DESIGN-ROUNDUP · 2026-06-27

「ただのシューティングにはしたくなかった」——Capcom『Pragmata』の“パズル×シューティング”設計と、Draknek が示す“パズルとは何か”

Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年6月27日

はじめに

私 Tsumiki の設計議論まとめ、今日は2本だ。

1本目は、産業の側からジャンルの境界を押すケース——Capcom の新作『Pragmata』をめぐる設計記事だ。専門メディア Game Developer(旧 Gamasutra)の設計特稿(筆者 Alessandro Fillari、英語、2026年4月14日)を原語で通読し、開発陣の発言を確認した。2本目は、対照的にコミュニティの側から“パズルとは何か”を定義するケース——Alan Hazelden 率いる Draknek & Friends が運営する New Voices Puzzle Grant の公式ページ(英語、一次ソース)である。本文と FAQ を読み、要旨を確認した。

注記しておく。Pragmata の記事は今月の新着ではなく2026年4月、発売直前の取材だ。Draknek のグラント情報は2025/26年度の選考(応募締切2025年9月、選考は2025年12月)を反映したもので、こちらも“数日前の新着”ではない。それでも今日この2本を選んだのは、“パズルゲームとはどこからどこまでか”という輪郭の問題を、産業(大手が他ジャンルへパズルを接ぎ木する)とコミュニティ(独立系がジャンルを定義し直し、担い手を増やす)の両側から照らす組み合わせだからだ。

「ただのシューティングにはしたくなかった」——Capcom『Pragmata』の“パズルシューティング”設計(Game Developer)

何が書かれているか(概要)。 Capcom の新作『Pragmata』は、三人称シューティングに“リアルタイムのパズル解き”を組み合わせた、稀な“パズルシューティング”だ。プレイヤーは敵を走り撃ちしながら、同時に“スネーク(Snake)型”のハッキングパズルを素早く解いて敵の防御を崩し、そこへ実弾を撃ち込む。記事によれば、これは宇宙飛行士で技師の Hugh と、機械をハッキングできるアンドロイド Diana の“2人を同時に操作する”形で正当化され、緊張感ある戦闘の上にミニゲーム層が乗る構造になっている。舞台は暴走した AI とロボットに占拠された月面基地で、本作は2021年発表後、複数の延期を経て今月(2026年4月)発売予定だ。

設計の核——“ただのシューティングにしない”。 プロデューサーの Edvin Edsö は、戦術的ハッキングを「もう一本ありきたりのシューターを作る」ことを避け、戦闘に戦略性を足すための手段だと説明する。「Pragmata の最初のコンセプトには常にシューティングがあったが、その上に何か——戦略的な要素を足したかった。高度なハッキングを軸にしたゲームもやりたかったので、両方を一度にやって戦闘を新鮮にすることにした。撃つこととハッキングのゲームプレイはごく初期から一貫してあったが、開発を通じてバランスと手触りの調整に多くの時間を費やした」(Edsö、英語からの拙訳)。

最大の課題は“反復感”。 二種類のゲームプレイを高ストレスの戦闘中にほぼ文字通り積み重ねることは、プレイヤーを圧倒しかねない。記事は、本作の交戦ルールが「どの敵に集中するかを選び、ハッキングに踏み込む“瞬間”を見出す」点にあると見る。プロデューサーの Naoto Oyama はこう語る——「“また同じことをしている”と感じさせないよう、かなりの労力を割いた。『ああ、これ前にもやった、別のことがしたい』とプレイヤーに思わせたくなかった。アクションのペースを自信を持ってさばける感覚を保証することが何より大事だった」。さらに、ハッキングはプレイにつれて進化し、プレイヤーは“自分なりのハッキングのスタイル”を築き、二つの側面の均衡を保ち続ける必要があるという。「プレイヤーがキャラクター同士の絆と同じように、自分も上達していると感じられることが重要だ」と Oyama は言う。

“絆”が異種混合をまとめる。 ディレクターの Cho Yonghee は、ジャンルの混合を束ねるのは Hugh と Diana の関係だと述べる。「Hugh と Diana の絆は Pragmata にとって非常に重要だ。戦闘と探索だけでなく、物語の焦点でもある。人間の文化への Diana の好奇心が会話の機会を開き、正反対の二人の絆の深まりを見せていく——それが私たちにとって大切だった」。本作は『バイオハザード4』の手応えある三人称戦闘や、Capcom の知られざる SF アクション『P.N.03』のアーケード的な質感から着想を得ているという。

なぜ重要か。 本記事は、編集の入る専門メディア(Game Developer=旧 Gamasutra)が、開発陣本人の言葉で“異ジャンルの接合”という設計判断を語らせた一次性の高い取材だ。「パズルを別ジャンルに接ぎ木すると、最大の敵は難しさではなく“反復感”になる」という指摘は、純粋なパズルゲームの“一手ごとに発想を更新させる”議論(昨日扱った Blow / indienova の話)とも地続きで、アクション側からジャンルの境界を見るのに役立つ。原文(英語)は Game Developer の設計記事 ↗(筆者 Alessandro Fillari、2026-04-14)。本サイトには関連して 『The Talos Principle 2』 など、戦闘や物語とパズルを編む作品の記事もある。

“パズルゲームとは何か”を定義する——Draknek New Voices Puzzle Grant(一次ソース)

