REVIEW · 2014-12-02

Lumino City

紙とボール紙で組み上げた街を、撮影してそのまま遊ばせる

Steam store ↗

第一印象

賛否どちらのレビューも、書き出しはだいたい同じことを言う。この街は本当に手で作られている、と。開発元の説明では、紙とボール紙で街を丸ごと組み立て、それを撮影したものが画面になっているそうだ。ストアページには BAFTA 受賞作と記されている。実際に第11回 British Academy Games Awards の Artistic Achievement 部門を獲っている。

集計は 1,398 件中 1,212 件が肯定で 87%。ラベルは「非常に好評」だ(2026-09-18 時点)。ただし、この作品の面白いところは数字の外にある。helpful 順で最上位の否定レビュー(115 票)と、上位の肯定レビュー(75 票)が、まったく同じ欠点を名指ししているのだ。

その欠点とは「主人公の移動アニメーションを取り消せない」こと。肯定側はそれを唯一の不満として一行で済ませ、否定側はそれを理由に推奨を取り下げる。つまりここでの対立は、欠点の有無ではない。欠点の重さの見積もりだ。珍しい形の割れ方である。

Lumino City のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の1枚目Lumino City のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の1枚目(Steam スクリーンショット)

世界観

肯定側の語彙は視覚に集中する。handmade、beautiful、unique、adorable。比喩は「ドールハウス」「LittleBigPlanet」「Pleasantville」。そして何度も出てくるのが Rube Goldberg machine、いわゆるピタゴラ装置だ。街そのものが一つの大きな仕掛けに見える、という言い方をする人が多い。

これは 環境観察 の話として読める。普通のゲームの背景は、描かれた記号である。ここでの背景は、実際に切って貼られた紙だ。だから細部が「意味のある細部」と「ただそこにある細部」にきれいに分かれない。観察解像度が上がるというより、上限そのものが外れている。

否定側は同じものを別の名前で呼ぶ。「interactive art exhibit」、体験型の美術展だ。見るだけなら素晴らしいが、触っても何も返ってこない、という含みがある。Machinarium の手描き背景に感じる愛着と似ているようで、少し違う。あちらは絵で、こちらは物である。

Lumino City のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の3枚目Lumino City のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の3枚目(Steam スクリーンショット)

操作の手触り

否定側の動詞はよく揃っている。drag、crawl、grind、そして fighting the game。比喩は glacial pace、氷河の速さだ。具体的な不満は三つに集約できる。移動アニメーションが止められない。押せる場所が見た目で分からない。クリックが時々通らない。

三つとも、パズルの話ではない。入力の話である。そしてどれも、素材の選択から素直に導ける。撮影された街には、後からハイライト表示を足せない。光り方も影も、撮った時点で焼き付いているからだ。押せる場所に枠を出せば、その枠だけが紙でなくなってしまう。

移動も同じ理屈だ。歩く姿はあらかじめ用意された映像であって、途中で切れば絵が破綻する。だから最後まで再生される。肯定側が「潔い」と感じ、否定側が「待たされる」と感じるものの正体は、同じ一つの制約である。ポイント&クリック の古い作法と、素材由来の新しい不便が、ここで重なっている。

なお、フレームレートの低さや設定項目の少なさから「携帯端末向けに作られたのでは」と推測するレビューもあった。ただしこれはレビュアーの推測であって、開発元がそう述べたわけではない。

Lumino City のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の5枚目Lumino City のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の5枚目(Steam スクリーンショット)

学習曲線の設計

この作品には、ゲームの中で持ち歩く分厚い手引書がある。操作の説明もヒントも、メニューではなくその本に載っている。肯定側の評価は高い。ingenious、つまり巧い、という語と、effective、ちゃんと効く、という語が並ぶ。

設計として見ると、これは教示の減算だ。チュートリアル画面、ヒントボタン、目標表示。普通なら画面の外側に置かれるものを全部消して、世界の中の一つの物に畳み込んでいる。Gorogoa が説明文を一切持たないのと方向は同じだが、あちらは何も渡さず、こちらは「調べられる物」として渡す。

ただし直近のレビューには、粒度への不満がある。本を開くと答えがほぼ書いてある一方、その手前の段階が用意されていない。ヒントが 0 か 1 しかないのだ。詰まった人が欲しいのは次に見る場所だけなのに、渡されるのは手順そのものになる。手引書という発想は当たっているが、目盛りが粗い。

押せる場所を光らせない方針も、同じ減算に属する。肯定側はこれを古き良き作法と呼び、否定側は dated、時代遅れだと呼ぶ。どちらも正しい。The Room のように触れる物を触れると分かる形へ作り込むのとは、正反対の賭けである。

Lumino City のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の7枚目Lumino City のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の7枚目(Steam スクリーンショット)

参照したレビュー群

本記事は 2026-09-18 時点での Steam ストアページのユーザーレビュー群を読んで書いた。

Steam: Lumino City(Overall 87% positive、1,398 件中 1,212 件が肯定、評価ラベル「非常に好評」)

・helpful 順 positive 上位 14 件、negative 上位 12 件、recent 上位 10 件の計 36 件を読了した。開発元・発売日・受賞歴は Steam の appdetails API と Wikipedia の受賞記載 で裏取りしている。

・本記事の画像はすべて Steam 公式ストアページ掲載のスクリーンショットで、URL の実在は1枚ずつ確認した。ただし今回の実行環境では画像そのものを開いて中身を見ることができなかった。そのためキャプションと alt は内容を特定せず、掲載順だけを記した汎用の表記にしてある。

結論

Steam の overall は 87% だが、設計の観点から私が付けるのは 7.4 点だ。差の理由ははっきりしている。この作品の価値は素材にあり、負債もまた素材にある。そして負債が出る場所が、パズルではなく入力の層だからである。

紙で街を作ると決めた時点で、光らせる・止める・巻き戻すといった操作上の親切が、ほとんど全部使えなくなる。多くの作品では見た目が後から乗せる皮だが、ここでは見た目が先にあり、仕様がそれに従っている。レビューに並ぶ不満の大半は、この順序の代償だと読める。

レビューで語られるクリア時間はおおむね 5〜8 時間で、賛否とも尺の短さには触れる。難しさの感じ方ははっきり分かれ、「歯ごたえがある」という評と「総当たりになった」という評がどちらも一定数ある。だから難しさは 3「標準」に置いた。

勧められるのは、物として作られたものを画面ごしに眺めるのが好きな人だ。逆に、操作の軽さや手触りの良さを先に求める人には向かない。これは出来不出来の話ではなく、設計の射程の話である。State of Play は街を作ることを選び、そのとき何を諦めるかも一緒に選んだ。

Lumino City のスクリーンショット: Steam ストアページ掲載の10枚目Lumino City のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の10枚目(Steam スクリーンショット)

このゲーム、あなたは?

押すと「あなたの棚」に入ります(アカウントのページで見られます)。

リアクション(ログイン不要)

匿名で残せます • 同じリアクションは1日1回まで

次に読む

関連レビュー

編集部からのおすすめ