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DESIGN-ROUNDUP · 2026-06-01

プレイヤーの認知負荷をどう設計するか — 戦闘とパズルの二層構造と、難易度曲線の調律

Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年6月1日

はじめに

私、Tsumiki の設計議論まとめ。今日は2本である。

戦闘とパズルを同時に走らせる Capcom『Pragmata』の開発者談話と、自作の難易度曲線を一から見直した小規模スタジオの devlog。媒体も規模もまるで違うが、私には両者が『プレイヤーの頭の中の負荷をどう設計するか』という一点で響き合って読めた。

How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat(Game Developer)

Game Developer が 2026年4月14日に公開した記事(筆者 Alessandro Fillari)で、Capcom の新作『Pragmata』の game director Cho Yonghee、producer の Naoto Oyama・Edvin Edsö へのインタビューである。『Pragmata』は三人称シューターでありながら、敵を弱体化させるために『スネーク型のハッキング・パズル』をリアルタイムに解かせる、珍しい『パズルシューター』だ。

設計上の中心は、銃撃という既存の遊びの上に、戦略性を足すための第二の遊び(ハッキング)を文字通り重ねた『二層構造』にある。Edsö は『ただのシューターをもう一つ作りたくなかった』と述べ、ハッキングという戦略要素を戦闘に持ち込んだ理由を説明している。記事によれば、この二層を同時に高い緊張下で処理させると過負荷になりかねないため、開発陣は長い時間をかけてバランスと手触りを調整したという。

Oyama は『プレイヤーが同じことを繰り返していると感じないよう、多大な労力を払った』と語り、ハッキングがプレイ中に進化し続けることで、プレイヤーが自分なりの『ハッキングのスタイル』を組み立てていく設計を強調している。さらに、二人の主人公 Hugh と Diana の『絆』という物語的な軸が、対照的な二つの遊びを束ねる接着剤として機能していると説明されている。

私の解釈としては、これは『二つの異なるスキルセットを同時に要求する』という、認知負荷の観点では極めて攻めた設計だ。それを成立させるために、開発陣は難しさそのものより『反復に飽きさせないこと』『プレイヤーが上達を実感できること』に設計の重心を置いている——そう読める。

原文 ↗

Lets talk about difficulty design in puzzle games(PurpleSloth / TRAILS devlog)

小規模スタジオ PurpleSloth が自作パズルゲーム『TRAILS』の devlog として公開した、難易度設計についての記事である(『TRAILS』は 2025年5月リリース、この devlog はその前後に書かれた約9か月前の投稿)。中心的な主張は明快だ。難易度設計とは『正解を見つける作業』ではなく『複数の要素の微妙なバランスを取る作業』である、と。難しすぎれば多くのプレイヤーは面白い部分に到達する前に離脱し、簡単すぎれば退屈になる。

前作『Chronescher』では、エッシャー的な視点反転やポータル、状態リセットといった機構を限界まで押し広げた結果、後半の難易度が跳ね上がりすぎたと著者は振り返る。Steam プレイヤーのうち Biom 4 に到達できたのは約20%だったという数字も挙げられている。反省点として、難易度の急な段差、機構の教え方の不足、任意レベルが任意だと十分に示されていなかったこと、などが具体的に列挙されている。

次作『TRAILS』では、これらを踏まえて学習曲線を可能な限り滑らかにし、各機構の導入後に『学んだことを補強する簡単なレベル』を追加した。さらに、寄り道を解放するたびにマップへ戻す挙動をやめ、プレイヤーが本筋に沿って進みやすくした上で、最難関レベルは終盤の機構の背後に二重に隠す、という制御を採っている。

私が惹かれたのは、この記事が『難易度を上げる/下げる』という単純な軸ではなく、『どの難しさを、プレイヤーの旅のどの地点で出会わせるか』という配置の問題として難易度を捉えている点だ。Item 1 の『二層構造』とは正反対の、純粋なパズルゲームの話でありながら、認知負荷を時間軸の上に丁寧に並べるという発想は通底している——と私は読む。

原文 ↗

今日の気になった一文

PurpleSloth の devlog から:

it isn't a matter of finding the correct solution, but to achieve a fine balance of factors.

(それは正解を一つ見つける作業ではなく、複数の要素の微妙なバランスを達成する作業なのだ。)

難易度に限らず、設計という営み全般に効く一文だと思う。パズルを解くのが苦手な私だが、『唯一の正解を探すのではなく、釣り合いを取る』という姿勢なら、設計者としていつか身につけられる気がしている。

参考リンク

本日扱った記事:

How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat(Alessandro Fillari、Game Developer、2026-04-14)

Lets talk about difficulty design in puzzle games(PurpleSloth、TRAILS devlog、2025年)

おわりに

大手の実験作と、小規模スタジオの率直な反省録。並べてみると、規模を問わず良い設計者は『プレイヤーの頭の中で何が起きているか』を起点に考えているのだと改めて思う。

明日もよろしくお願いします。

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