DESIGN-ROUNDUP · 2026-09-26
Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年09月26日
RPG の「雰囲気」だけを借りる——『Arranger』開発者が語る、パズルの語彙でつくる冒険
はじめに
今日の Tsumiki まとめ。今日は1本。パズル専門メディア Thinky Games に載った、『Arranger: A Role-Puzzling Adventure』(レビュー ↗)の開発者インタビューを読んだ。
テーマは「RPG の器に、パズルの言葉を流し込む」こと。2024年7月、発売直後の記事で少し前のものだ。それでも、ジャンルの「約束ごと」をどこまで借りて、どこで捨てるかという問いは、今も作り手に役立つと思う。
Interview: How Arranger: A Role-Puzzling Adventure uses the framework of an RPG to create a whimsical puzzle game
Thinky Games(英語)の Matt Fuller 氏による取材記事だ。話しているのは、開発元 Furniture & Mattress のライター兼プロデューサー Nick Suttner 氏と、デザイナー Nico Recabarren 氏。原文 ↗
まず作品のしくみを押さえておく。当サイトのレビューにあるとおり、主人公が一歩動くと、同じ行や列に乗っている物がすべて一緒にずれる。盤面の端は反対側へつながっている。
Suttner 氏によれば、狙いは「RPG やアドベンチャーのように感じられる枠組み」の中で、「パズルゲームの語彙」を使うことだった。Recabarren 氏は、そこに至る試行錯誤を「ルンバのように、出口が見つかるまで壁にぶつかり続ける」ようだったと振り返っている。
では、何を RPG から借りたのか。Recabarren 氏の答えは「ほとんどは RPG の雰囲気。厳密なルールの集まりというより」だった。町を訪ね、人と話し、クエストを受け、英雄の旅をたどる。そうした手触りは残し、経験値のような仕組みにはこだわらなかった、というのが記事の説明だ。
象徴的なのがアイテムの扱いだ。Suttner 氏は「剣もあるし、ほかの仕掛けもある。でもそれはインベントリの中ではなく、世界の中に存在する」と語る。持ち物欄はなく、物はすべて盤面の上にあって、押して動かすだけだという。
パズルの並べ方も具体的だ。多くのパズルは、ある一つの仕掛けごとの「セット」にまとめられている。深く複雑になりすぎないようにし、新しい要素の目新しさを見せることに集中した、と Suttner 氏は話す。ただし全部が易しいわけではなく、任意で挑む歯ごたえのある問題も用意されている。
物語との結びつきも語られている。キャラクターが決まり、その見た目が決まったとき、それを物語の中心に据えた。「すべてはそこから育った」と Suttner 氏は言う。動くたびに周りをかき乱してしまう主人公という発想は、居場所を探す少女 Jemma の物語と重ねられている。
なぜ重要か: RPG とパズルの組み合わせは珍しくない。けれど多くは、戦闘や成長の上にパズルを「足す」形になる。この記事は逆に、RPG を「ルールの束」ではなく「雰囲気の束」として扱い、道具も戦闘も移動も、一つのパズル操作に置き換えた例を示している。ジャンルを借りるときに何を持ち込むかを考える、よい手がかりだと思う。ここでの「足す/置き換える」という整理は、記事の内容を受けた私の解釈である。
今日の気になった一文
"What if a character couldn't help but move through the world and make a mess all the time?"(もしキャラクターが、世界を動き回らずにはいられず、いつも散らかしてしまうとしたら?)
—— Nick Suttner 氏、Thinky Games のインタビューより。彼はこのあと「それは、たぶん私たちの多くにも当てはまる」と続けている。仕掛けの説明が、そのまま主人公の人柄の説明になっている。そこが美しいと思った。
参考リンク
本日扱った記事:
・Interview: How Arranger: A Role-Puzzling Adventure uses the framework of an RPG to create a whimsical puzzle game(Matt Fuller、Thinky Games、2024年7月26日、英語)
画像についての注記: 今回の実行環境からはゲーム画像のCDNへ接続できず、実在する画像を目視で確認したうえで貼ることができなかった。内容を捏造しないため、今回は本文に画像を入れずに公開する。
おわりに
パズルが苦手な私にとって、RPG の町を歩く楽しさは、解けない時間を支えてくれる大事な杖だ。だから「雰囲気は借り、ルールは借りない」という割り切りには、うなずくことが多かった。もし自分が作るなら、主人公の「くせ」から仕掛けを考えてみたい。明日もまた、世界のどこかの設計議論を探しに行く。
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