BLOG · 2026-09-04

スポア(2008) — 批評家の平均は84点、Amazonでは2,216件中2,016件が星1つ

今日は発売日 #47 — 2008年9月4日、オーストラリアで世界最初の発売

2008年9月4日、世界でいちばん早く箱が並んだのはオーストラリアだった

こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第47回。今日の一本は、細胞から宇宙までを1本に詰めこんだ、かなり変わったシミュレーションです。『SPORE』のゲーム画面『SPORE』のスクリーンショット(Steamストアページ / Electronic Arts)

『スポア』(SPORE)。開発はマクシス、発売はエレクトロニック・アーツ。対応はWindowsとMac OS Xでした。

発売日は地域で3日ずれています。オーストラリアが2008年9月4日、ヨーロッパが9月5日、北米が9月7日。つまり世界でいちばん早く店頭に並んだのは、2008年9月4日のオーストラリアでした。日本語版も同じ2008年9月に、エレクトロニック・アーツから出ています。

設計の中心にいたのはウィル・ライト。『シムシティ』や『ザ・シムズ』を作った人です。音楽にはブライアン・イーノとクリフ・マルティネスが関わっています。

評判は、きれいに二つに割れました。批評家の平均は84点。Amazonでは2,216件の評価のうち2,016件が星1つ。しかも星1つの理由は、ゲームの出来ではありませんでした。

細胞、生き物、部族、文明、宇宙。5つの段階が1本に入っていた

遊びは5つの段階に分かれていました。細胞、生き物、部族、文明、宇宙。水の中の小さな細胞から始まり、陸に上がり、群れを作り、国を作り、最後は星の間を移動します。

段階が変わると、遊び方そのものが変わります。1本のゲームの中で、ジャンルが5回入れ替わるような作りでした。『SPORE』のゲーム画面『SPORE』のスクリーンショット(Steamストアページ / Electronic Arts)

そして本当の目玉は「作る」ほうにありました。自分で組み立てた生き物や乗り物や建物が、そのままゲームの中で動き出す。手足の位置を変えれば歩き方まで変わります。

さらに、自分の作ったものが他の人の宇宙に流れていき、他の人の作ったものが自分の宇宙に現れます。共有の仕組みはSporepediaと呼ばれました。

集まった数が桁違いでした。2009年5月までに、1億点を超える作品が共有されています。

「すごい製品ではある。ただ、すごいゲームとまでは言えない」

批評の受けは、数字だけ見ればよかったです。Metacriticのメタスコアは84点。75媒体のレビューを集めた平均です。

内訳も高い。IGNオーストラリアが9.2点、Eurogamerが9点、PC Gamer UKが91%、GameSpyが4.5/5、GameSpotが8.0点、1UP.comがB+。『SPORE』のゲーム画面『SPORE』のスクリーンショット(Steamストアページ / Electronic Arts)

ただ、褒め方が独特でした。PC Gamer UKはこう書いています。「Spore's triumph is painfully ironic. By setting out to instill a sense of wonderment at creation and the majesty of the universe, it's shown us that it's actually a lot more interesting to sit here at our computers and explore the contents of each other's brains.」

宇宙の壮大さに驚かせようとした結果、いちばん面白かったのは他人の頭の中をのぞくことだった、という褒め方です。褒めているのは、遊びより仕組みのほうでした。

GameSpyも「a technological triumph that introduces a whole new way of tapping into a bottomless well of content」。技術と、コンテンツの供給の仕方を評価しています。

そして同じレビューの中に、はっきりした留保が置かれていました。GameSpotは「a legitimately great game that will deliver hours of quality entertainment」と書いた上で、「Individual gameplay elements are extremely simple」と指摘しています。

Eurogamerは9点をつけながら「for all their mighty purpose, the first four phases of the game don't always play brilliantly, and they're too fleeting」。5段階のうち前半4つは、志は大きいが遊びとして短くて薄い、と。

いちばん短くまとめたのはIGNでした。「while Spore is an amazing product, it's just not quite an amazing game」。ニューヨーク・タイムズも「most of the basic core play dynamics in Spore are unfortunately rather thin」と書いています。

84点という平均は、この「製品としては驚異、ゲームとしては薄い」を平らにならした数字だったわけです。

発売から10日、Amazonの評価2,216件のうち2,016件が星1つ

買った人の側の記録は、別の場所に残りました。Amazonのレビュー欄です。

2008年9月14日の時点で、付いた評価2,216件のうち2,016件が星1つでした。9割です。『SPORE』のゲーム画面『SPORE』のスクリーンショット(Steamストアページ / Electronic Arts)

積み上がる速さも残っています。9月10日のThe Registerの記事では1,797件中1,662件。4日で400件以上増えたことになります。

理由はゲームの出来ではありませんでした。SecuROMというコピー防止の仕組みで、インストール後の認証が3回までに制限されていた点です。しかもアンインストールしても回数は戻りません。

パソコンが壊れたら。買い替えたら。何年か経ってもう一度遊びたくなったら。そこで止まる、という話でした。The Registerも「Mostly, this isn't about the quality of the game」と書いています。

EAは反論しました。2008年9月12日、広報のMariam Sughayer氏のコメントです。「EA has not changed our basic DRM copy protection system. We simply changed the copy protection method from using the physical media, which requires authentication every time you play the game by requiring a disc in the drive, to one which uses a one-time online authentication.」

ディスクを毎回入れる方式を、一度きりのオンライン認証に替えただけだ、という説明です。スパイウェアだという報道は「absolutely false」だとも述べました。

数字も添えられました。無料の体験版「Creature Creator」の認証453,048件のうち、77%は1台だけ、23%は複数台、3台を超えて認証しようとしたのは1%だけ。平均的な人は困っていない、という主張です。

それでも訴訟になりました。9月22日、SecuROMの存在が説明されておらず、アンインストール後も残る点を問題とする集団訴訟。10月14日には、無料の体験版に入っていたDRMについても訴えが出ています。

そして、ここが今日いちばん書き留めておきたい一行です。The Registerによると、コピー防止の仕組みは、オーストラリアでの発売のおよそ1日後に破られていました。

つまり2008年9月4日から24時間ほどで、破る側は制限の外に出ていた。3回という上限の中に残っていたのは、正規に買った人だけだったのです。

18年後、残っているのは84点でも星1つでもない

売れてはいました。EAの発表では、発売から3週間で200万本。イギリスではELSPAのシルバー賞、10万本以上に相当する記録も残っています。

つまり「買った人がたくさんいて、そのうちの多くが星1つを付けた」という、少し珍しい形の記録なのです。

上に貼ったのは、発売前にEAが公開した告知映像「Spore Launch Date Teaser」です。あの騒ぎが起きる前の、静かな一本です。

そして2008年9月4日から2026年9月4日で、ちょうど18年になります。18年経って残っているのは、84点という平均でも、9割という星1つの比率でもありません。残ったのは「レビュー欄が、作品の採点ではなく売り方への抗議に使われた」という前例のほうでした。

あなたが「中身とは別の理由」で怒ったゲームは、ありますか

レビュー欄は、作品の点数を置く場所として作られたはずのものでした。2008年9月、そこに置かれたのは点数ではなく抗議でした。

2008年9月4日。年号を書き留めておきます。2026年9月4日の今日で、ちょうど18年です。

細胞から宇宙まで作れるゲームが、いちばん激しく議論されたのは、インストール回数の話でした。中身のいちばん外側にあった仕組みが、その年の話題を全部持っていったわけです。

あなたが「中身とは別の理由」で怒ったゲームは、ありますか。発売日まで覚えているものなら、なおうれしいです。

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