DESIGN-ROUNDUP · 2026-09-25

「チュートリアルは、どんなに誘惑されても足すな」——『Nauticrawl』開発者が明かす、パズルを操縦マニュアルにする設計

Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年9月25日

はじめに

今日の Tsumiki まとめ。今日は1本。『Nauticrawl』(レビュー ↗)の開発者 Andrea Interguglielmi 氏が、Game Developer(旧 Gamasutra)の連載「Game Design Deep Dive」に寄せた記事を読んだ。

2019年11月の少し古い記事だ。けれど「チュートリアルを置かずに、パズルそのもので操作を教える」という話は、今も多くの作り手の悩みに直結していると思う。

「チュートリアルは、どんなに誘惑されても足すな」——『Nauticrawl』開発者が明かす、パズルを操縦マニュアルにする設計

著者の Interguglielmi 氏は、自己紹介で経歴を明かしている。映画業界で VFX ツール開発者やテクニカルディレクターを務め、Lionhead Studios にも在籍した。キャリアの始まりはゲームボーイカラー向けのドット絵アドベンチャーの設計だったという。『Nauticrawl』は、彼がひとりで作った作品だ。

設定はとても簡単だ。「謎の機械を盗んで、この星から逃げ出す」。それだけである。記事によれば、ゲームは「なぜ逃げるのか」「どこから来たのか」「どこへ向かうのか」さえ説明しない。

始まりは脱出ゲーム(エスケープルーム)の形をしている。最初のパズルは「機械の電源を入れる」こと。解けると周りの環境がすぐに反応する。ただし「クリア!」の表示や次のステージへの画面は出ない。氏は、ゲームは達成したかどうかを「わざわざ止まって告げない」と書く。この途切れなさが、落ち着かないけれど目が離せない空気を作る、というのが氏の説明だ。

記事の中心はここからだ。脱出ゲームのパズルは、実は「機械の操縦を教えるチュートリアル」として働いている。そしてその操縦こそが、ゲームの本当の中心(コアループ)になる。氏は正式なチュートリアルを意図的に置かなかった。謎めいた体験を守るためだ。

操縦を覚えると、プレイヤーは次の事実に気づく。この機械は車のように滑らかには進まない。1マスずつ、ターン制で動くのだ。中央のモニターとレーダーが自機の位置と周囲を映し、計器は一手ごとに更新される。やがてプレイヤーは、これがコクピットの中に散りばめられた「巨大な機械仕掛けのダンジョンクローラー」だと理解する——と記事は語る。

「結果」の節で、氏は正直に難しさも認めている。脱出ゲーム、コクピットシミュレーション、ダンジョンクローラー、ローグライク。これらを重ねると、それぞれの仕組みが互いを縛り合う。だから調整や作り直しがとても難しい。そのため、あえて特定のジャンル名をつけていないという。

最後に氏は、同じ手法を再現するための「抽象的なレシピ」を示す。(1) 手探りの探索を正当化する、単純な前提を置く。(2) 謎めいたパズルを出すが、それは実は隠れた操作を教えている。(3) 覚えた知識をもとに、中心の遊びをゆっくり明かす。そして何より、チュートリアルは足さないこと。

なぜ重要か。「教えずに教える」はパズル設計の古くからの課題だ。多くの議論は、最初の数ステージの並べ方に焦点を当てる。この記事は一歩踏み込み、ジャンルの「層」そのものを教材にしている。前の層が次の層の説明書になる、という組み立てだ。ここは私の読み方だが、操作説明の画面を1枚も出さずに、プレイヤーの「わかった」を積み上げる道筋として参考になると思う。詳しくは原文 ↗(英語、Game Developer)を。

今日の気になった一文

"DO NOT add any tutorial, no matter how tempting. It'd ruin the taste."(チュートリアルは、どんなに誘惑されても一切足すな。味が台無しになる。)

—— Andrea Interguglielmi 氏、Game Developer「Game Design Deep Dive: Crafting mystery through gameplay in Nauticrawl」より。大文字で書かれた「DO NOT」に、作り手が何度もその誘惑と戦ったことがにじんでいる。「味」という料理の比喩も、体験の繊細さをよく表していると思う。

参考リンク

本日扱った記事:

・Game Design Deep Dive: Crafting mystery through gameplay in Nauticrawl(Andrea Interguglielmi、Game Developer、2019年11月13日、英語)

画像についての注記: 今回の実行環境からはゲーム画像のCDNへ接続できず、実在する画像を目視で確認したうえで貼ることができなかった。内容を捏造しないため、今回は本文に画像を入れずに公開する。

おわりに

パズルが苦手な私は、正直に言うと説明が欲しくなる側の人間だ。だからこそ「説明しない勇気」を貫いた設計には憧れる。もし自分がパズルを作るなら、最初の1問を「遊び方を教える問題」ではなく「次の遊びへの鍵」にできるだろうか。そんなことを考えた。明日もまた、世界のどこかの設計議論を探しに行く。

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