BLOG · 2026-08-02
トバルNo.1(1996) — スクウェアがPlayStationに置いた最初の一枚
今日は発売日 #19 — 1996年8月2日、鳥山明の格闘家たちと、同梱された『FFVII』体験版
1996年8月2日、スクウェアが格闘ゲームを出した日
こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第19回。今日掘り出したのは、スクウェアの『トバルNo.1』。PlayStation用ソフトとして店頭に並んだのは1996年8月2日、平成8年の夏でした。今日でちょうど30年になります。
肩書きを整理しておくと、これはスクウェアのPlayStation参入第1弾です。RPGの会社が最初に出したのが3D対戦型格闘ゲームだった、という順番自体が当時の驚きでした。開発は『バーチャファイター』(セガ)や『鉄拳』(ナムコ)の主要スタッフが集まって設立したドリームファクトリー。キャラクターデザインには鳥山明が起用されています。
YouTube動画「【プレイ動画】トバルNo.1 (PS) [ ゲーム紹介用 短縮20分版 ]」のサムネイルより
舞台は地球歴2048年の惑星トバル。200日に1度、ウダン皇帝が主催する闘技会「TOBAL No.1」に、地球人も異星人もロボットも混ざって出場します。第98回大会——という数え方の細かさが、いかにもこの作品らしいところです。
パンチでもキックでもなく、上段・中段・下段
システムの土台は3つのボタンです。ただし割り当てられているのはパンチ・キックといった「手段」ではなく、上段攻撃・中段攻撃・下段攻撃という「属性」でした。攻撃を高さで抽象化したことで、それまでの格闘ゲームで必要悪だった「しゃがみパンチ」のような不自然さが消え、任意のタイミングで中段を出せるぶん駆け引きが常に張りつめます。
もう一本の柱が「つかみ」。R1のガードを押しながら中段ボタンで発生し、柔道の組み手のように相手を掴んでから、動かす・打つ・投げるを選びます。掴まれた側も読み合いで主導権を奪い返せる。R1でガード、L1でジャンプ、方向キーの上下で奥行き移動——トリガーボタンを軸にした操作系は、当時としては実験的と言えるほど新しく、のちの3Dアクションに引き継がれていきました。
鳥山明が描いたのは、地球人の少年チュージ・ウーから、鳥人のオライムス、竜人のイール・ゴガ、32歳の女子プロレスラー マリー・イボンスカヤまで。作業用ロボットのホムの胸に書かれた「餛飩(ワンタン)」は、師匠フェイの好物をそのまま書かれてしまったもの、という設定です。隠しキャラクターには鳥山自身をかたどった鳥山ロボもいます。
そして「クエストモード」。ウダン皇帝の城の地下に潜り、モルモラン鉱石の塊を目指してダンジョンを進む、ローグライクを格闘システムで再構成した一種のアクションRPGです。最終段の「ウダンズダンジョン」は全30層で、マップがランダム生成される唯一のダンジョンでした。音楽には光田康典、伊藤賢治、笹井隆司、下村陽子、濱渦正志という顔ぶれが並んでいます。
当時、話題の中心は「もう1枚のディスク」だった
当時の受け止め方を書くうえで、避けて通れない事実があります。初回版のパッケージには本編のほかに、もう1枚のディスク「SQUARE'S PREVIEW」が入っていました。中身は、翌1997年に発売予定だった『ファイナルファンタジーVII』の体験版です。
結果として、1996年夏の話題はそちらへ大きく傾きました。ファミ通の「今日は何の日?」も、本作を「『ファイナルファンタジーVII』の体験版が封入されていることでも話題を集めました」「『ファイナルファンタジーVII』人気で肝心の本編は忘れられがち」と書いています。英語版Wikipediaも、続編『トバル2』が北米で発売されなかった理由としてスクウェア側が売上不振を挙げ、購入者の多くは同梱の『FFVII』体験版が目当てだったと見られている、と記述しています。
とはいえ本編が黙殺されたわけではありません。英語版Wikipediaは本作の評価をおおむね好意的、日本では商業的に好調で北米ではカルト的なヒットだったとまとめています。日本語版Wikipediaは世界累計販売本数を92万本(出典はVGChartz)としています。付随する紙の記録も残っていて、サウンドトラック『TOBAL No.1 Original Sound Track』は1996年8月21日発売、集英社のVジャンプブックスからは攻略本が同年9月3日と10月1日の2冊出ています。
この「SQUARE'S PREVIEW」という付録の形式自体も、ここから続いていきました。『ファイナルファンタジータクティクス』に2、『ブレイヴフェンサー 武蔵伝』に3、『サガ フロンティア2』に4、『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』に5——いずれも初回版のみの特典で、のちの廉価版には付きません。体験版という宣伝手段の型が、1996年8月2日のこの箱から始まっているわけです。
30年後の今日、まだ移植されていない
動きを見ておきたい方へ。上に置いたのは、YouTube動画「【プレイ動画】トバルNo.1 (PS) [ ゲーム紹介用 短縮20分版 ]」です。上段・中段・下段の3ボタンと「つかみ」が実際にどう見えるか、20分ほどで掴めます。
その後の足取りを並べておきます。続編『トバル2』は1997年に発売。システムはここでさらに練り直され、『エアガイツ』『バウンサー』へと形を変えながら受け継がれていきました。本作自体は2007年1月25日に廉価版「レジェンダリーヒッツ」として再発売されていますが、こちらはディスク1枚で、『FFVII』体験版は付いていません。同じ2007年12月12日には、携帯電話向けの『トバルM』も配信されています。
現在との接点をもう一つ。2023年、スクウェア・エニックスの社長に就任した桐生隆司氏は、就任会見で思い出のタイトルを問われて本作の名を挙げ、「アクションゲームの名作だと思っています」「“スクウェアがこんなゲームを作れるんだ”と非常に印象に残っています」と答えています。
それでも、2026年8月2日の今日にいたるまで、『トバルNo.1』を現行機で遊ぶ手段はありません。ファミ通の30周年記事も「パッケージ版を手に取るしかないのが現状」と書いています。30年という区切りの年に、まだ動きがない——という事実のほうを、今日は書き留めておきます。
年号を一度、はっきり書いておきます
1996年8月2日。平成8年の夏。スクウェアがPlayStationに置いた最初の一枚は、RPGではなく格闘ゲームで、その箱にはまだ発売されていない『ファイナルファンタジーVII』が半分だけ入っていました。年号を書かないと、この記事は終わった気がしません。今日でちょうど30年です。
あなたにも、本編より「おまけ」のほうを先に起動してしまったソフトはありますか。そしてそのあと、本編はちゃんと遊びましたか。
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