BLOG · 2026-08-07

がんばれゴエモン〜ネオ桃山幕府のおどり〜(1997) — 日本全土を舞台に変えられた夏

今日は発売日 #24 — 1997年8月7日、コナミがゴエモンを3Dへ連れ出した日

1997年8月7日、ゴエモンが立体になった日

こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第24回。今日掘り出したのは、コナミの『がんばれゴエモン〜ネオ桃山幕府のおどり〜』。NINTENDO 64用ソフトとして店頭に並んだのは1997年8月7日、平成9年の夏でした。今日でちょうど29年になります。

基本情報を整理しておきます。ジャンルはアクションアドベンチャー、発売・開発はコナミ、対応機種はNINTENDO 64。1986年の『がんばれゴエモン!からくり道中』から続くシリーズが、初めて3Dになった一本です。開発中は『がんばれゴエモン5』の仮題で誌面に出ており、1996年9月の『ファミマガ64』でその名前のまま報じられました。ディレクターは、ファミコン版『がんばれゴエモン2』でプログラマーを務め、スーパーファミコンの2作目・3作目・4作目を監督した人物(英語資料での表記は Etsunobu Ebisu)。相棒エビス丸の見た目の由来になった人でもあります。プランナーは Keita Kawaminami。ROMは128メガビットのカートリッジで、コナミが1997年5月28日のプレスリリースで発表しました。データのセーブにはコントローラパックが必要です。

YouTube動画「CM コナミ がんばれゴエモン (N64&GB&PS)」のサムネイルYouTube動画「CM コナミ がんばれゴエモン (N64&GB&PS)」のサムネイルより

物語の入口は、平和な大江戸はぐれ町です。ゴエモンとエビス丸が飯屋を追い出されたその時、上空に桃の形をしたUFOが現れ、大江戸城へ謎のビームを撃ち込んで洋風の城に作り変えてしまう。殿様の頼みで犯人を追う二人は、道中でくノ一のヤエと、からくり忍者のサスケを仲間に加えます。首謀者はミュージカルスターの春風弾神と、マーガレット・蘭子。二人が率いる組織「ネオ桃山幕府」の野望は、日本全土を自分たちの最高の舞台に作り変える「日本全土舞台化計画」でした。

日本全土がステージで、節目には巨大ロボが立つ

舞台は、北海道と九州を除いた日本全土です。九州は物語の途中で宇宙へ浮き上がり、最終ステージとして戻ってきます。中部・北陸は通過するだけでステージはなく、北海道は登場すらしません。各地の名所旧跡がイメージされ、旧作の旅情はそのまま3Dに持ち込まれました。ディレクターは1996年11月の『ファミマガ64』で「基本的には『ゴエモン3』を3Dにしたような作り」と語り、同じころ「西洋風や機械的なものではなく、和のテイストが滴るような世界を作ることに集中している」とも述べています。直前の2作が時間旅行や宇宙を扱っていたことを思えば、これは原点回帰の宣言でした。同誌のインタビューでは『スーパーマリオ64』との違いも訊かれ、「マリオ64はスター探しで組み上がっているが、ゴエモンは謎解きと敵を倒すことで構成する」という答えが返っています。

操作は、ゴエモン(メインウェポンはキセル)、エビス丸(小槌)、サスケ、ヤエの4人をCボタンで切り替える方式です。最初はゴエモンとエビス丸の2人で進み、シナリオに沿ってヤエ、サスケの順に仲間が増えます。それぞれ武器と特殊能力が違うため、切り替えないと先へ進めない場面があります。ゴエモンのチェーンキセルは遠距離攻撃と卍ブロックへの移動を兼ね、エビス丸のからくりカメラは見えないものを映し出す。ライフの初期値は5で、招き猫を取ると増える。残機は大入り袋で増える。そして城の主を倒す段になると、恒例の巨大ロボ・ゴエモンインパクトが呼び出されます。

本作は音楽と演出に力が入っています。オープニングテーマ「がんばれゴエモンのテーマ」は影山ヒロノブ、インパクト戦の挿入歌「おれはインパクト」は水木一郎。最終戦前に流れる「ゴージャス・マイ・ステージ」ではオペラ歌手の立花敏弘と太田悦世が歌っています。声の出演も厚く、春風弾神とバロンに山寺宏一、マーガレット・蘭子とゆき姫に三石琴乃、サスケに堀絢子、ヤエに笠原留美、殿様に茶風林。会話シーンはコメディ仕立てで、台詞に合わせて録音笑いが入ります。ROMが128メガビットあったのは、この音声と3曲を積むためでした。

消えた機能の話もしておきます。シリーズの持ち味だった2人同時プレイは、開発中に断念されています。ディレクターは1996年の『電撃64』で「ゴエモンシリーズは『友達や家族とわいわい楽しむコミュニケーションソフト』というコンセプトで作られている。だから2人同時プレイはゴエモンにとって極めて本質的な要素だ」と語り、同時に「企画段階では比較的軽く決めたのに、開発が進むにつれて問題が次々と出てきた」と認めていました。1997年4月の東京ゲームショウで、本作は1人用として再登場します。

