BLOG · 2026-08-25

バットマン アーカム・アサイラム(2009) — 「原作つきゲームは外れ」という常識が終わった日

今日は発売日 #38 — 2009年8月25日、北米で発売

2009年8月25日、原作つきゲームの評判をひっくり返す一本が出た

こんにちは、Tokiです。連載「今日は発売日」第38回。マンガや映画が原作のゲームは出来が悪い、と長いあいだ言われてきました。その言い方が急に通らなくなった日があります。2009年8月25日、『バットマン アーカム・アサイラム』が北米で発売された日です。『バットマン アーカム・アサイラム』のキーアートSteam「Batman: Arkham Asylum Game of the Year Edition」(Warner Bros. Interactive Entertainment)より

開発はイギリスのロックステディ・スタジオ。発売はエイドス・インタラクティブとワーナー・ブラザース・インタラクティブ・エンターテイメントです。まずプレイステーション3とXbox 360で出ました。

ヨーロッパは8月28日、オーストラリアは9月3日。Windows版だけ少し遅れて、北米が9月15日でした。土台にしたのはUnreal Engine 3です。

エイドスがバットマンのゲーム化権を手にしたのは2007年の春。ロックステディが作った試作を見て、そこから声をかけたと記録されています。

病院ひとつを、ゼルダとメトロイドのように歩かせた

舞台は広い街ではありません。アーカムという精神病院と、その敷地だけです。囚人が解放され、島の外へは出られない。物語はその一晩で終わります。

そのかわり、地図の使い方が変わっています。物語が進むまで、あるいは新しい道具を手に入れるまで、入れない場所があるのです。作り手が手本に挙げたのは『ゼルダの伝説』と『メトロイド』でした。

戦い方は覚えやすくできています。当時のGAME Watchの説明を借りると「通常攻撃ボタンを連打するだけでバットマンは多彩な攻撃を繰り出す。コンボ数によりさらに強力な攻撃が可能になる」。

隠れて進む場面もあります。同じ記事は「壁に隠された敵の位置が見え、敵の顔の向きまでわかるので背後をとりやすい」と書いています。捜査モードに切り替えると画面の色が変わり、通気口のような目印が浮かび上がります。

パズル好きへの土産もありました。リドラー(なぞなぞ好きの敵)の収集物が240個。なぞなぞの答えに関わる場所を探し、そこを見つけて記録していく遊びです。本編とは別の目で病院を見直すことになります。

脚本はポール・ディニ。声はケビン・コンロイ、マーク・ハミル、アーリーン・ソーキン。マーク・ハミルのジョーカーは、翌年の賞にも結びつきました。

9点台がずらりと並び、ギネスにまで載った

当時の反応は、割れませんでした。ほとんどが高い点です。

Metacriticの平均はXbox 360版が92点、プレイステーション3版とWindows版が91点。

IGNのグレッグ・ミラーは9.3点をつけ、「史上最高のコミック原作ゲーム」と書きました。GameSpotによる当時のビデオレビューのサムネイル「Batman: Arkham Asylum Video Review by GameSpot」(GameSpot, YouTube)のサムネイルより

Edgeは8点で「現代のスーパーヒーローゲームでは、かなりの差をつけて最良」。ユーロゲーマーのダン・ホワイトヘッドは9点で「ヒーローゲームでこれに並ぶものはない」と評しています。

ほかも同じ調子でした。Game Informerが9.5点、Giant Bombが5点満点、GameSpotが9点、Computer and Video Gamesが9.2点、Wiredのクリス・コーラーが9点、デイリー・テレグラフが9点。1UP.comのティエリー・グエンはA−、X-Playは5点満点の4点です。

点の高さは記録にもなりました。ギネス世界記録に「最も高く評価されたスーパーヒーローゲーム」として、平均91.67点で載っています。

売れ方も追いつきました。北米の集計では発売後5日で約59万3千本。3週間で世界200万本近く、9月末には250万本。2011年10月の時点で430万本です。

賞も続きました。2010年のBAFTAでBest GameとGameplay、同年のGDCでBest Game Design、2009年のSpike Video Game Awardsでスタジオ・オブ・ザ・イヤー。Interactive Achievement Awardsでは、ゲームデザインと脚色、それにマーク・ハミルの演技が選ばれました。

ひとつだけ予定と違ったのがWindows版です。2009年5月の告知ではPC版も8月25日と書かれていましたが、実際に北米で出たのは9月15日でした。

日本語版は年をまたぎ、記録は続編に渡った

日本語版が出たのは、北米から約5か月後です。2010年1月14日、スクウェア・エニックスから7,980円(税込)。プレイステーション3とXbox 360で、CEROはC(15歳以上対象)でした。

GAME Watchのレビューは2010年1月21日、筆者は勝田哲也さん。見出しはこうです。「“バットマン・ゲーム”の決定版ついに登場」。

同じ記事の言葉を、もう一つ借ります。「バットマンというキャラクターでしか表現できないゲーム性を持った、『原作付ゲーム』のお手本のような作品」。原作つきゲームの評判が書き換わっていく音が、ここで聞こえます。

ギネスの記録は長くは持ちませんでした。2011年の続編『バットマン アーカム・シティ』に抜かれています。抜いたのが同じ会社の次の作品だった、というのが少し面白いところです。『バットマン アーカム・シティ』のキーアートSteam「Batman: Arkham City - Game of the Year Edition」(Warner Bros. Interactive Entertainment)より

遊べる場所も増えました。Mac版が2011年11月3日、プレイステーション4とXbox One版が2016年10月18日、Nintendo Switch版が2023年12月1日に出ています。

原作つきだからと敬遠して、あとで驚いた一本はありますか

年号を書かないと記事が終わった気がしないので、もう一度書いておきます。2009年8月25日、火曜日。今日でちょうど17年です。

17年経って残っているのは、92点という数字よりも、言葉の意味の変わり方でしょう。「原作つき」は、もう出来の悪さを表す言葉ではなくなりました。

あなたにも、原作つきだからと期待していなかったのに、遊んでみて驚いたゲームはありますか。

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