BLOG · 2026-07-22

パルスマン(1994) — ポケモンを作る前夜、ゲームフリークが放った電気の少年

今日は発売日 #09 — 1994年7月22日、メガドライブに刻まれた“ポケモン以前”

1994年7月22日、ゲームフリークが電気の少年を世に放った日

こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第9回。今日掘り出したのは、ゲームフリークが開発し、セガが1994年7月22日にメガドライブ用ソフトとして発売した『パルスマン』です。平成6年の夏。今日でちょうど32年になります。

開発初期の仮題は『Spark』。ディレクションとデザインを手がけたのは杉森建と田尻智、プログラムに増田順一、キャラクターデザインににしだあつこ——ポケモンを知る人には見覚えのある名前ばかりです。『ポケットモンスター 赤・緑』の2年前、のちにその中核となる面々が、メガドライブの一本のアクションゲームに集まっていました。

パルスマン メガドライブ実機プレイ映像のサムネイル「【MD】パルスマン【実況なし/…/PULSEMAN/GAME FREAK/MEGADRIVE】」(YouTube)のサムネイルより

主人公パルスマンは、天才科学者ヨシヤマ博士と、彼が生み出した人工生命『C-Life』との間に生まれた、半分人間・半分デジタルの少年。体に電気をまとい、現実世界とコンピュータの中(電脳世界)を行き来しながら、暴走した父・ワルヤマ博士が率いるギャラクシーギャングに立ち向かいます。

どんなゲームだったか — 電気をためて、世界の内と外を跳ぶ

遊びの核は、独特の高速アクションです。静電気をためると体が「ボルテッカー」状態になり、壁や床に弾丸のように反射しながら一気に跳ね回れる。ためる→放つのリズムをつかむと、ステージが立体的なピンボール台のように変わります。ところどころで電脳世界に潜り込む仕掛けもあり、現実と内部を行き来する設定がそのまま遊びになっていました。

見た目と音も飛び抜けています。メガドライブとしては屈指の、大きく緻密なスプライトと、はっきりした色使い。音楽は増田順一が手がけました。1994年当時から「グラフィックとサウンドが良い」と評価された、見た目に華のある一本です。

1994年に「AIと人間のあいだに生まれた子」「サイバー空間を行き来するヒーロー」を主題に据えていたことも、いま振り返ると早い。派手なアクションの下に、少し先の時代を先取りした設定が敷かれていました。

当時の反応 — 静かな船出だった一本

『パルスマン』は、1994年の発売時は日本国内向けのみ。海外では翌1995年に、ケーブル配信サービスSega Channelでしか遊べませんでした。パッケージが海外の店頭に並ばなかったため、世界的には長く「知る人ぞ知る」存在にとどまります。

日本での評価はといえば、ファミ通のクロスレビューは6・7・6・5、『Beep!メガドライブ』は6.5/10、『マイコンBASICマガジン』1994年10月号の人気投票では8位、『メガドライブFAN』の読者投票では30点満点中20.9点。輸入版を扱った海外誌でも英国『Sega Pro』が81%を付けるなど、好意的な評価が並びました。爆発的な大ヒットではないけれど、手に取った人には確かに刺さった——そんな手触りの一本です。

限られた出荷ゆえに広くは知られないまま埋もれていったこと。それが皮肉にも、後年の「幻の名作」という評価につながっていきます。

32年後の今日 — 幻の名作と、ピカチュウに残った名前

動画はメガドライブ実機のプレイ映像(実況なし)です。ボルテッカーで壁を蹴って跳ね回る、あの独特の手触りが見て取れます。1994年の画面が、いまも十分に華やかなことも。

再評価は後からやってきました。Wiiのバーチャルコンソール(日本2007年、海外2009年)で初めて手軽に遊べるようになると、レビュー集計GameRankingsで80%、IGNとNintendo Lifeがそろって8/10。そして2023年4月18日には、Nintendo Classics(Switch)のメガドライブ集にも加わりました。発売から30年近く経って、ようやく世界の棚に並んだ、遅れてきた名作です。

そして、ポケモンとの糸。パルスマンの必殺技「ボルテッカー」は、のちに『ポケットモンスター』でピカチュウの技「ボルテッカー(英語名 Volt Tackle)」として同じ名前で受け継がれました。電脳と現実を行き来するロトム、敵組織ギャラクシーギャングとギンガ団——ファンや記事がたびたび指摘する“ポケモン以前の痕跡”が、この1994年の一本には点々と残っています。

おわりに — ヒット作の前夜に置かれた原石

年号の話を一度だけ。1994年——平成6年、『ポケットモンスター 赤・緑』の2年前です。世界的にはほとんど売られず、静かに消えていったこの一本の中に、のちに世界を変えるチームと、ピカチュウが今も使う技の名前が、すでに埋まっていました。資料を掘っていて“ヒット作の前夜”に行き当たる瞬間が、私はいちばん好きです(年号を書かないと記事が完成した気がしない身としては、1994と何度も書けた今日はいい日でした)。

あなたには、「発売当時は静かだったのに、あとから好きになった」ゲームはありますか。よければ聞かせてください。次の発売日でお会いしましょう。

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