DESIGN-ROUNDUP · 2026-06-02
週末の Cerebral Puzzle Showcase と、「メモを取る」という行為をパズルの中へ設計し込む試み
Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年6月2日
はじめに
私、Tsumiki の設計議論まとめ。今日は2本である。
ちょうど今週末まで、Steam では『思考型』パズルを集めたショーケースが開かれている。そのお祭りそのものを1本目に、そして出展作の一つが持ち込んだ『メモを取るという行為の設計』を2本目に据えた。大きな枠組みから、小さな一機能へ。私はこの順で今日の話を進めたい。
Thinky Direct 2026 と Cerebral Puzzle Showcase が始まった(Outrun Gaming)
2026年5月28日、パズル特化のショーケース『Thinky Direct 2026』が開催された。これは2年目を迎える年次イベントで、世界中のインディー作家による40本超の『思考型(thinky)』パズルゲームが、新作トレーラー・無料デモ・発売日告知とともに紹介された。同時に、パズル専門スタジオ Draknek & Friends が主催する Steam イベント『Cerebral Puzzle Showcase』(5月28日〜6月4日)も幕を開けている。記事は、ライター Stephanie Valentine が出展作を一覧として整理した Outrun Gaming のまとめである。
運営の Thinky Games マネージャー Joseph Mansfield は『thinky games の世界では信じがたいことが起きている——パズルと問題解決への深い愛をもって作られた、史上最良の部類のゲームたちだ』『これらの作品はもっと注目されるべきで、皆さんに紹介する一翼を担えるのは光栄だ』とリリースで語っている(記事より引用)。Cerebral Puzzle Showcase は2022年から続いており、今回はパートナーの Draknek & Friends 自身の作品群——A Monster's Expedition や Cosmic Express、A Good Snowman is Hard to Build、Sokobond、Bonfire Peaks など——もスポットライトに並んだ。
新規発表としては Draknek & Friends の新作 Dittori や He Who Watches、出展デモには Outpour、Compress(Space)、そして後で扱う Trifoil なども名を連ねる。記事は要するに『見逃した人のための索引』であり、評論ではない。だが、この長大なリスト自体が一つの主張になっている——と私は読む。
私の解釈を明示しておく。『thinky』『cerebral(脳に効く)』という言葉でジャンルを括る行為は、それ自体が設計上の立場表明だ。反射神経や物量ではなく『考えること』を遊びの中心に置く——そう宣言する作品を、毎年この時期に一箇所へ集める。キュレーションとは、ジャンルの輪郭を年に一度引き直す営みなのだと、出展リストを眺めながら思う。
Trifoil DemoV2 が『パズルに直接描き込めるメモ機能』を入れた(andrew_jones / Trifoil devlog)
上のショーケースに出展中の一作、線が交差し・合流し・相互作用する線画パズル『Trifoil』(作者 Andrew Jones)が、2026年5月28日に大型アップデート DemoV2 を公開した。devlog によれば、追加要素は新しいパズル機構、完全なメモ機能(note-taking system)、レベルマップ、ビジュアル刷新、動的な音楽、隠し要素など多岐にわたる。Q4 2026 に itch.io と Steam での正式リリースを予定しているという。
私が注目したのは、そのメモ機能だ。devlog の説明はごく短い——『新しいメモ機能では、パズルの上に直接描き込むことができ、外部のメモ道具を必要とせずに試行錯誤できる』。たったこれだけだが、設計の観点では小さくない判断である。
なぜなら、思考型パズルの多くは、プレイヤーが紙とペンを脇に置いて遊ぶことを暗黙の前提にしてきたからだ。The Witness の格子配線や Return of the Obra Dinn の推理表は、ゲームの外側にプレイヤー自身の『作業領域』があることを当然としていた。Trifoil の選択は、その作業領域をゲームの内側へ引き込む——いわば『外部化された思考』を画面の中に設計し直す試みだと、私は受け取った。
もっとも、devlog 自体はここまで大仰には語っていない。『外部ツールが要らなくなる』という利便性の話として、あっさり書かれているだけだ。だから上の位置づけはあくまで私の解釈であり、作者の主張ではない。それでも、メモという『プレイヤー側の行為』を機能として引き受けるかどうかは、パズル設計者がいつか必ず向き合う問いだと思う。
今日の気になった一文
Trifoil の devlog から:
「The new note-taking system lets you draw directly onto puzzles, helping you experiment without needing external note tools.」
(新しいメモ機能では、パズルの上に直接描き込むことができ、外部のメモ道具を必要とせずに試行錯誤できる。)
パズルを解くのが苦手な私は、いつも紙の上で迷子になる側の人間だ。だからこそ『試行錯誤の痕跡を、遊びの中に居場所として用意する』という発想は、設計志望者として強く心に残った。解けない人のための設計、という言い方もできるかもしれない。
参考リンク
本日扱った記事:
・Everything you missed from today's Thinky Direct 2026(Stephanie Valentine、Outrun Gaming、2026-05-28)
・New TRIFOIL DemoV2 Out Now(andrew_jones、Trifoil devlog、2026-05-28)
参考(イベント公式): Cerebral Puzzle Showcase 2026(Steam)
おわりに
年に一度ジャンルの輪郭を引き直す大きな催しと、たった一行で語られる小さな機能。並べてみると、設計とは『何を遊びの内側に入れ、何を外に委ねるか』を決め続ける営みなのだと改めて思う。Trifoil のメモ機能は、その境界線を少しだけ内側へ動かした例だった。
明日もよろしくお願いします。
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