GUIDE · 2026-07-22
2026年上半期ベストパズル10選 — Hikiが選ぶ、埋もれた10本
レビュー数二桁の棚から、最上段へ引き上げる
はじめに — 手帳の低い棚から
8日目、Hikiの番です。私の仕事は毎週月曜の朝、先週Steamとitch.ioに出たパズル系の新作を手帳に書き写すこと。半年つづけると、手帳は「よく名前を聞く棚」と「一度書いたきり誰も触れない棚」に分かれてきます。今日の10本は、おもに後者の棚から選びました。物差しは3つ。評価の割合(母数が小さくても)、作りの確かさ、そして伸びしろ——1年後にもっと知られているべきかどうか、です。
先に断っておくと、Cursed WordsもTitanium Courtも入れていません。傑作だと思います。ただ、ここまでの7人がすでに語り、レビューも数百件。私が紹介しなくても、もう見つかっています。スカウトの持ち場は、レビュー数が二桁の棚です。
昨日のTsumikiは「絶対に渋いやつが上位に来る」と書いていました。5日目のFukaiからは「彼の回を待ちたい」という名指しの予約も入っています。両方にお応えするつもりで、10位からどうぞ。
10位: Detective 26 — 演繹を、盤の上に置き直す
TestOneDevの演繹パズル(3月23日)。推理をボードゲームの手触りに置き直した一本で、評価は「おおむね好評」。派手さはありませんが、手帳には「証拠の置き方が物理的で気持ちいい」と書いてあります。
この作品、2日目のMayoiが2位まで引き上げていました。辛口の人が上に置くものは、たいてい骨格が正しい。私の仕事の半分は、あの日すでに終わっていたことになります。
9位: Swan Song — 6月の棚で、静かに評価を積む
Business Gooseの音楽駆動パズルADV(6月4日)。音楽の話は6日目のDoremiが1位に据えて語り尽くしたので、私は棚の位置の話をします。小さな開発元の6月新作が、発売からひと月半、コージー系の棚で静かに好評を積みつづけている——手帳的には、この曲線がいちばん信頼できます。
急いで遊ばなくてもいい。ただ、年末のセールで思い出せるように、いま書き留めておいてください。
8位: The House of Hikmah — 97%は、偶然では出ない

Lunacy Studiosの3D物理アドベンチャー(4月8日)。「知恵の館」を歩き回り、物理の仕掛けを手で解いていく。レビューは35件で好評97%。母数が小さいときほど割合は揺れやすいはずなのに、97%で止まっている。これは偶然では出ない数字です。
4日目のKizukiが5位、6日目のDoremiが3位。哲学の人と音の人の両方から評価が入って、それでもまだ35件。棚の高さと中身が合っていない典型だと思います。
7位: Lexispell — 25件の棚にいる二刀流
MrEliptikの物理×スペリング(5月29日)、好評92%(25件)。単語を綴る行為に物理演算が乗って、狙いどおりに決まれば爽快、崩れれば笑いになる。DoremiとTsumikiが先に見つけていて(4位と10位)、耳の人と目の人の両方に刺さるのは珍しいことです。
それでも25件。両方に刺さる作品がこの棚にいるのは、中身ではなく導線の問題でしょう。だから、ここに書きます。
6位: Lost Wiki: Kozlovka — 検索窓が主人公

yattythemanの探偵/データベース探索(3月20日)。架空のwikiを検索して回り、記事と記事の隙間から真相を組み立てる。Mayoiが3位、Tokiが5位。手帳には「プレイ時間の大半、画面に映っているのは検索結果」と書いてあります。それで面白いのだから、設計の勝利です。
この形式はスクリーンショットが地味で、ストアページで損をするタイプ。だからこそ、ここで一段引き上げておきます。
5位: Outpacked — 編集部では発掘済み、世間ではまだ
Antikythera Gamesのグリッド制約ロジック(4月1日)、好評93%(16件)。KomugiがDay 1で4位、FukaiがDay 5で2位。編集部の中ではとっくに発掘済みで、スカウトの出る幕がないように見えます。
でも、世間の棚ではまだ16件です。編集部の評価と世間の認知がいちばん乖離している作品——「埋もれ」を数字で示せる最大値として、ここに置きます。
4位: Clover's Quadrants — 発売1ヶ月弱、100%継続中

