BLOG · 2026-08-06

聖剣伝説2(1993) — 中止になったCD-ROMの企画から立ち上がったアクションRPG

今日は発売日 #23 — 1993年8月6日、スクウェアがスーパーファミコンに「モーションバトル」を持ち込んだ日

1993年8月6日、出られなかった機械の代わりに出てきた一本

こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第23回。今日掘り出したのは、スクウェアの『聖剣伝説2』。スーパーファミコン用ソフトとして店頭に並んだのは1993年8月6日、平成5年の夏でした。今日でちょうど33年になります。

基本情報を整理しておきます。ジャンルはアクションRPG、発売・開発はスクウェア(開発第3部)、日本国外でのタイトルは『Secret of Mana』。プロデューサー兼ゲームデザイン・シナリオは『ファイナルファンタジーII』『III』を手掛けた田中弘道、ディレクター兼ゲームデザイン・モンスターデザインは前作を手掛けた石井浩一、プログラマーはファミコン版『ファイナルファンタジー』シリーズのナーシャ・ジベリ、音楽は菊田裕樹。シリーズ第1作『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』(1991年・ゲームボーイ)はタイトルどおりFFの外伝でしたが、本作から独立した世界観になり、白竜フラミーや商人猫ニキータといったシリーズ定番の顔ぶれもここから登場します。

YouTube動画「【スーパーファミコン CM】聖剣伝説2 (1993年) 【SNES Commercial Message Secret of Mana】」のサムネイルYouTube動画「【スーパーファミコン CM】聖剣伝説2 (1993年) 【SNES Commercial Message Secret of Mana】」のサムネイルより

物語の入口は村はずれの滝です。16歳の少年ランディが、入ってはいけないと言われていた滝つぼで一振りの剣を引き抜いてしまう。それが聖剣で、抜かれた途端に村の周りでモンスターが暴れ出し、ランディは村を追われる。旅の途中で、恋人を探すパンドーラ王国の大臣の娘プリムと、記憶を失った妖精族の少年ポポイが加わる。古の空中要塞「マナの要塞」を復活させようとするヴァンドール帝国を追って、三人が世界を巡ることになります。

モーションバトルと、リングという発明

本作の戦闘は、当時のRPGの主流だったコマンド式ではありません。プレイヤーはキャラクターを操ってフィールドを自由に動き回り、攻撃も回避も自分でタイミングを計る。従来のRPGの戦闘を、画面を切り替えずにフィールド上でそのまま再現する——というのがコンセプトで、この方式を本作は「モーションバトル」と呼びました。回避の瞬間には体術でかわしたり武器で受け止めたりするモーションが入ります。

そこに組み合わされたのが、リングコマンドです。ボタンを押すと操作キャラクターの周囲をリング状に取り囲む形でアイコンが並び、魔法・アイテム・環境設定をその場で選んで実行できる。動きの中でメニューを開くための仕掛けで、これを開発したのはプログラマーのナーシャ・ジベリでした。以後、リングコマンドは聖剣伝説シリーズの看板になります。

武器は剣・斧・ヤリ・ムチ・弓矢・ブーメラン・スピア・グローブの8種類。それぞれに熟練度があり、0から99まで上がるとレベルが1つ上がってまた0に戻る、というカウンタ式です。武器は戦うためだけの道具ではありません。剣で草を刈る、斧で岩を砕く、ムチを杭に引っ掛けて向こう側の崖へ飛び移る。武器の種類がそのままダンジョンの鍵になっている設計でした。魔法のほうは使うたびに熟練度が上がり、各地の神殿にある「マナの種子」と聖剣を共鳴させて得たマナエネルギーの数を上限に伸びていきます。

操作できるキャラクターは3人。操作していない2人はNPCとして動き、大まかな行動方針をあらかじめ設定しておける。そしてマルチタップを挿せば、最大3人がそれぞれのキャラクターを受け持って同時に遊べます。1993年のカートリッジで、アクションRPGを3人で同時に遊ぶ手段が正規に用意されていたわけです。

音楽は菊田裕樹。スクウェアに入社したあと、初めてコンポーザーを任されたのが本作でした。発売から30年以上経った今も国内外で語られ続けている仕事で、その話は後半でもう一度出てきます。

そしてもう一つ、この作品の出自です。『聖剣伝説2』は最初から『聖剣伝説』として企画されたものではありません。出発点は、1990年から1991年にかけて開発され最終的に中止になった、もう一つの『ファイナルファンタジーIV』の原案でした。それがスーパーファミコン専用CD-ROMシステム用ソフトとして改めて開発し直され、『クロノ・トリガー(仮題)』の名前で出る予定だった。ところがそのCD-ROMアダプタ自体が世に出ないことになり、企画はカートリッジ用に組み直されて『聖剣伝説2』になった——という順番です。CD-ROMの容量を前提に膨らんだ設計を、ROMカセットに畳み直したものが、今日の一本ということになります。

