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REVIEW · 2017-12-14

Gorogoa

絵の中の絵

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第一印象

画面に2×2のグリッドが現れます。それぞれのマスに、手描きの精密な絵が置かれている。窓、龍、果実、書斎。私はそれをドラッグして並べ替え、ズームインします。

窓を拡大すると、その向こうの庭が、別のマスの絵と地続きになる。絵の中の絵が、もう一つの絵の窓を満たす。

Jason Roberts は7年かけて、ほぼ一人でこの作品を描き切りました。1枚1枚のイラストに数週間かけたとされ、画面に映る線の密度は、ゲームと言うより細密画です。

メカニクスの言語化

やれることは2つだけです。絵を移動する、絵にズームイン/アウトする。けれど絵の一部を『切り取って』別の絵にすると、視覚的に重なるかどうかでつながりが生まれる。

他に類を見ないメカニクスです。一場面解くたびに、自分の中に『絵が動く感覚』が育っていく。

ルールはほぼ言語化できません。『絵の枠が一致した瞬間につながる』というだけで、その『一致』を見つけるのが全てのパズル。

このゲームの魅力

全カットが手描きの濃密さと、絵そのものがパズルになる発想。1枚の絵が3つの場面に変身する瞬間の戦慄。少年が老人に変わり、街が森に変わり、果実が灯火に変わる。

プレイヤーは絵を操作しているのに、操作した結果として『物語が前に進む』ような錯覚を持ちます。実際には絵を並び替えただけなのに、主人公が大陸を渡り、世代を超えて旅をしている。視覚的編集が叙事に直結する作家性は、ゲームとしてここでしか味わえません。

BGM もイラストと完全に同期していて、ピアノの一音が画面の重なりに対応する。視覚と聴覚の両方が、同じ操作に対して同時に応答する設計。これはアニメーションでもなく映画でもなく、ゲームでしかできない『参加する細密画』の形です。

ゲームデザインの工夫

スケールと構図の合致でパネル間の連続性を表現する設計です。視覚的トリックがそのままロジックになり、解は常に『絵が重なる』一瞬として現れる。エッシャーの版画を、能動的に組み立てるパズルに変換した、と言うのが一番近い説明です。

短さも設計の一部です。2時間で完走するように切り詰められています。10時間に伸ばすことは、おそらく Jason Roberts には可能でした。けれどそれは『手描きの密度』を保てるかという制作上の制約だけでなく、『絵が動く感覚』が新鮮なうちに終わらせる、という体験設計の問題でもあります。Cocoon が6時間で終わるのと同じ判断で、Gorogoa も体験のピークで幕を引いた。

もし自分が同じ題材を作るなら、おそらく『絵を回転させる』『色を変える』を入れたくなると思います。Jason Roberts はそれを一切やらず、『移動』と『ズーム』の2つに固執しました。動詞を絞ることが、絵の連続性という見せ場を最大化する。動詞の追加は誘惑ですが、ここで足していたら濃密さが薄まっていたはずです。

難しさの手触り

2時間で完走、難所はありません。けれど一つ解くごとに、何度も画面を見返したくなる絵の魔力があります。難しさの体感は、知能テストというより、視線の練習。

詰まる時間は短く、解ける瞬間は深い。これは『難しさ』というより『美しさのリズム』に近い。

結論

短い、けれど深い。Annapurna Interactive が何を売ろうとしているか、これを遊ぶと一番よく分かります。Cocoon、Unpacking、What Remains of Edith Finch などのキュレーション基準が、Gorogoa を最初に置いた時点で見えてきます。

制作者として残しておきたいのは、『動詞を2つに絞る勇気』です。私はつい3つ4つ動詞を作ってしまう。Gorogoa の禁欲は、絞ることが豊かさを生む典型例として、いつでも引き出せる場所に置いておきたい。

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