BLOG · 2026-09-18
Oddworld: Abe's Oddysee(1997) — 攻撃のボタンの代わりに、話しかけるボタンがある
今日は発売日 #59 — 1997年9月18日、PlayStationで発売
武器のない主人公は、どうやって敵だらけの工場から出るのか
こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第59回。今日の一本には、攻撃のボタンがありません。そこに割り当てられているのは、話しかけるボタンです。
銃を持った見張りだらけの工場を、主人公はそれで抜けていきます。仲間には声をかけて動かす。敵には乗り移って、その体を働かせる。この2つがそのままパズルの解き方です。
「Oddworld: Abe's Oddysee (1997) - Official Trailer」(Retro Game Trailers, YouTube)のサムネイルより
『Oddworld: Abe's Oddysee』は、Oddworld Inhabitants が1997年に発売したパズルプラットフォーマーです。販売は GT Interactive、機種は PlayStation。主人公のエイブは、食肉工場で働かされている奴隷です。
ここで年号の話を1つ。北米の店頭にこのソフトが並んだのは1997年9月18日でした。ところが公式の発売イベント「Odd Friday」は、その翌日の19日です。GameSpotは初回リリースを9月18日と記録しています。つまり、この作品には発売日が2つある。今日2026年9月18日は、棚に並んだほうの日からちょうど29年です。
エイブに何ができて、何ができないのか
できないことから書きます。エイブは銃を持てません。殴れません。投げられるのは肉と石と手榴弾くらいで、その手榴弾も持ちすぎると自分の手で爆発します。
見張りに見つかれば撃たれて終わり。落ちても終わり。ほとんどの場面で、死は一撃で即座にやってきます。
できることの1つ目が「ゲームスピーク」です。ボタンを押しながら方向を入れると、エイブが声を出します。「やあ」「ついてこい」「待て」、それに仲間を褒める声と叱る声。これで仲間のムドコンを1人ずつ動かし、スイッチを踏ませ、出口へ導きます。
作者のローン・ランニングは、この仕組みが『Loom』の音のパズルに部分的に着想を得たものだと語っています。共同創業者のシェリー・マッケナは「すべての解決はコミュニケーションにある」と考えていました。攻撃のボタンが会話のボタンに置き換わったのは、偶然ではありません。
「PSX Longplay [010] Oddworld: Abe's Oddysee (Part 1 of 2)」(World-of-Longplays, YouTube)のサムネイルより
できることの2つ目が憑依です。詠唱すると、見張りのスリグに乗り移れます。乗り移った体で歩き、しゃべり、他の敵を撃ち、危ない機械を動かす。用が済んだら内側から破裂させます。ただし憑依している間、エイブ本体はその場に立ったまま無防備です。
操作は一歩ずつ確定します。ジャンプの途中で向きは変えられません。だから、走るか、忍び足で行くか、転がって抜けるかを、踏み出す前に決めることになります。
工場には助けられる仲間が99人います。50人以上を外へ逃がせば、解放された仲間が雷を落として工場を壊し、エイブは助かります。足りなければ、エイブは肉挽き機に送られて物語が終わります。クリアだけなら1人も助けずにできる。それでも結末は変わる、という作りです。
攻撃手段を取り上げたぶん、この作品は「敵をどう倒すか」ではなく「敵をどう働かせるか」をパズルの本体にしました。1997年のパズルプラットフォーマーとしては、珍しい選択です。
発売直後、このゲームはどう受け止められたのか
評価は高い位置で割れました。集計サイトのGameRankingsではPlayStation版が88%、Metacriticでは85点。個別の点は、Edgeが8/10、Electronic Gaming Monthlyが8.5/10、Game Informerが9.25/10、GameSpotが8.4/10、IGNが7.5/10です。
GameSpotはこれを「アクションとパズルの配分が理想的で、賢く、引き込まれ、そして何より面白い」と書きました。
批判はほぼ1点に集まっています。トライ&エラーです。PC Zoneは「進行がトライ&エラーに頼っているように見える」とし、死ぬたびに面の最初へ戻されるのがとくに腹立たしいと書きました。Next Generationはこう整理しています。アクション目当ての人には遅く感じるだろうが、その分だけ観察と忍耐と思考を求められる、と。
賞のほうを見ると、Electronic Gaming Monthlyの1997年ベストボイスアクティングとベストサウンドを獲っています。ベストグラフィックスは次点でした。1位は『ファイナルファンタジーVII』です。
売れ行きも書いておきます。発売時の出荷が50万本。1998年1月末までに世界で100万本を超え、意外にもヨーロッパがアメリカを上回りました。2012年12月までの累計は350万本です。
この数字の裏側も残っています。制作費は400万ドル、宣伝費は1000万ドル。宣伝費のほうは、当時のGT Interactiveにとって過去最大の予算でした。
29年後の今日、この作品はどこまで続いているのか
ここからは、その後の話です。
下に置いたのは、当時の公式トレーラーです。工場の暗さ、エイブの縫い留められた口、見張りのシルエット。宣伝に1000万ドルを使った年の画が、そのまま残っています。
日本版が出たのは、北米から約3か月遅れの1997年12月11日でした。タイトルは『エイブ・ア・ゴーゴー』、発売はゲームバンク。名前がまるごと変わったので、同じ作品だと気づかないまま両方に触れていた人もいるはずです。
Oddworld Inhabitants はこの作品を5部作構想「Quintology」の1本目として作りました。続く『Oddworld: Abe's Exoddus』が1998年、『Oddworld: Munch's Oddysee』が2001年、『Oddworld: Stranger's Wrath』が2005年。のちに、この1作目そのもののフルリメイク『Oddworld: New 'n' Tasty』も作られています。
一九九七年、と書いておきます
1997年。こうして年号を書き留めておかないと、どうも記事が終わった気がしません。北米の店頭に並んだのは1997年9月18日。今日2026年9月18日で、ちょうど29年です。
同じ年、画面の美しさで争った相手は『ファイナルファンタジーVII』でした。片方は巨大なRPG、もう片方は武器を持たない奴隷の話です。
この一本が残したのは、倒すための手段をすべて取り上げると「敵をどう働かせるか」というパズルが立ち上がる、という発見でした。ボタンを1つ置き換えただけで、解き方の形が変わっています。
あなたが遊んだ中で、戦わないことがそのまま解法だったゲームはありますか。
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