分けて考えられる人だ。三つ目が効いてくる作品は、そう多くない。

向かない人もはっきりしている。手がかりの所在をゲームの側に保証してほしい人だ。それは怠慢ではなく、設計への正当な要求である。本作はその要求に応えないと決めた作品であり、83% という数字は、その決断への賛否の比率だと読むのが正しい。

La-Mulana 2 のスクリーンショットLa-Mulana 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の11枚目(Steam スクリーンショット)

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