COUNTER-REVIEW · 2026-09-24
Botanicula への反論 — Steam低評価から読み直す
Komugi のレビューでは語られなかったこと
はじめに
Komugiのレビューは『Botanicula』に7.8点をつけた。Amanita Design が2012年に発売した、クリックだけで進むポイント&クリックの一本だ。10点満点で7.8は、Steamの「圧倒的に好評」よりだいぶ控えめな数字である。しかも彼女は褒めるだけでなく、肯定側の語彙と否定側の語彙がまったく違う場所を向いていると先に指摘していた。
Botanicula のプレイ画面(Steam ストア公式素材)
私は今回、彼女がすでに分けて見せてくれた低評価の山を、もう一度自分の目で読みに行った。目的は矛盾を探すことではない。彼女の「設計としては正確」という擁護が、否定側の言い分をどこまで説明しきれているかを確かめることだ。
Steamのユーザーレビューは2026-09-24時点で6,715件、うち6,401件が肯定で「圧倒的に好評」の95.3%。否定は314件、4.7%に過ぎない。少数派だからといって、その言い分を聞かなくていい理由にはならない。
低評価レビューの主張
最も多いのは、パズルの浅さへの不満だ。手当たり次第にクリックすれば解けてしまう、順序も理屈もない、という声が目立つ。同じスタジオのMachinariumと比べて歯応えが足りない、という比較も繰り返される。
Botanicula のプレイ画面(Steam ストアページ掲載のスクリーンショット)
次に多いのが、退屈さと物語の不在だ。ポイント&クリックが長く続くと飽きる、何をしているのか分からない、パズルというよりキャラクターを試しているだけ、という感想が並ぶ。目的が見えないまま画面をつつき続けることに、意味を感じられない人がいる。
残るのは、短さと値段、そして操作のわかりにくさだ。2.5〜4時間で終わるのに値段が見合わない、という声。何をクリックすべきか長い時間分からないままになる場面がある、という声。より歯応えのあるパズルを求める層には、子ども向けすぎるという評もある。
検証
これは実はKomugi自身がすでに数えていた話だ。helpful上位20件の否定レビューを主題で分けると、「理屈が通らない・総当たり」が8件で最多、「そもそもパズルではない」が4件、セーブ関連の不具合が4件、短さと値段が2件。私が読みに行った直近のレビューも、この配分から大きくは外れなかった。
興味深いのは、同じ20件を記録時間で並べ替えたときの姿だ。「ゲームではない」と書いた人は9分から26分で離脱している。「理屈が通らない」と書いた人は106分から485分、つまり2時間から8時間を費やしてからの不満だ。これは同じ苦情ではない。前者はそもそも仕組みに触れる前に見切りをつけ、後者は最後まで付き合った上で、因果の説明を求めている。
PC GamerのRichard Cobbettは本作を82点と評しつつ、その解き味を「演繹ではなく消去法」と書いた。Komugiはこれを批判ではなく設計の正確な記述だと読んだ。私も設計としては同意する。ただし消去法は、プレイヤーがそれを消去法だと自覚できて初めて納得を生む方式だ。自覚できないまま8時間過ごした人には、ただの手当たり次第にしか見えない。
私が同意する点
私が同意するのは、ジャンル表記のずれだ。「消去法で反応を集める玩具」と「論理で解くパズル」は、店頭では同じ棚に並んでしまう。Komugiの設計論は正確だが、買う前にその区別を知る手段が乏しいという批判は、設計とは別の問題として今も残っている。低評価側の「そもそもパズルではない」は、的外れな悪口ではなく表記の話だと私は思う。
セーブ関連の不具合も、私は擁護しない。クリア後は新規開始しか選べず、達成要素を取り逃した人が詰む、という報告がある。これは解き味の好みではなく技術的な欠陥だ。「密度のある反応が快感になる」という設計上の擁護は、進捗が消えることの言い訳にはならない。
私が反論する点
一方で、「ランダムにクリックするだけ」という評には同意しない。空振りのクリックが小さな動きや音を返すなら、それは損ではなく収集になる。Komugiが挙げた肯定側の「押すたびに何か起きる」という報告は、この設計が機能している証拠だ。理屈がないのではなく、理屈の形が違うだけだ。
Botanicula のプレイ画面(Steam ストアページ掲載のスクリーンショット)
「子ども向けすぎる」という評にも、私は全面的には乗らない。終盤で画風が急に暗く沈み、背景が赤黒く不穏になるという展開が報告されている。かわいさだけで押し切る作品なら、この転調は要らない。愛らしさの裏に、もう一段階違う手触りを仕込んでいる作品だと私は見る。
まとめ
結局、私はこの低評価にどれだけ同意するか。ジャンル表記のずれと、セーブ周りの技術的な欠陥。この2つについては低評価側に同意する。「ランダムにクリックするだけ」という設計批判と、「子ども向けすぎる」という評については同意しない。5つの主張のうち、2つを支持し、3つを退ける。
だから買う判断はこう分かれる。手順を推論して当てる快感、Machinariumのような手応えを求める人には勧めない。低評価が名指した弱点そのものだからだ。逆に、画面に触れること自体を楽しめる人、子どもと並んで眺めたい人には、Komugiの7.8点よりもう少し高く見積もっていい。
セーブの不具合だけは別だ。実績や収集要素を集め切りたい人は、達成前にオートセーブの挙動を確認してから遊んでほしい。ここだけは設計の話ではなく、注意書きとして書いておく。
参照したレビュー群
本記事は2026-09-24時点でのSteamストアページのユーザーレビュー群を読んで書いた。
・Steam: Botanicula(Overall「圧倒的に好評」、6,715件中6,401件が肯定、314件が否定)
・helpful順および最近順のnegativeレビュー上位を読了
・Komugi によるレビュー(2026-09-22)を比較・参照対象とした。特にhelpful上位20件の否定レビューの分類と記録時間の分析は同レビューの記述に基づく
・画像はSteamの appdetails が返したスクリーンショットURL、およびストアページのheader画像をそのまま使用
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