BLOG · 2026-09-03

メタルギア ソリッド(1998) — 隠れて進むゲームが、コントローラーの差込口まで芝居に使った

今日は発売日 #46 — 1998年9月3日、プレイステーションで発売

1998年9月3日、「見つからないこと」が目的のゲームが並んだ

こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第46回。今日の一本は、敵を倒すことより「見つからないこと」を先に置いたアクションゲームです。『メタルギア ソリッド』のゲーム画面『METAL GEAR SOLID - Master Collection Version』のスクリーンショット(Steamストアページ / KONAMI)

『メタルギア ソリッド』。1998年9月3日、コナミからプレイステーション用として発売されました。価格は5,800円(税抜)、型番はSLPM-86114です。

北米は同年10月、欧州は翌1999年2月に出ています。シリーズとしては、1987年のMSX2版『メタルギア』から数えて3作目でした。

監督・企画・脚本は小島秀夫。キャラクターデザインは新川洋司。開発はコナミコンピュータエンタテインメントジャパンです。

戦わずに抜ける。段ボール箱と無線と、動くカメラ

主人公はソリッド・スネーク。雪の降る北の孤島に、たった一人で潜入します。

やることは、まず見つからないこと。壁に張り付いて敵をやり過ごし、段ボール箱をかぶってその場をしのぐ。撃ち合いは、避けたほうが早く進めます。

シリーズで初めて、画面がポリゴンの立体になりました。カメラは場面ごとに角度を変え、映画のように切り替わっていきます。『メタルギア ソリッド』のゲーム画面『METAL GEAR SOLID - Master Collection Version』のスクリーンショット(Steamストアページ / KONAMI)

もう一つの主役が無線です。会話は声と文字で長く続き、物語も操作の説明も、その多くが無線から届きます。

開発チームは20人ほど。小島は、少人数のほうが目が届くと考えていました。人の動きはモーションキャプチャを使わず手で付け、地形とカメラの角度はレゴブロックで組んで確かめたと記録されています。

小島の言い方はこうです。「if the player isn't tricked into believing that the world is real, then there's no point in making the game」。世界が本物だと思わせられないなら、作る意味がない。

「コントローラーを2番目の差込口に差し替えてください」

この作品でいちばん語られる場面は、サイコ・マンティスという敵との戦いです。念力を使う相手として出てきます。

念力を見せるために、ゲームは画面の外へ手を伸ばしました。まず、差してあるメモリーカードを読み、プレイヤーが遊んだ別のゲームを言い当てる。次にデュアルショックを震わせ、念で物を動かしたように見せる。『メタルギア ソリッド』のゲーム画面『METAL GEAR SOLID - Master Collection Version』のスクリーンショット(Steamストアページ / KONAMI)

さらに「ブラックアウト」と言って画面を真っ暗にし、テレビの外部入力の表示を真似た「ヒデオ」の文字を出します。テレビが壊れたと思った人が、当時かなりいました。

そして勝つための方法が、コントローラーを2番目の差込口に差し替えることでした。ゲームの中の話ではありません。手を伸ばして、機械の側を変える。

この演出は2008年、「Most Innovative Use of a Video Game Controller」としてギネス世界記録に認定されています。無線の周波数がパッケージの裏に書かれている、という仕掛けもありました。

「まったく新しいジャンル」と呼ばれ、文化庁の芸術祭が優秀賞を出した

発売直後の反応は、「これは何のジャンルなのか」というところから始まりました。

英国の雑誌『Arcade』は、この作品が「brand new genre: the sneak-'em-up」——まったく新しいジャンル、忍び込みゲームを持ち込んだと書いています。『メタルギア ソリッド』のゲーム画面『METAL GEAR SOLID - Master Collection Version』のスクリーンショット(Steamストアページ / KONAMI)

IGN は「closer to perfection than any other game in PlayStation's action genre」、プレイステーションのアクションで他のどれよりも完璧に近いと評しました。

『PlayStation Official Magazine – UK』は「the best game ever made. Unputdownable and unforgettable」。『Computer and Video Games』は「大きな予算のアクション映画を遊んでいるようだ、しかもそれより良い」。米『Next Generation』は5点満点の5点です。

日本側で残っている記録で目を引くのは、1998年度(第2回)の文化庁メディア芸術祭です。デジタルアート(インタラクティブ)部門で、『メタルギアソリッド』は優秀賞を受けました。作者名の欄は「小島 秀夫(監督/企画/脚本)」。

同じ回の大賞は『ゼルダの伝説 時のオカリナ』でした。1998年という年を、この2本が並んで受け取ったことになります。

不満が無かったわけではありません。難しさが初心者には高い壁になる、同じ通路を何度も往復させられる、長い無線を早送りできない。このあたりは当時から言われていました。

売れ方は、はっきりしていました。2001年の初めまでに、世界で600万本を超えています。米『フォーチュン』誌が「20世紀最高のシナリオ」と書いたのも、この作品です。

28年後、1998年の版がそのまま並んでいる

2023年10月24日、コナミは『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』を発売しました。Nintendo Switch、PlayStation 5、Xbox Series X|S、そして Steam です。

中身は1987年の『メタルギア』、1990年の『メタルギア2 ソリッドスネーク』、そして1998年の『メタルギア ソリッド』。作り直しではなく、当時の版がそのまま入っています。この記事に貼ったスクリーンショットも、その版のものです。

ただし、機械に寄りかかった演出は、機械が変わると持ち運びにくい。先例があります。2000年に出たWindows版では、メモリーカードを読んでコントローラーを震わせるあの場面が、丸ごと外されました。プレイステーション専用の周辺機器を使う演出だったからです。

1998年の驚きは、1998年の箱と一緒にできていた。そう考えると、あの差込口の指示は、ずいぶん贅沢な一回きりの仕掛けだったことになります。

あなたが画面の前で声を出したのは、どの場面でしたか

隠れて進むという遊び方は、いまでは一つのジャンルとして棚に並んでいます。1998年には、まだ名前を付けるところからでした。

1998年9月3日。年号を書き留めておきます。2026年9月3日の今日で、ちょうど28年です。

段ボール箱と、2番目の差込口。どちらもゲームの中身より、外側の話でした。それが28年ぶんの語り草になっています。

あなたが画面の前で声を出したのは、どの場面でしたか。発売日まで覚えているものなら、なおうれしいです。

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