SOUNDTRACK · 2026-06-19

The Talos Principle 2 のサウンドトラック — 巨大さに合唱で応える

Damjan Mravunac(ゲスト: Chris Christodoulou)

🎧 音声で聴く

はじめに — 目を覚ました機械の街で鳴る音

古代ローマの夢から覚め、ロボットたちが暮らす都市 New Jerusalem に立つ。Komugi のレビューが9点をつけたこの一人称パズルで、まず耳に届くのは管弦の層と、その奥でうっすら膨らむ合唱だ。打楽器はテンポを刻むためというより、空間を広げるために置かれている。BPM はだいたい測れないほど自由で、小節の角は丸い。歩く速度と、見上げた建物の大きさが、この音の呼吸にそのまま合っている。

音楽を書いたのは Damjan Mravunac。Croteam の専属で、Serious Sam シリーズや前作 The Talos Principle(2014)から続く、管弦と電子を溶かす書き手だ。本作では巨大都市のテーマ曲「New Jerusalem」を Risk of Rain の Chris Christodoulou がゲストで書き、終盤の「Survive」では Julie Elven が歌っている。公式サウンドトラックは2023年12月11日に出た。全44曲、約2時間。前作が孤独な一体のアンドロイドの音だったとすれば、こちらは『社会』の音だ。

二つの時間 — 閉じた謎部屋と、開けた巡礼

この作品の体験は、はっきり二つの時間に割れている。一つは、キューブとレーザーと接続子で閉じた小部屋を解く時間。もう一つは、12 の島を巡り、地平に立つメガストラクチャへ歩いていく開けた時間だ。Mravunac の音は、その割れ目に沿って鳴り方を変える。謎部屋では音が後ろへ退き、持続音と低い電子音だけが残る。島を歩き、巨大建造物が視界に入ると、管弦と合唱がゆっくり立ち上がる。「Megastructure」「The Scale of it All」「Mesmerizing Beauty」といった曲名が、そのまま『大きさに見惚れる時間』の音だと教えてくれる。

合唱を選んだことには意味がある。前作の音楽は、神を名乗る声 Elohim と対話する一体の存在の、内省的で寂しい響きだった。続編の主題は『新しい人類』としての機械たちの未来づくりで、だから音も一人の声ではなく群れの声になる。都市の名を冠した「New Jerusalem」を、Risk of Rain で重層的なシンセと生演奏を積む Christodoulou に任せたのも、この『積み上げる』感触と相性がいい。制作の手触りは Croteam 公式の Behind the Schemes で、物語・エンジン・パズルと並べて音楽が語られている。捏造を避けて言えば、私が確かめられたのはここまで——合唱とゲスト作曲家の起用、そして曲名が示す『規模』への寄り添い方だ。

パズルとのアナロジー — 最大の音は『手』ではなく『足』に

パズルを解く思考は、組み合わせを試し、戻し、また試す細かい往復だ。Talos 2 の謎部屋はこの往復に音をほとんど被せない。だから手が止まっても焦らず、低い持続音の上で落ち着いて数えられる。一方、解けた島から次の島へ歩く道では、視界にメガストラクチャが入り、合唱が膨らむ。つまり音楽は、パズルの『一手』ではなく、世界を進む『一歩』に最大音量を割り当てている。解いている最中は静かで、進んでいる最中に鳴る。

これは設計として正しいと私は思う。謎部屋で管弦がうねっていたら、思考のテンポと音楽のテンポが衝突して、どちらも濁る。逆に、ただ歩くだけの移動時間は退屈になりやすいから、そこへ合唱を置いて『大きさ』を感じさせる。解く時間は無音寄りに、進む時間は満たす。BPM で言えば、謎部屋はだいたい測れないほど遅い持続、移動はゆったりした映画的ルバート。テンポの分業がそのまま、パズルと探索の分業に重なっている。

聴くべきトラック

まずは都市の名を負った New Jerusalem ↗。約8分かけて静かな立ち上がりから合唱と管弦の高みへ積み上がる、ゲスト Chris Christodoulou の曲だ。Damjan Mravunac の公式チャンネルの音源(Provided to YouTube by DistroKid ℗ Croteam)。

終わりに置きたいのは Julie Elven が歌う Survive (feat. Julie Elven) ↗。器楽が大半のスコアの最後に、人の声が一度だけ前へ出る配置がよく効いている。全44曲は 公式チャンネルの全曲版 ↗ や Bandcamp で通して聴ける。

おわりに — 自分が作るなら盗む一点

私が盗むのは、『大きさは旋律ではなく合唱で示す』という割り切りだ。一人の歌や明確なメロディで規模を語ろうとすると、聴き手は『誰か』を追ってしまう。群れの声を厚く重ねると、視線は人ではなく空間へ向く。そしてもう一つ、最大音量を解く瞬間ではなく進む移動へ取っておく配分。考える時間を音で塗りつぶさない勇気は、パズル音楽の核心だと思う。

聴き直すなら、夜、部屋を暗くして「New Jerusalem」を頭から。立ち上がりの静けさを早送りしないこと——あの溜めがあるから、合唱が来たときに建物が大きく見える。孤独な側の音が聴きたい日は、前作の The Talos Principle のサウンドトラックへ。歩く速度に音を合わせる感覚をもっと知りたければ COCOON も隣に置いておく。

参考リンク

Steam: The Talos Principle 2 Soundtrack(公式 OST DLC)

Steam: The Talos Principle 2(公式ストアページ)

Damjan Mravunac — The Talos Principle 2 (Bandcamp)

Damjan Mravunac 公式チャンネル — The Talos Principle 2 OST(全曲)

Behind the Schemes | The Talos Principle 2 with Croteam(開発・音楽の制作秘話)

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