REVIEW · 2020-05-28
The House of Da Vinci 2
「直感的に作り直した」と書かれた操作が、いちばん揉めている
第一印象
Steam のラベルは「非常に好評」。全言語・購入経路を問わない集計で、2,260 件のうち 2,052 件が肯定。約 91% だ(2026-09-28 時点)。英語だけに絞ると 863 件中 88% まで下がる。いずれにせよ前作より上の数字である。
面白いのは、物差しが入れ替わっていることだ。前作のレビューは、ほとんどが The Room を基準にして書かれていた。続編のレビューは違う。「1作目より全面的に良い」「あらゆる点でずっと良くなった」「完全な進歩だ」——helpful 上位の推薦文は、まずこの比較から始まる。
シリーズが自分自身を基準にできるようになった、ということだ。ただ、良くなった中身は書き手ごとにばらける。挙がるのは、触れる物にマウスが反応するようになったこと、声の演技が付いたこと、機械の見た目の密度。設計の骨格ではなく、表層の仕上げが並ぶ。
The House of Da Vinci 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の1枚目(Steam スクリーンショット)
メカニクスの言語化
動詞は少ない。覗く、回す・引く、持ち物を差し込む。ほぼこれだけだ。加えて Oculus Perpetua がある。ストアページの記述では、これは過去に手を入れて「いま」のかたちを変える装置だとされる。前作の Oculus Temporis が中を透かして見る観察の装置だったのに対し、続編のそれは操作の装置になった。
positive 側の語彙は、仕掛けが開く瞬間に集中している。精巧な懐中時計の複雑機構がほどけていくようだ、機械が生き返る、ボタンを見ると押したくなる子どもに戻る。褒められているのは謎の中身ではなく、開くときの手応えのほうだ。
negative 側の語彙も、実は同じ場所を指している。微小な隠しスイッチ、画素探し、暗がりに置かれた物、藁にもすがる。つまり両側が語っているのは一つの性質だ——盤面の境界がどこまでなのかを、部屋が教えてくれない。positive はそれを探索と呼び、negative は水増しと呼ぶ。
観察解像度を上げさせる設計そのものは正しいと思う。Machinika Museum のように、装置を細部まで見せる作品は珍しくない。問題は、上げさせた解像度に画面の側が追いついているかどうかだ。そしてレビュー群の不満は、ほぼ全部そこに落ちる。
The House of Da Vinci 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の2枚目(Steam スクリーンショット)
操作の手触り
ストアページの機能一覧には「直感的に作り直した操作」と書かれている。ところが negative レビューの最頻出主張は、難しさでも物語でもなく、その操作だ。「全編ずっとカメラと戦っていた」「カメラが最悪」。肯定側からも「マウス操作が少しぎこちない」「せっかくの満足感を操作が奪い返す」という留保が付く。
症状は前作と同じである。二段階のズームが要る場所で一段しか寄れておらず、正しい画素を踏むまでクリックを繰り返す。自分では試したつもりの操作が、実は届いていなかった——だから解法が合っているのに先へ進めない。直近のレビューには、カメラの挙動が携帯機向けのままで酔う、という書き方も出てくる。
あるレビュアーが「カメラをそちらに向けさせないことで手がかりを隠すのは、ずるい」と書いていた。私はこれを正確な指摘だと思う。観察解像度を要求する作品では、カメラは演出ではなく入力装置だ。見えるか見えないかをカメラが決めるなら、カメラの自由度はそのまま難しさの一部になる。難しさを機構ではなく視界に置くと、解けたときの手応えが残らない。
The House of Da Vinci 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の3枚目(Steam スクリーンショット)
難しさの手触り
難しさの評価は、割れるというより上下に振り切れている。「本当に頭を使う場面はなかった」と書く人がいる一方で、「壁に頭を打ちつけ続けるようだ」「怒った猫を集めるようだ」と書く人がいる。同じ作品の話とは思えないほど遠い。
詰まった場所を集めると、難しさは二種類に分かれる。一つは機構の難しさ——歯車の順序、記号の対応、装置を動かす手順。こちらはおおむね好評だ。もう一つは発見の難しさ——そもそもどこが触れる場所なのか。不満はほぼ全部こちらに集まっている。
記号を使うパズルについて、「ありうる組み合わせを片端から試して解いた」と正直に書く人が複数いた。総当たりが最短手になっているなら、それは難しさではなく手順の長さだ。第6章の回転操作が延々続いて気分が悪くなった、という直近の声も、同じ種類の疲れを指している。
The House of Da Vinci 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の4枚目(Steam スクリーンショット)
ゲームデザインの工夫
工夫が効いている箇所ははっきりしている。機械が音を立ててほどけていく見せ方、装置から装置へ連鎖していく構成、ウルトラワイドへの対応。手で組んだ機械を見せることに関して、この開発元は一貫して上手い。
一方でヒントは評判が悪い。印象に残ったのは、親指を上に向けた人が書いた一文だ——ヒントは役に立たない、自分がもう知っていることを言い直すだけだ、と。ヒントが目的だけを指して観察を指さないなら、難しさが観察の側にある作品では機能しない。前作の段階ヒントから後退して見える。同じ書き手は、パズルをやり直す手段がないことも挙げていた。
物語についても、減らしてほしいという声は肯定側から出る。「奇妙な機械だけ渡してくれればいい」「結論のないまま妙な終わり方をする」「最後は10分のスライドショー」。Quern - Undying Thoughts のように語りを風景へ溶かす作り方もあるなかで、この続編は追いかけっこと台詞を足すほうを選んだ。減算で強くなってきたシリーズに、加算で足された層である。
The House of Da Vinci 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の5枚目(Steam スクリーンショット)
参照したレビュー群
本記事は 2026-09-28 時点の Steam ストアページのユーザーレビュー群を読んで書いた。レビュー本文の直接引用はせず、繰り返し現れる主張を再構成している。
・Steam: The House of Da Vinci 2(非常に好評 / Very Positive。全言語・購入経路を問わない集計で 2,260 件中 2,052 件が好評 = 約 91%。英語のみでは 863 件中 88%)
・helpful 順の肯定上位20件、helpful 順の否定上位10件、新着8件を読了(重複を除いておよそ38件)。集計値は Steam のレビュー API が返す query_summary から取った。
・開発元による自己記述として、ストアページの短い紹介文と機能一覧(「直感的に作り直した操作」を含む)も参照した。
・掲載画像は Steam の appdetails API が返したストア掲載スクリーンショットの URL をそのまま使っている。実行環境から Steam の画像配信ホストへ接続できず、画像の中身を目で確かめられなかったため、キャプションでは写っているものを特定していない。
結論
Steam の総評は約 91% の好評、私の設計批評としての採点は 7.6 だ。加点は、手で組んだ機械を開けていく手応えと、その見せ方の一貫性。減点は、細かく見ることを要求しておきながら、その解像度をカメラとズームが支えきれていないこと。前作から数字が上がったのは仕上げが良くなったからであって、この関門が解かれたからではない。
レビューに記録されたプレイ時間は 4 時間から 16 時間まで散らばり、中央値はおよそ 10 時間。難しさは人によって体験が大きく分かれるので、ここでは真ん中に置いた。
機構をじっくり見つめる時間が好きな人には、いまでも薦められる。The Room Three の、盤面の輪郭がはっきりした手触りを基準にする人には、部屋じゅうを探し回る時間が最後まで気に障るはずだ。前作を遊んで操作だけが不満だったなら——残念ながら、そこは持ち越されている。
The House of Da Vinci 2 のプレイ画面。Steam ストアページ掲載の6枚目(Steam スクリーンショット)
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