BLOG · 2026-08-05

スーパーマリオ ヨッシーアイランド(1995) — スーパードンキーコングの「真逆」を選んだ手描き

今日は発売日 #22 — 1995年8月5日、任天堂がスーパーファミコンにマーカーの線を持ち込んだ日

1995年8月5日、CGの隣に置かれた手描きの山

こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第22回。今日掘り出したのは、任天堂の『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』。スーパーファミコン用ソフトとして店頭に並んだのは1995年8月5日、平成7年の夏でした。今日でちょうど31年になります。

基本情報を整理しておきます。ジャンルは横スクロールアクション、発売・開発は任天堂、英題は『Super Mario World 2: Yoshi's Island』。アメリカでは同年10月4日、ヨーロッパでは10月6日の発売です。1990年の『スーパーマリオワールド』でマリオと共に走ったヨッシーが、初めて本編クラスのアクションゲームで主役に立った一本で、ヨッシーシリーズの1作目にあたります。ディレクターは手塚卓志・中郷俊彦・日野重文・紺野秀樹、音楽は近藤浩治、プロデューサーは宮本茂、エグゼクティブ・プロデューサーは山内溥。

YouTube動画「【SFC】任天堂『スーパーマリオ ヨッシーアイランド - Super Mario World 2: Yoshi's Island - 』全6ワールド ノーミス100点クリア」のサムネイルYouTube動画「【SFC】任天堂『スーパーマリオ ヨッシーアイランド - Super Mario World 2: Yoshi's Island - 』全6ワールド ノーミス100点クリア」のサムネイルより

物語の入口は空の上です。双子の赤ちゃんを運んでいたコウノトリが襲われ、片方はさらわれ、もう片方は地上に落ちる。落ちた先がヨッシーの背中でした。奪ったのはクッパ王国の魔法使いカメック。双子がやがて王国の脅威になるという自分の占いを根拠にした犯行です。取扱説明書とゲーム内で、この赤ちゃんは「マリオ」ではなく「赤ちゃん」と呼ばれています。

舌とタマゴと、100点満点という物差し

遊びの中心はヨッシーの体そのものです。舌を伸ばして前方の敵を口に含み、吐き出して飛ばすか、飲み込んでタマゴに変える。タマゴは6個までストックでき、後ろに連なって付いてきます。投げれば一直線に飛び、壁で3回まで跳ね返る。ジャンプボタンを押し続けて少し空中にとどまる「ふんばりジャンプ」、急降下で地面を叩く「ヒップドロップ」も本作から入りました。ヒップドロップは以後のマリオシリーズにも定着します。

体力の代わりに置かれたのが「スターのおまもり」です。ダメージを受けると赤ちゃんがシャボン玉に包まれて宙に浮き、その間おまもりの数が減っていく。0になると赤ちゃんはコカメックにさらわれ、ミスになります。ステージ開始時は10、ステージ内のスターを取れば最大30まで増える。つまり本作の「残り体力」は、赤ちゃんを取り戻すまでの猶予時間として数えられています。赤ちゃんが離れている間はエリアから出られない、という細かい仕様まで付いていました。

そしてクリア後に出るのが100点満点のスコアです。赤コイン20枚(1点)、スペシャルフラワー5個(10点)、クリア時のスターのおまもり最大30個(1点)を足して100点。この点数はゲームクリアには関係ありません。関係ないのに、あるワールドの8ステージすべてで100点を取るとスペシャルステージとボーナスチャレンジが開き、全ステージで100点を取るとタイトル画面に星印が付く。ゲードラの記事が「クリアするだけならそれほど難しくないが、100%クリアには非常に高い難易度が要求される」と書いているのは、この二重構造のことです。全6ワールド×8ステージという素朴な構成に、やり込みの目盛りだけを後付けした設計でした。

特定のステージには「へんしんアイテム」があり、ヨッシーがヘリコプター、モグラタンク、せんすいかん、きかんしゃ、くるまに変身します。空を自由に飛び、土壁を掘り、魚雷を撃ち、壁に描かれた線路を走る。ROMカセットには『スターフォックス』でその実力を知らしめたスーパーFXチップが積まれ、ハードの素の性能を越えた映像処理を担っていました。

この手描き風の絵にたどり着くまでの経緯が、資料として面白いところです。『スーパーマリオワールド』のデザイナーだった日野重文は、宮本茂から「いつまで絵を描いているのか」と言われたことをきっかけに企画を練り始め、次の企画が通らなければ任天堂を去ろうと考えていた矢先に、ヨッシーを主人公にすることを思い立ちます。横スクロールアクションは『スーパーマリオワールド』でやり切っていたので、主役を替えれば新しい遊びが作れる、という筋でした。ゼルダの開発に入っていた手塚卓志が、相談相手として助言を与えています。

ところがその矢先の1994年11月、レア社の『スーパードンキーコング』が発売されます。当時のスーパーファミコンでは珍しい3DCGが社内でも話題になり、本作にもCGを入れてはどうかという声が上がりました。しかし開発が進んでおり、導入は不可能だった。そこで開発チームが選んだのが「『スーパードンキーコング』の真逆の作風」、つまり手描き風です。方向性がなかなか定まらず、少し前に入社したばかりの野上恒に相談したところ、マーカーで描いた山の絵が返ってきた。これを基に試行錯誤した末に方向が決まり、ターニングポイントになりました。ちなみに開発中の仮タイトルは『スーパーマリオブラザーズ5 ヨッシーアイランド』です。

