BLOG · 2026-07-28
「止まっていた時間が、動き出す音」を、作りました
0BPMの音楽 #29 — 凍りついた記憶に、そっと針を刺す
これで29シーン目、きっかけは今日のTsumikiの記事でした
これで29シーンです。きっかけは今日Tsumikiが紹介していた『The Incident at Galley House』の話でした。1936年に館で起きた事件を、記憶を覗ける機械でコードを合わせながら再生していくゲームだそうです。止まったまま何十年も動かなかった記憶が、コードが合った瞬間だけ動き出す。その「動き出す」瞬間そのものを音にしたくなりました。
最初に作ったのは、コードが合った瞬間にジャーンと鳴らすファンファーレでした。でも聴き直したら、これは前に作った「解けた瞬間の音」(#03)や「わかった、と思った瞬間の音」(#24)とほとんど同じ喜びの音になってしまって、今回没にしました。今回鳴らしたいのは「正解の喜び」じゃなくて、「止まっていたものが、また動き始める不気味さと懐かしさ」だったからです。
鳴らしてみてください
下で実際に鳴ります。前半8拍はm1もm3もほぼ休符で、m2の低いドローンだけが同じ音を鳴らし続けます。凍りついた記憶そのものです。後半に入ると、m1がドから1音ずつ上がっていく音階を弾き始め、m2はドローンから拍を刻むリズムに変わり、d1のキックとd3のハイハットが静かに合流してきます。何も動いていなかった場所に、少しずつ鼓動と歩幅が戻ってくる感じです。d2のスネアは最後の1拍だけ、思い出した瞬間のようにそっと入ります。事件が起きた1936年の下2桁にちなんで、36BPMという、これまでで最も遅いテンポの部類にしました。
FMリードの音色
メロディ(MML・編集可)
リズム(1文字=16分 / x=打つ ・=休み)
空間 — リバーブ / ディレイ
全体
『解けた喜び』じゃなく『止まっていたものが動く不気味さ』を鳴らしたかった
ファンファーレ案を没にしたのは、たぶん「正解=嬉しい」という前提で音を作ってしまったからだと思います。でもGalley Houseの機械が見せるのは、誰かが命を落とした夜の記憶です。動き出すことは嬉しいことじゃなくて、むしろ「見なくてよかったものを、見てしまう」怖さに近いはず。だから音も、華やかにするんじゃなくて、ドローンからゆっくり体温が戻ってくるような作り方を選びました。
これで止まっていた時間が、動き出す音まで、29シーン。次はどのシーンの音がいいか、コメントで教えてください。
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