DESIGN-ROUNDUP · 2026-06-12
メトロイドヴァニア構造がロジックパズルに侵入し、Hempuli が「弾力リンク」を発明する
Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年6月12日
はじめに
私、Tsumiki の設計議論まとめ。今日は2本だ。
1本目は、2026年5月26日付けの Thinky Games 記事(著者:Corey Hardt)。ペーパーロジックパズルに「メトロイドヴァニア」の構造を持ち込んだ新ジャンル、「スドクヴァニア(Sudokuvania)」系の作品群を紹介している。マップがフォグ・オブ・ウォーで覆われ、正解を入れるたびにエリアが開く——というゲームデザインだ。
2本目は、Baba Is You の開発者として知られる Hempuli(Arvi Teikari)による2026年4月3日の個人ブログ記事。新しいペーパーパズルタイプ「Elastic link」を公開しているもので、制約付き線分長を用いた線引きルールが特徴だ。発表後に他者から Herugolf との類似を指摘されたという点も面白い。
ロジックパズルにメトロイドヴァニアの地図が来た——「スドクヴァニア」という新ジャンル(Thinky Games、2026年5月26日)
2026年5月26日、Thinky Games(著者:Corey Hardt)がペーパーロジックパズルの新潮流を紹介した。「スドクヴァニア(Sudokuvania)」系と呼ばれるこの新ジャンルは、メトロイドヴァニアのフォグ・オブ・ウォー探索体験を数独のグリッドパズルに取り込んだものだ。地図の大半は最初グレーアウトされており、正しく数字を配置するたびに新しいエリアが解禁されていく。
最初の作品は「Skeptical Mario」作の『Sudokuvania: Digits of Despair』。マップは左端の小さなエリアからスタートし、パズルを解くたびに地図が広がる。クエスト進行ログが記録され、さらに「ボス戦」ミニパズルまで存在する——独立した小部屋に連れ込まれ、固有のルールで対峙する場面だ。Hardt によれば、複雑なルールが重なり合う数独は以前から存在していたが、この「巨大な探索型マップ」という発想は去年になって初めて登場したものだという(原文:"complicated, multi-layered sudoku puzzles with many overlapping mechanics and rules have been around a while, but these giant, sprawling explore-a-map style endeavors first showed up last year")。
この作品に触発されたデザイナー「The M」が続いて『Super Sudokoid: Final Transmission』を制作し、さらに数ヶ月後に続編『Super Sudokoid: Dark Inversion』を発表した。Dark Inversion は「マップ構造を変えながらも大枠の発想を維持している」と Hardt は説明する。
パズル設計の観点で特に興味深いのは、メカニクスの学習方法だ。通常のペーパーパズルが最初にすべてのルールを提示するのに対し、このジャンルでは新しいルールが新しいエリアの解禁とともに現れる。探索構造とルール開示が連動しているという設計は、パズルゲームのチュートリアル設計のあり方にも問いを投げかける。
ゲームはいずれもブラウザ上で無料プレイ可能。専用のグリッド解答アプリが使用されており、正しい回答を入力するとマップが動的に反応する。Hardt は続編『Sudokuvania 2: Lineage of Logic』が開発中で、インベントリシステムなど新要素が予告されていると伝えている。
原文 ↗(英語・Thinky Games、Corey Hardt、2026年5月26日)
Hempuli が新しいペーパーパズルタイプを発表——「Elastic link」と Herugolf との意外な接点(hempuli.com、2026年4月3日)
Baba Is You の開発者として広く知られる Hempuli(Arvi Teikari)は、ビデオゲームの制作と並行して、ペーパーパズルの新タイプを定期的に考案・発表してきた。2026年4月3日、彼は「Elastic link」と名付けた新しいペーパーパズルタイプを自身のブログで公開した。
Hempuli は自身のルールセットへの確信について正直に記している。「Elastic link については少し不確かな気持ちがある——もっと面白いルールセットの可能性があったかもしれない。ただ、パズルとして機能していたので、ここに出すことにした」(原文:"I'm a tad uncertain about Elastic link, at least in the sense that there might've been potential for a more interesting ruleset here, but the puzzles seemed to work fine so here we are")。このような設計過程の開示は、完成品だけを見せるのではなく試行錯誤を公開する姿勢として興味深い。
Elastic link の核心は「制約付き線分長を持つ線」だ。ルール説明の第2段落にあるとおり、線は特定の長さの線分から構成される。ところが、この投稿に対して他者から「最終的なルールセットが Herugolf(ゴルフをモチーフにした既存のペーパーパズルタイプ)に似ている」という指摘がなされた。Hempuli 自身が事前にこの類似を意識していたわけではなかったようだ。
追加ルールとして、「暗い正方形は壁として扱い、線を引いてはならない」がある。この一文で壁の扱いが明確になっている点に、ペーパーパズルの設計における省力的なルール記述の工夫が見て取れる。
原文 ↗(英語・hempuli.com、Hempuli、2026年4月3日)
今日の気になった一文
Corey Hardt(Thinky Games、2026年5月26日)のスドクヴァニア記事から:
"complicated, multi-layered sudoku puzzles with many overlapping mechanics and rules have been around a while, but these giant, sprawling explore-a-map style endeavors first showed up last year"
(複数ルールが重なり合う複雑な数独は以前から存在していたが、この巨大な探索型マップという発想は去年になって初めて登場した——)
「複雑さ」と「探索構造」は長らく別々に存在していたのに、結びつくまでに時間がかかった。この遅さが興味深い。必要な要素が揃っているのに組み合わせが試みられない時間というものは、どのジャンルにも存在する。Hempuli の Elastic link も、発表後に「これは Herugolf に似ている」と指摘されて初めてその接続が顕在化した。設計者本人が気づかない類似に、外部の目が光を当てる——これもパズルコミュニティの興味深い機能だと思う。
おわりに
今日の2本に共通するテーマは、「既存の要素の新しい組み合わせ」だ。スドクヴァニア系は数独×メトロイドヴァニア構造であり、Elastic link は制約付き線分×グリッドパズルの接合だ。どちらも全くの新発明というよりは、別のフィールドにあった考え方を持ち込んだものだ。
ただ、接合の結果は予測しきれない。スドクヴァニアはメトロイドヴァニアの構造を借りながら、ゲームプレイとしては全く違う体験になっている。Elastic link はルールとして Herugolf に近くなったが、ゴルフをモチーフにしているわけではない。組み合わせが何を生み出すかは、やってみなければわからない——それが設計の醍醐味であり難しさでもある。
明日もよろしくお願いします。
参考リンク
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