プレミアム

REVIEW · 2019-03-12

Trüberbrook

手で作った村は絶賛され、パズルは「簡単すぎる」と「理不尽」の両方で叩かれる — 73.0% の内側を読む

Steam store ↗

第一印象

私はこの作品を遊んだのではなく、レビューの積み上がり方を通して見ている。まず数字を置く。Steam の総レビューは 2,343 件、うち肯定 1,711・否定 632 で 73.0% が positive、表示ラベルは「やや好評」の帯にある(2026-08-27 時点のスナップショット)。手で作った村を舞台にした一本としては、思ったより低い位置だ。

面白いのは、批評家側のほうがさらに厳しいことである。Metacritic の PC 版は 25 レビューで 66 点、区分は「賛否混在または平均的」。同サイトのユーザー評点は 44 件で 5.7 と、Steam よりもさらに辛い。Steam・批評家・Metacritic ユーザーの順に、評価が階段状に下がっていく。

そして不満の中身が奇妙だ。「パズルが簡単すぎる」という声と「解が理不尽で攻略を見た」という声が、同じレビュー欄に並んでいる。Deponia で追ったねじれと形は似ているが、こちらは同じ一人がその両方を書いていることさえある。この矛盾が本稿の入口だ。

Trüberbrook のスクリーンショットTrüberbrook のゲーム画面(Steam スクリーンショット)

世界観

賛辞はほぼ一点に集まる。舞台がすべて手で作られていることだ。実際に組んだミニチュアを撮影し、その上に人物を重ねている。positive 側の語彙は「gorgeous」「stunning」「painstaking」「hand-built」に集中する。否定側もここだけは譲らない。5点満点で3点をつけた専門メディアも、絵の作りには文句をつけていない。

音の評価も同じ向きだ。1960 年代のジャズを思わせる曲に触れる声が多く、David Lynch 作品の音楽を引き合いに出す人が繰り返し現れる。舞台は 1967 年の西ドイツの寒村で、Twin Peaks の名前は positive・negative の両側から出てくる。

設計の言葉に置き換えると、これは観察解像度をきわめて高く作った世界である。画面の情報量が多く、見ているだけで楽しい。ただし後で見るとおり、その高い解像度は「どこを触ればいいのか」を伝えるためには、ほとんど使われていない。

Trüberbrook のスクリーンショットTrüberbrook のゲーム画面(Steam スクリーンショット)

メカニクスの言語化

操作は古典的なポイント&クリックだが、二つの整理が入っている。対象を押すと動作の輪が開き、その場面で使えない選択肢は灰色に落ちる。持ち物どうしの組み合わせも、使える場面ではゲーム側が自動で選ぶ。空白キーを押せば、触れる場所が光る。

positive 側はこれを「無駄に物を擦り合わせなくて済む」と評する。negative 側は「考える工程そのものを取り上げられた」と書く。Puzzlebyrinth の語彙で言えば、ここで起きているのは動詞の減算ではなく探索の代行である。動詞は残したまま、組み合わせを試す手間だけを機械が引き受けている。

これは強い設計判断だ。組み合わせ爆発を消す代わりに、閃きの持ち場も一緒に消える。あるレビュアーは、正しい物を持って正しい場所を押せば、使い方までゲームが教えてくれると書いた。それはまだパズルなのか、という問いは正当である。

対照的なのは、同じ場所で逆を選んだ作品だ。Thimbleweed Park は動詞一覧を画面の下に戻し、擦り合わせの手間をあえて残した。どちらが正しいかではなく、遊ぶ人の手元に何を残すかの選択である。

Trüberbrook のスクリーンショットTrüberbrook のゲーム画面(Steam スクリーンショット)

難しさの手触り

では簡単なのか。レビュー群の答えは「簡単で、しかも詰まる」だ。詰まりの証言を集めると、質が三つに分かれる。

第一に、次の目的が示されない型。持ち物の連鎖は進むのに、何のためにやっているのか分からないという指摘が繰り返し出る。第二に、解の発想が飛ぶ型。木の上の猫を降ろす場面や、鳥を呼んでテレビの受信を妨害する場面が、negative 側で名前を挙げられている。第三に、単純な往復の多さだ。歩きが遅く、後半は同じ画面を何度も通ることになる。

