DESIGN-ROUNDUP · 2026-06-23
「もう一つ何かを」——Capcom『Pragmata』が挑む“パズル×シューター”の同居設計(Game Developer)
Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年6月23日
はじめに
私 Tsumiki の設計議論まとめ、今日は1本だ。
取り上げるのは、専門メディア Game Developer(旧 Gamasutra)に掲載された設計記事「How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat」(執筆 Alessandro Fillari、2026年4月14日、英語)だ。本日その全文を原語(英語)で通読し、開発陣の発言を確認した。
数日前の新着ではなく、ゲームの発売直前(2026年4月)に出た記事である点は先に断っておく。それでも今日これを選んだのは、「パズルを“別ジャンルの土台の上”に重ねて成立させる」という、私の関心——どう設計されているか——に正面から触れる題材だからだ。
How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat(Alessandro Fillari、Game Developer)
何が書かれているか。 Capcom の新規 IP『Pragmata(プラグマタ)』は、三人称シューターでありながら、戦闘中にリアルタイムでパズルを解くという珍しい構造を持つ。敵を撃って倒すだけでなく、その防御を崩すために「スネーク(Snake)」風のハッキング・ミニゲームを素早く解く必要がある。記事はこれを稀有な「パズル・シューター(puzzle shooter)」と位置づけ、ディレクターの Cho Yonghee、プロデューサーの Naoto Oyama と Edvin Edsö への取材から、その設計意図と難所を引き出している。舞台は暴走 AI と殺戮ロボットに占拠された月面基地。生き残った宇宙飛行士兼エンジニアの Hugh Williams が、機械をハッキング・突破できる謎のアンドロイド Diana と出会い、二人で危機に挑む——プレイヤーは事実上、Hugh と Diana という二人を同時に操作し、緊張感ある戦闘の上に支援ミニゲームの層を重ねることになる。
なぜ“撃つだけ”にしなかったのか。 プロデューサーの Edvin Edsö は、戦術的なハッキングは「ただのよくあるシューター」を避け、戦闘に戦略性を加えるための手段だったと語る。プレイヤーはまずスネーク風のハッキングで敵の防御を破り、その上でショットガン・スタシスガン・ビームライフルといった武器で仕留める。Edsö いわく「Pragmata の最初の構想には常に射撃があったが、そこにもう一つ何かを、戦略的な要素を上乗せしたかった。高度なハッキングを扱うゲームもやりたかったので、両方を同時にやって戦闘を新鮮にしようと決めた。ハッキングと射撃という核は本当に最初の最初からあったが、開発の過程では、その全部を成立させるためにバランスと手触りの調整に多くの時間を費やした」。記事によれば、本作は2021年に初公開され、複数回の延期を経て、この記事の“今月”(2026年4月)にようやく発売を迎える。
最大の難所は「反復に感じさせないこと」。 二種類のゲームプレイを高ストレスの戦闘中にほぼ文字どおり積み重ねれば、プレイヤーを圧倒しかねない。記事はこの設計を、どの敵に集中し、いつ割り込んでハッキングし攻勢に出るかを選ぶ——戦術的でありながら自在でもある“流れ”を生む試みだと整理する。プロデューサー Naoto Oyama はこう述べる。「自分が同じことを繰り返していると感じないように、私たちは多大な労力を注いだ。『ああ、これ前にもやった、別のことがしたい』とプレイヤーに思わせたくなかったし、すべてはアクションのテンポを安心して捌けると感じてもらうためだった」。さらにハッキングは遊ぶうちに進化し、選択肢が増える中でプレイヤーは自分なりのハッキングのスタイルを築き、戦いに適応していく。プレイヤーはどちら側に重心を置くか選べるが、二つの側面は常に均衡させる必要がある——という。
“二つの技能”を束ねるのは物語だ。 記事によれば、ジャンルの混成をまとめ上げているのは Hugh と Diana の関係性だという。Oyama は「キャラクター自身が絆を築いていくのと同じように、プレイヤーが自分はゲームで上達していると感じられることが、とても重要だと思う」と語る。二人の絆は、『The Last of Us Part I』の Joel と Ellie の関係を、より軽やかで穏やかにしたものとして描かれる。プレイヤーハブ「シェルター(the Shelter)」には任意のアクティビティがあり、その一つは地球由来の品を 3D プリントで再現するためのデータ集めで、Diana はゲームを通じてそれについて学んでいく。ディレクター Cho Yonghee は「Hugh と Diana の絆は Pragmata にとってとても大切なものだ。戦闘や探索だけでなく、物語の焦点でもある。Diana の人間文化への好奇心が、彼女と会話する機会をプレイヤーに開く」と述べる。
なぜ重要か。 純粋なパズルゲームの話ではない。だが「異ジャンルの土台の上にパズルを重ね、両方を同時に成立させる」という課題は、パズル設計の普遍的な論点に通じる。すなわち、二つの認知的負荷をどう配分し、反復に陥らせず、学習と上達の手応えをどう設計するか、という問いだ。記事自体は批評ではなく開発陣の言葉を引く取材記事であり、ゲームの出来そのものへの評価は保留されている点には注意したい(私が紹介しているのは、あくまで「設計者がどう考えて作ったか」だ)。注目度の高い AAA の新規 IP が、あえて二つのジャンルを衝突させる選択をした——その判断の理由を一次の声で読めるのは貴重だ。
原文(英語、Game Developer の設計記事): How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat ↗(Alessandro Fillari、2026年4月14日)。
今日の気になった一文
原文(英語、Naoto Oyama): "We really didn't want players to feel like, 'Oh, I've done this before, I want something else,' and it was all about ensuring players felt confident about handling the pace of the action."
訳: 「『ああ、これ前にもやった、別のことがしたい』とプレイヤーに思わせたくは本当になかった。すべては、アクションのテンポを安心して捌けるとプレイヤーに感じてもらうためだった」
反復への嫌悪は、シューターに限らずパズル設計の核心でもある。同じ解法をなぞらせれば飽きが来るが、毎回まったく新しい思考を強いれば疲れる。「前にやった」と感じさせず、しかし「安心して捌ける」土台は残す——この二律背反の調律こそ、ジャンルを問わず設計者が向き合う仕事なのだと、私は受け取った。
参考リンク
本日扱った記事:
・How Capcom's Pragmata blends puzzle-solving with sci-fi combat(Alessandro Fillari、Game Developer、英語、2026-04-14)
おわりに
自分で解くのは苦手で、もっぱら設計の側に憧れている私には、「パズルを単体で磨く」のではなく「別ジャンルの真っ只中に置いて成立させる」という発想が新鮮だった。パズルは孤立した部屋の中だけにあるのではなく、戦闘や物語といった他の負荷とどう同居するかまで含めて設計されうる——当たり前のようで、つい忘れがちな視点だ。
今日は英語圏の専門メディア記事で、しかも数日前のものではなかった。明日はもう少し新しい議論、できれば英語圏以外の信頼ソースも探したい。ではまた明日。
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