当時の反応 — ゴールド殿堂、約150万本、そして英語版で消えた4割

発売当時の評価から。スーパーファミコン版は『ファミコン通信』のクロスレビューでゴールド殿堂を獲得しています。個々のレビュアーの点数については、今回は一次に近い出典で裏が取れなかったので数字は書きません。書けるのは、当時の最上位の評価枠に入った、というところまでです。

売上のほうは数字が残っています。国内は約150万本と伝えられ、スーパーファミコンのソフト売上ランキングでは16位前後に置かれることが多い。ただしこの種の集計は出典によって幅があるので、桁の感覚としてお読みください。1993年のスーパーファミコンで、シリーズ第2作がこの規模に届いた、ということです。

そして、当時の受け止め方として書き残しておきたいのが、海の向こう側の話です。北米版『Secret of Mana』の翻訳を担当したのはTed Woolsey。彼は1994年9月のSuper Play誌のインタビューなどで、容量の制約が翻訳作業を非常に厳しいものにしたと語っています。「日本語は、英語で同じスペースに書けるおよそ倍の情報が入る」。だから「ゲーム側のパラメータを一切変えずに、筋書き全体を考え直さなければならない」。結果として日本語から英語への移し替えで、どうしても奥行きが失われる、と。テキストのおよそ4割を削らざるを得なかったという発言も残っています。当時の海外のプレイヤーが遊んだ『Secret of Mana』は、そういう圧縮を経た版でした。

もう一つ、当時の実像として。本作にはいくつかのバグが存在し、ボス戦の終了後に特定のボタン操作をするとゲームが進行しなくなる、といったものが知られていました。これらは後年のバーチャルコンソール版で修正されています。名作の記録を書くときに、こういう欠けた部分まで一緒に残しておくのが、資料を掘る側の作法だと思っています。

33年後の今日 — 1993年のCMと、この7月のステージ

当時の空気を見たい方へ。上に置いたのは、YouTubeの「【スーパーファミコン CM】聖剣伝説2 (1993年) 【SNES Commercial Message Secret of Mana】」です。1993年当時にテレビで流れたCM。30秒ほどの中に、あの草を刈る剣とリングコマンドの世界が入っています。

その後の移植の足取りを並べておきます。2008年9月9日にWiiのバーチャルコンソールで配信開始、2013年6月26日にはWii Uのバーチャルコンソールへ。携帯電話向けは2009年10月26日のiアプリ、2010年6月24日のEZアプリ(BREW)、2010年12月21日のiPhone/iPod touch用アプリ、2014年10月30日のAndroid版。2017年6月1日には『聖剣伝説コレクション』(Nintendo Switch)に、第1作・第3作と並んで収録されました。2018年2月15日には、フル3Dリメイクの『聖剣伝説2 SECRET of MANA』がPlayStation 4 / PlayStation Vita / Steamで発売されています。

そして今年の話です。『聖剣伝説』シリーズは1991年の第1作から数えて35周年。2026年7月12日、伊藤賢治の主催で「聖剣伝説」35周年記念ライブが開かれ、『聖剣伝説2』『3』の音楽を手掛けた菊田裕樹がスペシャルトークゲストとして登壇しました。1993年8月6日にカートリッジに焼かれた音が、2026年7月のステージで鳴っている。年月の並べ方としては、なかなか気持ちのいい並びです。

1993年8月6日、という一行

記録として、もう一度年号を置いておきます。1993年8月6日。平成5年。中止になった『ファイナルファンタジーIV』の原案から出発し、出ないことになったCD-ROMアダプタの企画をカートリッジに畳み直して生まれ、モーションバトルとリングコマンドを持ち込み、国内で約150万本に届き、英語版では容量のためにテキストの4割を削られて海を渡った一本。年号を書き写さないと記事が終わった気がしないのは私の癖ですが、この作品については1990年・1991年・1993年の三つを並べないと落ち着きません。企画が始まった年と、機械の都合で行き先が変わった年と、実際に店頭に並んだ年が、それぞれ別だからです。

今日の問いです。あなたにとって「本来の形では出られなかったのに、その代わりの姿のほうが正解だった」と思える一本は何でしょうか。予定どおりCD-ROMで出ていたら、この作品はもっと大きかったかもしれない。けれど今日まで33年、遊ばれ、移植され、ステージで演奏されているのは、カートリッジに畳み直されたほうの『聖剣伝説2』です。それでは、また明日。

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