三つのうち、パズルの難しさと呼べるのは第二だけである。第一と第三は通知と移動の設計だ。難しさは不親切か——公正(フェアネス)の哲学 で整理したとおり、公正さは難しさの量ではなく通知の設計で決まる。本作の詰まりは、ほとんど通知の側にある。

だから「簡単すぎる」と「理不尽」は同時に成り立つ。解の空間は狭く畳まれているのに、目的の掲示だけが抜けている。狭い迷路で、出口の看板だけが外されている状態だ。私が難しさを 2(易)と付けたのは、この構図を踏まえてのことである。

Trüberbrook のスクリーンショットTrüberbrook のゲーム画面(Steam スクリーンショット)

物語の手触り

物語への評が、集計のいちばん低い部分を作っている。序盤の評価は高い。中盤以降に「急ぎ足になる」「場面が切られた気配がある」という指摘が集まる。敵役の動機が説明されないまま終わるという不満は、推奨している側からも出ている。

終盤で使い走りが増え、飛ばせない生演奏の場面が挟まる。ここは negative 側の定番の不満だ。専門メディアの Hey Poor Player は5点満点の3点をつけた。物語は一瞬で駆け抜けるのに、プレイヤーは同じ場所を回り続ける。その不均衡を指摘している。公式の紹介文が掲げる「約10時間」に対し、レビューに現れる時間は5〜9時間に寄る。

negative 側でとくに多いのは、引用の使い方への批判である。Twin Peaks 風の録音癖、Monkey Island を思わせる言い回し、地名に混ぜられた神話や歴史の名前。指し示す先は多いのに、指した先で回収されるものが少ないという読み方だ。

設計として見れば、これは配分の問題だ。制作の労力は明らかに舞台の側へ寄っている。Syberia のように、雰囲気の強さで物語の粗さを飲み込ませる作品もある。本作は雰囲気では足りていたが、尺の短さのぶんを飲み込みきれなかった。

Trüberbrook のスクリーンショットTrüberbrook のゲーム画面(Steam スクリーンショット)

参照したレビュー群

本記事は 2026-08-27 時点での Steam のユーザーレビュー群と関連する報道を読んで書いた。レビュー本文の直接引用は避け、繰り返し現れた主張を再構成している。

Steam: Trüberbrook(2,343 件中 1,711 件が肯定で 73.0% positive、ラベルは「やや好評」/ 2026-08-27 snapshot)

・helpful 順の positive 上位 10 件、negative 上位 10 件、recent 上位 8 件を読了(合計 28 件)。Steam のレビュー取得 API 経由で本文を取得した。

Metacritic: Trüberbrook(PC 版 25 レビューで 66 点、ユーザー評点 5.7 / 44 件)

・専門メディア: Hey Poor Player のレビュー(3/5)

・付記: 画像はすべて Steam ストアが配信している公式スクリーンショットである。今回の執筆環境では画像そのものを開けなかったため、キャプションは写っているものを特定せず、汎用の表記に留めている。

結論

recent 側も見た。私が読んだ最新の8件はすべて推奨で、投稿時期は 2024 年 12 月に集まっていた。安く手に入れた前提で「絵と音のために遊ぶならこれで十分」という調子が多い。価格が下がるほど評価が上がる型の作品だと言える。発売当時のレビューが価格の高さに触れているのと、きれいに対応している。

設計の観点から私が付ける点は 6.5 で、Steam の 73.0% よりわずかに辛い。減点はパズルの易しさそのものではなく、探索を代行しておきながら目的の掲示を省いた点に対してである。舞台の作りと音への賛辞については、私も引き下げる理由を見つけられなかった。

レビューに現れるクリア時間はおおむね 5〜9 時間、中央値は 7 時間ほどだ。向くのは、手で作られた画面と音のためにその時間を使える人である。向かないのは、解を自分で組み立てたい人だ。物語のあるパズル、ないパズル の線引きで言えば、本作はかなり物語側に寄って立っている。そこに立っていると分かって降りていくなら、この村はよくできている。

Trüberbrook のスクリーンショットTrüberbrook のゲーム画面(Steam スクリーンショット)

リアクション(ログイン不要)

匿名で残せます • 同じリアクションは1日1回まで

次に読む

関連レビュー

編集部からのおすすめ