HISTORY · 2026-09-10

サメゲーム(1985) — 月刊アスキーへの投稿から生まれた、隣接する同色を消すという文法

最初の名前は『チェインショット!』。作者クニアキ・モリベの素性は、今もほとんどわかっていない

隣接する同色を消す、という規則を最初に書いたのは誰か?

隣接する同色のブロックをまとめてタップして消す。塊が大きいほど得点が跳ね上がる。この規則を最初に書いたのは、1985年に月刊アスキーへ投稿された『チェインショット!』である。

『チェインショット!』は、クニアキ・モリベが1985年に月刊アスキーへ投稿し、富士通FM-8/FM-7向けに公開した、隣接する同色ブロックをまとめて消す落下型パズルである。作者の素性を示す資料は、名前以外ほとんど残っていない。

この規則は40年のあいだに名前を変え続けた。SameGame、Clickomania!、Same Gnome、Jawbreaker——呼び名は増えても、規則そのものはほとんど変わっていない。私はこの一本を、名前より長く生き延びた規則として読み直したい。

色分けされたブロックの盤面が光るブラウン管モニターのイメージ(AI生成)隣接する同色の塊を消す盤面のイメージ(イメージ・AI生成)

1985年の投稿プログラムは、どうやって世に出たのか?

1985年の日本のパソコン雑誌には、読者が書いたプログラムをそのまま載せる投稿欄があった。月刊アスキーもその一つで、毎号BASICや機械語のリストを掲載していた。

当時の8ビット機には、フロッピーディスクすら無い機種も珍しくなかった。プログラムを配布する最も安い方法は、雑誌に印刷された一行一行を、読者が自分の指でキーボードに打ち込むことだった。『チェインショット!』もこの方式で世に出ている。

投稿者の名前は「クニアキ・モリベ」、発表名は「Morisuke」と伝わる。本名かどうかを示す一次資料を、私はまだ見つけていない。当時の投稿文化では、こうした素性の不確かさ自体がめずらしくなかった。

開いたパソコン雑誌と当時の8ビット機のイメージ(AI生成)投稿プログラムが誌面に載っていた時代のイメージ(イメージ・AI生成)

チェインショット!の規則は、具体的にどう動くのか?

盤面は当初、20列×10行、4色のブロックで埋まっていた。プレイヤーは隣接して並ぶ同色の塊をクリックして消す。ただし塊は2個以上でなければ消えない。

消えたブロックの上にあった列は下に落ち、空いた列は左へ詰める。重力と横詰め、この二つの規則だけで、テトリスともぷよぷよとも違う崩れ方が生まれる。

得点は塊の大きさに応じて跳ね上がるよう設計されている。移植のたびに計算式は変わった。ある版は(n-1)の2乗、別の版はnの2乗からnの3倍を引いて4を足す式を採用した。式は違っても、大きな塊を残さず崩し切るほど得だ、という狙いは共通している。

同色の塊が消えて上のブロックが落ちる様子の図解イメージ(AI生成)塊を消すと上のブロックが落ちる規則の図解(イメージ・AI生成)

この規則は、40年でどこまで生き延びたのか?

1992年、この規則は一気に広がった。Eiji Fukumotoが5色版としてUnixへ移植し、名前を『SameGame』に変えている。同じ年、Wataru YoshiokaがPC-9801へ、Eiichiro Mawatariが『ChainShot!』の名でMacintoshへ移植した。

1993年にはIkuo HirohataがWindows 3.1へ移植し、Hitoshi Ozawaが英語に訳している。1994年のTakahiro Sumiya版は2色から5色まで選べるようになり、資料はこれを「原型の系統で最も広く配布された版」と記す。

呼び名はその後も増えた。1998年の『Clickomania!』、LinuxのKSameやSame Gnome、2003年の『Jawbreaker』。数学者もこの規則に注目し、Biedl・Demaineらは2002年の論文で、全消し判定がNP困難になる条件を示した。2012年のSchaddらは、モンテカルロ木探索でこの盤面を解く手法を発表している。

2004年、Simon Tathamはこの規則を自作のパズル集に『Samegame』として収録した(当サイトのSimon Tatham's Portable Puzzle Collectionも参照)。このコレクションは2024年、ETHチューリッヒの研究チームによるAI推論ベンチマーク論文にそのまま採用されている。今のスマートフォンにある『同色の塊をタップして消す』系パズルも同じ動詞を使い続けているが、開発者が本作を参照元と語った資料は、私はまだ見つけていない。

古い8ビット機から現代のスマートフォンへつながる系譜のイメージ(AI生成)規則が姿を変えて受け継がれる系譜のイメージ(イメージ・AI生成)

参考文献

本記事で参照した情報源:

Wikipedia (英語版): SameGame

マーストリヒト大学 Games and AI Group: SameGame

Schadd, Winands, Tak, Uiterwijk (2012). "Single-Player Monte-Carlo Tree Search for SameGame." Knowledge-Based Systems, Vol. 34.

Biedl, Demaine, Demaine, Fleischer, Jacobsen, Munro. "The Complexity of Clickomania." (2002)

Simon Tatham's Portable Puzzle Collection

Estermann, Lanzendörfer, Niedermayr, Wattenhofer (2024). "PUZZLES: A Benchmark for Neural Algorithmic Reasoning."

当サイト: Simon Tatham's Portable Puzzle Collection(2004)の記事

おわりに — 名前より長生きした規則

クニアキ・モリベという名前を、今知る人はほとんどいない。彼が1985年に月刊アスキーへ投稿した規則——隣接する同色の塊を消す——だけが、名前を何度も変えながら生き延びた。

SameGame、Clickomania!、Jawbreaker、Samegame。呼び名は違っても、崩れ方は同じだ。2024年のAIベンチマークにまで組み込まれたのは、規則そのものが単純だったからだろう、と私は見ている。投稿者の名前より、彼が書いた規則の方が長生きした。

静かな部屋で光る一台のブラウン管画面のイメージ(AI生成)ほとんど消え終えた盤面が静かに光るイメージ(イメージ・AI生成)

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