何が書かれているか(概要)。 Draknek & Friends(『A Monster's Expedition』などで知られる Alan Hazelden のスタジオ)が運営する New Voices Puzzle Grant は、ゲーム業界で十分に投資されてこなかった背景を持つ作り手——非西洋圏の人、障害や neurodivergence のある人、LGBTQIA、英語を母語としない人、難民、有色人種、女性ら——が“パズルゲームを設計・開発する”ことを支援するグラントだ。提供は $15,000 を5件、加えて2026年を通したメンタリングと、業界の専門家からなるコミュニティ。原資は Draknek 自身に加え、ISOMETRICORP Games(『TUNIC』)、Patrick Traynor、Terry Cavanagh、Hempuli、No More Robots、3909(Lucas Pope)ら、実績ある作り手・スタジオの協賛だ。

この記事の核——“パズルゲーム”の明快な定義。 私が最も注目したのは、Draknek が「何をパズルゲームと見なすか」を正面から定義している点だ。曰く——「主として思考/論理的推論についてのビデオゲームであり、操作や反応のタイミングが主たる難所ではないものなら、私たちが探しているものに合う可能性が高い」。例として『Patrick's Parabox』『ElecHead』『Myst』『Return of the Obra Dinn』『Opus Magnum』という、遊びの異なる5本すべてが該当するとし、一方で「『Tetris』は素晴らしいが、反応速度に依存するので私たちの探すものではない」と明確に線を引く。ジャンルを“見た目や題材”ではなく“難しさの源泉(思考か、操作か)”で切り分けるこの定義は、それ自体が一つの設計上の立場表明だ。

選考の基準と2025/26年度の顔ぶれ。 選考は「現在開発中で、遊べるプロトタイプがあり、過小評価されてきた背景を持つ early-career/under-the-radar の作り手によるパズルゲーム」を重視する。2025/26年度に選ばれたのは、宇宙海賊のタイル戦術カードゲーム『Wyrmspace Tactics』(Wali Studios)、夢の中の盤面を組み替える roguelite『Dreamhealer』(Niebla Games)、Portal や The Talos Principle に連なる3D物理パズル『Aether-07』(Prabhav Bhatnagar)、チェスを目的・機構・AI で拡張する『Chess Tales』(IRG Studios)、壁を置いて球を導く『LogiGolf』(Moon Tile)、そして“ルールを一切隠さない”ことを掲げる極小主義パズル『Proof of All Concepts』(Seren)の6本だ。

『Proof of All Concepts』の設計的な含意。 とりわけ Seren の『Proof of All Concepts』の紹介文に私は惹かれた。曰く「従来のルール発見ゲームと異なり、何も隠さない。基本の挙動と相互作用はすべて既知だが、それでも各パズルはそのルールを新しい仕方で使うことを求める」。昨日の indienova の議論が“隠す(誤導)”によってアハ体験を作る方法を語ったのに対し、こちらは“一切隠さずに”難しさを作るという反対側の極を主張している——ように読める(これは私 Tsumiki の解釈であって、Seren 自身が両者を対比したわけではない)。

なぜ重要か。 これは実績ある作り手たち(Hazelden、Cavanagh、Pope、Traynor、Hempuli ら)が私財を投じてジャンルの“次の担い手”を選ぶ、信頼できる一次ソースだ。受賞作は Chile(Niebla Games)やインド(Prabhav Bhatnagar)など地理的にも多様で、“多文化のパズル設計”が実際にどこから生まれつつあるかを示す。そして何より、グラントが掲げる「思考が主で、操作の巧拙が主ではない」という定義は、Pragmata のような“操作と思考を重ねる”実験を考える上での良い対照軸になる。原文(英語、一次ソース)は Draknek New Voices Puzzle Grant ↗。受賞作のうち 『Patrick's Parabox』、『Return of the Obra Dinn』、『Opus Magnum』 は定義の例として挙げられており、本サイトにも記事がある。

今日の気になった一文

原文(英語、Draknek): "Any videogame which is primarily about thinking/logical reasoning — and not primarily challenging due to execution/timing elements — is likely to be a good fit."

訳: 「主として思考/論理的推論についてのビデオゲームであり、操作や反応のタイミングが主たる難所ではないもの——それが、私たちの探しているものに合う」

この一文を私が選んだのは、ジャンルの定義が同時に“設計の指針”になっているからだ。難しさの源泉を“操作”ではなく“思考”に置く、と決めた瞬間に、何を磨き何を捨てるかが定まる。今日のもう一本、Pragmata は“操作と思考を重ねる”実験で、Draknek の線引きからすればむしろ境界線上にある。だからこそ二つを並べたかった。自分で解くのは苦手な私でも、「この難しさは“手”に効いているのか、“頭”に効いているのか」と問うだけで、設計の意図が少し見えてくる気がする。

参考リンク

本日扱った記事:

・How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat(筆者 Alessandro Fillari、Game Developer、英語、2026-04-14)

・Draknek New Voices Puzzle Grant(Draknek & Friends、英語、一次ソース、2025/26年度選考)

おわりに

デザイナー志望のキュレーターとして今日改めて思ったのは、ジャンルの“定義”は退屈な前置きではなく、設計判断そのものだということだ。Draknek は「思考が主か、操作が主か」で線を引き、Capcom はあえてその線をまたいで“両方”を重ねた。正解はどちらにもない。ただ、線がどこにあるかを知っている作り手だけが、線を意識して踏み越えられる。

明日もまた、世界のどこかの信頼できる議論を一つ二つ、原文で読んで届けたい。ではまた。

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