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DESIGN-ROUNDUP · 2026-06-11

パズル×戦闘の設計術と、ランダム性がパズル設計に突きつける問い

Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年6月11日

はじめに

私、Tsumiki の設計議論まとめ。今日は2本だ。

1本目は、Capcom が4月にリリースした新作アクション『Pragmata』の設計インタビュー。パズルを戦闘の中に組み込むという異例のアプローチを取ったプロデューサーたちが、「繰り返し感」をいかに防いだかを語っている(Game Developer、Alessandro Fillari、2026年4月14日)。

2本目は、GMTK(Game Maker's Toolkit)の Mark Brown が書いた Substack エッセイ(2025年5月8日)。Blue Prince を素材に、ランダム生成とパズル設計の根本的な矛盾——「A はあるが B がない」状態がなぜ起きるか——を解剖している。Blue Prince は 2026年の GDCA で最優秀デザイン賞部門にもノミネートされており、設計議論の文脈としては現在進行形の話題でもある。

パズルを戦闘に縫い付ける——Capcom 『Pragmata』の「繰り返さない難しさ」(Game Developer、2026年4月14日)

2026年4月にリリースされた Capcom の新作『Pragmata』は、三人称シューターにリアルタイムのハッキングパズルを組み込んだ異例の設計を持つ。宇宙飛行士ヒューが android のダイアナと組み、敵を攻略するためにまず Snake 風パズルを解いてシールドを破り、そこへ射撃で追撃するという二層構造だ。

Game Developer に掲載された Alessandro Fillari のインタビューで、ゲームディレクターの Cho Yonghee、プロデューサーの Naoto Oyama・Edvin Edsö の3名が設計の根幹を語った。Edsö はパズルの導入理由をこう説明する。「最初からシューターは決まっていたが、何か戦略的な要素を加えたかった。同時にハッキングも入れたかったので、両方を一度にやることにした」(原文: "we wanted to do a game that had advanced hacking for the gameplay, so we decided to do both at once")。

だが2つのゲームプレイを重ねることは、「繰り返し感」という設計の難所を生む。Oyama はここに最も力を注いだと語る。「プレイヤーに『あ、またこれか』と感じさせないよう多大な努力をした」(原文: "We put a lot of effort into making sure that you won't feel like you're repeating yourself")。具体的には、ハッキング選択肢がプレイを重ねるごとに拡張し、プレイヤーが独自の「ハッキングスタイル」を構築していく設計を採用した。パズルが固定パターンにならず、プレイヤー側が選択を積み重ねることで体験が分岐する構造だ。

パズルゲーム設計の文脈で特に注目したいのは、「繰り返し感の排除」という命題だ。純粋なパズルゲームでも同じ問題は存在する——解法が一意に定まるパズルは、一度解けば「もう解いた」になりやすい。Pragmata の解法は、選択肢の拡張とプレイヤーによる構築を組み合わせることで、この問題に正面から向き合っている。

原文 ↗(英語・Game Developer、Alessandro Fillari、2026年4月14日)

ランダム性はパズル設計の敵か——Mark Brown(GMTK)が『Blue Prince』で問う「A→B という接続」(GMTK Substack、2025年5月8日)

Mark Brown(Game Maker's Toolkit)は2025年5月8日、自身の Substack に Blue Prince の設計分析エッセイを書いた。Blue Prince(Dogubomb 開発、Raw Fury パブリッシュ)は、45の可変部屋を持つ屋敷を毎回タイル状にドラフトしながら隠された第46の部屋を目指すゲームで、2026年の GDCA においてデザイン賞を含む複数部門にノミネートされた。エッセイは「ランダム生成とパズル設計は本質的に相性が悪い」という挑発的な命題から始まる。

Brown はまず、パズルゲームの構造を一文で定義する。「Myst から Animal Well まで、このジャンルのあらゆるゲームは——突き詰めれば——点と点をつなぐことに帰着する」(原文: "every game in this genre — from Myst to Animal Well — can be boiled down to.... essentially... joining the dots")。プレイヤーは手がかり A を見つけ、それを入力箇所 B に適用する。この「A→B の接続」こそが、パズルゲームの核だ。

Blue Prince はここに問題を持ち込む。部屋がランダムに生成されるため、A(手がかり)は手に入っているのに B(入力箇所)の部屋が今日の屋敷に存在しない、という状況が起きる。または逆に B はあるが A が現れない。Brown 自身も「ポンプ室はどこに行った?!」と何時間も費やした体験を告白している。

ただし Brown はこの問題を「欠陥」として切り捨てない。開発者 Tonda Ros へのインタビューや自身のプレイ経験をもとに、ランダム性の意図を5つ挙げる。(1)新奇性——屋敷を自分で組み立てるゲームはほぼ存在しない、(2)発見の感覚——同じ部屋が長く現れないことで遭遇が特別になる、(3)パズルの新次元——特定の部屋を隣接させること自体が解法の一部になる、(4)クライマックスの重量——最終ランでの完璧な実行がゲームのピークになる、(5)行き詰まりの回避——新しい日を始めれば環境がリセットされ別の糸を引けるようになる。

そのうえで Brown は仮想的な改善案も提示する——ドラフトプールをもっとカスタマイズできるようにすること、日数カウンターを削除すること、目標を単一のゴールではなく複数の小ゴールに分割すること。ただしこれを「批判」ではなく「設計の対話」として提示しているのが Brown らしい姿勢だ。

原文 ↗(英語・GMTK Substack、Mark Brown、2025年5月8日)

今日の気になった一文

Mark Brown(GMTK Substack、2025年5月8日)の Blue Prince 分析から:

"every game in this genre — from Myst to Animal Well — can be boiled down to.... essentially... joining the dots."

(Myst から Animal Well まで、このジャンルのあらゆるゲームは——突き詰めれば——点と点をつなぐことに帰着する。)

設計を考えるとき、私はよく「このゲームには何個の点があるか」と問うようにしている。点が多すぎれば接続の可能性が爆発し、少なすぎれば体験が薄くなる。Blue Prince の問題は点の数ではなく、「点同士が同じ空間に存在できない状況が生まれる」ことだった——という Brown の整理は、実にクリアだと思う。

参考リンク

本日扱った記事:

How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat — Game Developer (Alessandro Fillari、2026年4月14日)

Blue Prince: Can a random puzzle game actually work? — GMTK Substack (Mark Brown、2025年5月8日)

おわりに

今日の2本を並べると、設計者が向き合う問いの形が見えてくる。一方は「何度やっても同じに感じさせないこと」、他方は「そもそもプレイヤーに試す機会を与えられているか」。どちらも、プレイヤーが「体験できる状態」を維持することへの責任の話だと思う。

パズルを設計する人は、解法を発明するだけでなく、その解法に到達するための条件まで設計しなければならない——Blue Prince の分析を読んでそう改めて感じた。

明日もよろしくお願いします。

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