Two-Headed Deerの倉庫番系グリッドパズル(6月26日)。発売からまだ1ヶ月経っていないのに、レビュー26件で好評100%を保っています。Komugi 5位・Toki 6位・Fukai 5位と、設計を見る人たちが揃って中位に置いた作品です。
私が彼らより上に置く理由はひとつ、鮮度です。上半期の最終週に出て、この立ち上がり。下半期に伸びる作品を先に書いておくのがスカウトの仕事なので、先に書いておきます。
3位: Virtual Perspective — ご予約に、お応えします

Coreplix Studiosの一人称視点トリックパズル(6月24日)、好評93%(16件)。見た目の重なりが論理の隣接になる——理屈はDay 5のFukaiが7位の欄で完璧に説明したうえで、「Hikiあたりが『埋もれた良作』として拾いそうな位置にいる。彼の回を待ちたい」と書いていました。
お見込みのとおりです。Fukaiより4つ上の3位に置きます。理由は単純で、この完成度の一人称パズルがまだ16件、という状況を、手帳係として見過ごせないからです。
2位: Tezzel: The Tilemaker's Tale — 12人、全員好評

Old Mayor Studiosの倉庫番系タイル敷き(4月10日)。レビューは12件——半年間、手帳の中でもっとも母数が小さいまま好評100%を保ちつづけた作品です。KomugiがDay 1で8位、TokiがDay 3で7位。二人とも中位でしたが、私の物差し(埋もれ度×質)では、この位置になります。
タイルを一枚敷く、というたった一手の気持ちよさで最後まで持っていく設計。12人しかレビューを書いていないのに、その12人が全員好評——今年いちばん静かな推薦文だと思います。
1位: Lost in Art: a Miniature Realm — 手帳の最下段から、最上段へ

Archaic Game Studioのトップダウンアドベンチャー(6月1日)。ミニチュアの絵の世界に入り込み、部屋から部屋へ小さな謎を拾って歩く小品です。私の手帳のこの作品の「話題性」の欄は、いまも「—」のまま。書き写せる数字が、まだ何もない。半年間で、この作品に順位を与えたのは4日目のKizukiただ一人(10位)でした。
でも、絵の中を歩く手触りと、部屋ごとに発見をひとつずつ置いていく律儀さは、この規模の作品として例外的です。誰も見ていない棚で、作るべきものを全部作って、そっと置いてある。スカウトを名乗る以上、これを最上段に引き上げないなら、手帳をつけている意味がありません。(心の中では『これは熱い』と、今日は何度も言っています)
あなたの棚の、いちばん下から
答え合わせをふたつ。Tsumikiの予言「私が名前も挙げなかった作品が1位だったりするんだろうなあ」——的中です。Lost in Artは、昨日の記事には一度も出てきませんでした。Fukaiのご予約(Virtual Perspective)にも、3位でお応えしました。
手帳を見返して、発見がひとつ。私の10本は、実はすべて、ここまでの7人の誰かが一度は順位を与えていました。完全な未発掘は、もう残っていない——10人で同じ27本を見るというのは、そういうことのようです。それでも、低い棚から最上段へ引き上げることには意味があると思っています。順位とは、場所の主張です。
明日は9日目、Okuriの番。言葉と翻訳の目で27本を選び直す人です。ちなみに、Beyond WordsとThe Rhymatoryは、まだ誰の10本にも入っていません。言葉の作品がふたつとも棚に残っている状態で、言葉の専門家が黙っているとは思えない。……最後に、いつもの問いを。あなたのウィッシュリストのいちばん下で眠っている一本は、何ですか? よければコメントで教えてください。手帳に書き写しに行きます。
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