翌1996年にはNINTENDO 64の発売が控えており、手塚と紺野は『スーパーマリオ64』の応援に抜けていきます。残った日野と野上ともう一人のデザイナーの3人が、SRDにプログラミングを委託しながら、手塚らが残した骨組みに肉を付けていった。開発途中のものを流通関係者に見せたところ評価が良く、それがきっかけでスタッフの呼び戻しに成功した——という順番です。日野は2017年のインタビューで、部品はそろっていたがゲームバランスが整っておらず、商品に仕上げるには手塚や宮本の助けが必要だったと振り返っています。

当時の反応 — 33点のゴールド殿堂と、「オール100点攻略ガイド」という本

発売当時の評価から。『ファミコン通信』のクロスレビューは9・9・8・7の合計33点(40点満点)で、ゴールド殿堂を獲得しています。レビュアーのノダは「任天堂のソフト開発力はすさまじい」と絶賛し、水ピンはグラフィックについて肯定的に評価しました。4人のうち一人が7点を付けている点は、そのまま書き写しておきます。満点近くを並べた作品ではなく、9・9・8・7という散らばり方で33点に届いた作品でした。

読者側の評価も残っています。『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票「ゲーム通信簿」は24.8点(30点満点)。内訳はキャラクター4.5、熱中度4.2、操作性4.1、オリジナリティ4.1、音楽4.0、お買得度3.9。最高がキャラクター、最低がお買得度という並びです。ヨッシーという主役の勝利が数字にそのまま出ていると読めます。

個人的にいちばん当時の温度が伝わってくるのは、レビューではなく攻略本の書名です。1995年の秋、この一本のために出た本を並べてみます。T2出版『攻略ガイドブック』(9月20日)、講談社『オール100点攻略ガイド』(10月1日)、ソフトバンク『スーパーガイド』(10月1日)、ティーツー出版『100倍楽しく遊ぶ本』(10月1日)、アスペクト『あるきかた』(10月14日)、双葉社『必勝攻略法』(10月25日)、二見書房『裏ワザ大全集』(12月25日)、そして小学館の『任天堂公式ガイドブック』。発売から4か月ほどの間にこれだけ並んでいます。

この中で『オール100点攻略ガイド』という書名が成立しているのが、当時の受け止め方を示す一次資料に近いと思います。クリアの攻略本ではなく、全ステージ100点の攻略本が商品として企画された。ゲームクリアに関係ないと先ほど書いたあの点数が、発売から2か月で読者の目標として通用していたということです。4コマ漫画の単行本も光文社と双葉社から複数出ており、キャラクターとしてのヨッシーがこの一本で一段上がったことがわかります。

31年後の今日、100点の並びを通しで見られる

当時の画面を動かして見たい方へ。上に置いたのは、YouTubeの「【SFC】任天堂『スーパーマリオ ヨッシーアイランド - Super Mario World 2: Yoshi's Island - 』全6ワールド ノーミス100点クリア」です。全6ワールドをノーミスで、しかも各ステージ100点で通していく記録映像。先ほど書いた100点満点の仕組みを、言葉ではなく手つきで確かめられる一本です。赤コインが通常のコインとほとんど区別できないという嫌がらせのような仕様も、こういう映像で見るとよくわかります。

その後の移植の足取りを並べます。2002年9月20日、ゲームボーイアドバンス用『スーパーマリオアドバンス3』に、本作の移植版と『マリオブラザーズ』のリメイクをセットで収録。2011年12月16日には、ニンテンドー3DS本体の早期購入者向け「アンバサダー・プログラム」でこのアドバンス3が無料配信され、2014年10月15日からはWii Uのバーチャルコンソールで有料配信されました。2017年10月5日発売の「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」には、本作とヨッシーのデビュー作『スーパーマリオワールド』が同時に収録されています。

現在は、Nintendo Switch Onlineに加入すればスーパーファミコンのラインナップとして遊べます。同じ枠に『ヨッシーのたまご』も入っており、"+追加パック"のほうに加入すれば、2023年5月26日から配信されている『ゲームボーイアドバンス Nintendo Switch Online』の『スーパーマリオアドバンス3』でも遊べる。1995年のカセット、2002年の携帯機版、その両方が同じ本体で並ぶ状態です。

1995年8月5日、という一行

記録として、もう一度年号を置いておきます。1995年8月5日。平成7年。前年11月に出たCGの大作に対して、社内から「うちもCGでは」と言われながら、間に合わないという理由で手描きに振り切った一本。クロスレビュー33点でゴールド殿堂、読者の通信簿24.8点、そして2か月後には「オール100点」を書名にした攻略本が並んだ夏です。年号を書き写さないと記事が終わった気がしないのは私の癖ですが、この作品の場合は、1994年11月と1995年8月という二つの年月をどちらも書かないと落ち着きません。片方だけでは、あの手描きがなぜ選ばれたのか説明できないからです。

今日の問いです。あなたにとって「流行の真逆に振り切ったおかげで古びなかった」一本は、何でしょうか。当時いちばん新しく見えたものほど先に古びる、というのは資料を掘っているとよく出てくる話です。マーカーで描かれた山の絵が、31年後にいちばん褪せていない、という順番も含めて。それでは、また明日。

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