「出来のよくないマリオの模倣」から90%まで

発売前の評判は、あまり良くありませんでした。英『Computer & Video Games』1997年6月号で、Warren Herrod がその年の東京ゲームショウ出展版をプレビューし、「問題は主に二つある。まずメインのゲームエンジンが完成していない」と書いています。「ゲームがフリーズする傾向があるだけでなく(何度も固まってリセットが必要だった)、ポリゴンのクリッピング問題があらゆる場所にある」。彼はコナミがこの状態で公衆の前に出したことに驚いた、とまで記しました。同年6月のE3で見た IGN の Peer Schneider も似た所感を残しています。「思っていたより早い段階で、当たり判定、ポリゴンの乱れ、キャラクターの動き、そして何より一貫しないカメラアングルのせいで、出来のよくないマリオの模倣のように見える」。

そして1997年8月7日の発売。『ファミ通』452号のクロスレビューでは、4人のレビュアーの合計が40点満点中28点でした。派手な満点ではありませんが、直前のプレビュー記事の温度を思えば、製品版がきちんと形になっていたことは読み取れます。

本作の受け止め方が本当に割れるのは、海を渡ってからです。『Mystical Ninja Starring Goemon』として北米と英国の店頭に並んだのは1998年4月。英『N64 Magazine』は90%をつけ、ボスたちはスーパーファミコン版・ファミコン版からの「天文学的な飛躍」だと評し、グラフィックを「見事に手練れ」と書きました。同誌は「『マリオ64』とその続編のあいだの橋渡しを待っているN64ユーザーにうってつけであり、サードパーティーがこの機械をいかにうまく使えるかの完璧な実例だ」とまとめています。一方、GameSpot の Peter Bartholow は6.7点。プレイ体験を「デジタル・カルチャーショック」と呼び、「日本の建築から宗教的慣習まで、あらゆるものが『ミスティカル・ニンジャ』を遊ぶうえでの障害になってしまう」と結論しました。彼が挙げた例が具体的で、ゲーム最初の部屋の襖が、平均的なアメリカ人には壁に見えてしまい、そこで詰まるプレイヤーがいる、というものです。

もう一つ、海外での扱いに触れておきます。1991年のスーパーファミコン版『がんばれゴエモン 〜ゆき姫救出絵巻〜』は『The Legend of the Mystical Ninja』として英語圏に出た際、ゴエモンとエビス丸が Kid Ying / Dr. Yang に改名され、おにぎりがピザやハンバーガーに差し替えられていました。今回はそれがありません。Schneider は Time Extension に、コナミの北米PR担当から「今度は日本語の名前をそのまま残す」と聞かされたときのことを、良い知らせとして振り返っています。

29年後の今日 — 1997年のCMと、この夏のゴエモン

当時の空気を見たい方へ。上に置いたのは、YouTubeの「CM コナミ がんばれゴエモン (N64&GB&PS)」です。コナミのゴエモン関連CMをまとめたもので、NINTENDO 64の『ネオ桃山幕府のおどり』のほか、『でろでろ道中 オバケてんこ盛り』、ゲームボーイの『天狗党の逆襲』、プレイステーションの『来るなら恋! 綾繁一家の黒い影』などが並んでいます。当時テレビで流れていた、あの節回しが確認できます。

そして今年の話です。『がんばれゴエモン』シリーズは1986年の『からくり道中』から数えて40周年。2026年7月2日にはKONAMIから『がんばれゴエモン大集合!』が発売され、ファミコン・スーパーファミコン・ゲームボーイの13作品が一本にまとまりました。移植を担当したエムツーへのインタビューによれば、当初は6本の予定が、結果として13本(+1)になったそうです。

さらに2026年7月27日、コナミデジタルエンタテインメントがシリーズ40周年記念のサントラCD-BOX『がんばれゴエモン音楽集・紅』『同・白』を2026年10月14日に発売すると発表しました。二箱それぞれ500曲以上。そして「紅」の収録タイトル一覧、その筆頭に置かれているのが『がんばれゴエモン ネオ桃山幕府のおどり』です。1997年8月7日に128メガビットのカートリッジへ焼かれた影山ヒロノブと水木一郎の歌が、29年後の秋にCDの箱の先頭に並ぶ。年月の並べ方としては、なかなか気持ちのいい並びです。

1997年8月7日、という一行

記録として、もう一度年号を置いておきます。1997年8月7日。平成9年。シリーズが初めて3Dになり、日本全土がひとつの舞台に作り変えられかけ、そのど真ん中に巨大ロボが立った一本。年号を書き写さないと記事が終わった気がしないのは私の癖ですが、この作品については1986年・1996年・1997年の三つを並べたくなります。シリーズが始まった年と、『がんばれゴエモン5』という仮の名前で誌面に出ていた年と、その仮の名前が外れて店頭に並んだ年が、それぞれ別だからです。

今日の問いです。あなたが「発売前の記事では散々に書かれていたのに、遊んでみたら好きになった」ゲームは何でしょうか。1997年6月の雑誌で「出来のよくないマリオの模倣」と書かれた一本は、翌年イギリスで90%を取り、29年後の今年、40周年のCD-BOXの筆頭に置かれました。評価というのは、案外あとから並べ直されるものです。それでは、また明日。

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