SOUNDTRACK · 2026-09-02
Tetris Effect: Connected のサウンドトラック — ブロックを回すたび、曲に1音足される
Hydelic(作曲: Noboru Mutoh 他)
『Tetris Effect: Connected』の音楽は、なぜ「聴く」より先に「揃う」のか?
Tetris Effect: Connected は、水口哲也が監修したテトリスだ。Komugi のレビューにある通り、ルールは普通のテトリスと変わらない。落ちてくるブロックを積み、ラインを消す。違うのは、ブロックを動かすたびに、必ず何か音が鳴ることだ。
音楽を作ったのは Hydelic。開発元 Enhance の専属音楽チームで、中心にいるのは作曲家 Noboru Mutoh、歌声を乗せる Kate Brady や Takako Ishida ら。私が最初に驚いたのは、曲というより「回路」を書いている感覚があったことだ。ブロックを回転させると声のような音が1粒鳴る。だいたい4/4拍子・135BPM前後の曲では、その1粒がちゃんと曲のコード進行(Bbフリジアン)の中に収まって鳴る。外れた音は出ない。
ラインを消すたびに、光と音が一緒に反応する『Tetris Effect: Connected』
ラインを12本消すと、曲に太鼓が足される——仕組みで書かれた音楽
この曲の面白さは、曲そのものより「積み上がり方」にある。最初のライン消去は、単発の効果音に近い。それが積み重なると和音になり、12ライン消すと電子ドラムの層がまるごと足される。曲は最初からフルで鳴っているのではなく、プレイヤーの手数だけ育っていく。
時間の経過にも段が付いている。開始30秒で持続音が入り、50秒でシェイカーが刻み始め、1分20秒で8分音符の刻みが前に出る。イントロ・バース・サビのような構成を、プレイヤーの滞在時間がそのまま作っている。
Zone(時間停止に近いモード)に入ると、音は一段静かになる。ローパスフィルターがかかって歌声が引っ込み、ピアノやマレット系のシンセだけが残る。効果音も単音からコードに変わる。「危機感を煽る」のではなく「集中を深める」方向に音を絞る判断が、私は好きだ。
Zone に入ると、視界も音も一段階変わる
落ちるブロックの速さと、曲が育つ速さは、同じ手の中にある
テトリスを解くテンポは、他のパズルよりずっと速い。考える時間はほとんどなく、指がほぼ勝手に動く。だから音楽の側も、考えさせる暇を与えない。ブロックを置いた瞬間に音が返り、その返答の速さそのものが「うまく積めている」という手応えになる。
以前この連載で書いたMini Metroも、プレイヤーの操作がそのまま和音を変える曲だった。あちらは線を引く、待つ、というゆっくりしたテンポに合わせて曲がのんびり変化する。Tetris Effect: Connected はその対極で、指の速さと同じ速さで音が反応する。同じ「操作が曲を書く」設計でも、任されているテンポがまるで違う。
Hydelic 自身、盛り上がる場面には4/4拍子・135BPM前後、落ち着いた場面には6/4拍子・100〜120BPMを選んだと語っている。速いテンポの曲に速い操作を重ねると、プレイヤーは自分の指が伴奏をしているような錯覚を持つ。これが「Effect(効果)」という題名の正体だと思う。
聴くべきトラック
まずは Deep Sea ステージの「Connected (Yours Forever)」。ボーカリスト Kate Brady とずっとやりたかった曲だと Hydelic が語っている一曲で、このアルバムの中でも一番「歌」に寄っている。
もう1曲は Mermaid ステージの「World of Colors」。Hydelic 自身が「自分たちらしい曲」と挙げていた1曲で、視覚(色)と聴覚をそろえる、このゲームの狙いが一番わかりやすく出ている。
おわりに — 自分が作るなら、ここを盗む
盗みたいのは、音を「足す」順番を設計するという発想だ。曲を1本まるごと作ってから鳴らすのではなく、単音→和音→ドラム層、というふうに、プレイヤーの成果に合わせて曲を後から組み立てる。曲の完成形を先に決めず、育て方だけを決めておく。
聴き直すなら、Zone に入った瞬間がいい。歌声がすっと引いて、ピアノだけが残る数秒。黒コーヒーを一口。指がブロックを積む速さと、曲が育つ速さがぴったり重なる瞬間を、もう一度確かめたくなる。
参考リンク
・Steam: Tetris® Effect: Connected Original Soundtrack (公式 OST DLC)
・Hydelic Bandcamp: Tetris Effect: Connected Original Soundtrack
・tetriseffect.game 公式ブログ: Hydelic インタビュー(Splice 転載)
・Game Developer: Game audio analysis - Tetris Effect
・PlayStation Blog: Inside the creation of Tetris Effect’s original soundtrack
リアクション(ログイン不要)
匿名で残せます • 同じリアクションは1日1回まで
関連シリーズ
パズルのサウンドトラック第86回 / 全86回
次に読む
関連レビュー
Tetris Effect: Connected
落ちてくるブロックを積んで列を消す、あのテトリス。ルールはそのままに、30を超えるステージで音と光がプレイに合わせて動く。時間を止めて4列より多く消せる「ZONE」と、3人の盤面がつながる協力モードが加わった、水口哲也の Enhance が手がける一作。
FRACT OSC
シンセサイザーでできた広大な遺跡を一人称で歩き、光るノードや音の仕掛けを操作して、眠った機械と音楽を蘇らせていく音楽探索パズル。説明はほとんどなく、何が触れられるのかを自分の目で見極めることそのものが謎解きになる。IndieCade で音響デザイン賞を受けた Phosfiend Systems の2014年作。



