HISTORY · 2026-10-07
ライフゲーム(1970) — 二つの規則だけの升目が、計算機の力を持った
コンウェイの一人遊び、ガードナーの連載、そしてグライダー銃
はじめに — 升目の上の、二つの規則
これは1970年に世に出た、一人用の遊びである。方眼紙に升目を塗り、決まった規則で世代を進める。塗った升目が「生きている」細胞になる。
作ったのはイギリスの数学者ジョン・ホートン・コンウェイ。名前は「ライフ」といい、いまは「ライフゲーム」の名で知られる。
遊び手がするのは、最初の配置を決めることだけだ。あとは規則が盤面を動かしていく。勝ち負けも、得点もない。
方眼の上を動く、五つの升目の図形(イメージ・AI生成)
その時代の文脈 — 1970年10月、ガードナーの連載
世に広まったきっかけは、雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』の1970年10月号だ。マーティン・ガードナーの連載「数学ゲーム」が、コンウェイの新しい一人遊び「ライフ」を紹介した。
ガードナーはコンウェイ本人との会話をもとに、この記事を書いている。出典は、末尾の参考文献に挙げた。
コンウェイの狙いは、自己複製する機械の考え方を、もっと単純な形にすることだったとされる。1940年代のジョン・フォン・ノイマンの研究が背景にある。
時代の追い風もあった。安い小型コンピュータが研究室に入りはじめ、空いた時間にライフを走らせる人が現れた。紙と鉛筆でも、機械でも遊べる。そこが強かった。
1970年ごろの小型計算機と、方眼の紙(イメージ・AI生成)
メカニクス — 三つ、二つ、それ以外
規則は短い。空の升目は、周りの八つのうち、ちょうど3つが生きているとき、次の世代で生まれる。
生きている升目は、周りの生きている数が2つか3つなら、生き残る。それ以外では死ぬ。この規則は「B3/S23」と書かれる。
盤面は動かないものも、点滅するものも、斜めに進むものも生む。進む小さな形は「グライダー」と呼ばれる。五つの升目だけでできている。
コンウェイは当初、有限の初期配置は無限には増えないと予想していた。賞金50ドルが、その反証にかけられた。
1970年11月、MITのビル・ゴスパーの班が答えを出す。30世代ごとにグライダーを撃ち出す配置、「グライダー銃」だ。予想は崩れた。
中心の升目と、周りの八つの升目(イメージ・AI生成)
現代への系譜 — 単純な規則が、計算の力を持つ
ライフは、理論上はチューリングマシンと同じ力を持つとされる。アルゴリズムで計算できることなら、この盤面の上でも計算できるという意味だ。
つまり、二つの規則だけの升目の世界の中に、計算機が作れる。ここまで単純な規則から、ここまで複雑な振る舞いが出る例は珍しい。
この発想は、後のパズルにも見える。少ない規則の組み合わせから、遊び手が仕掛けを見つけていく設計だ。『Baba Is You』のような、規則そのものを動かす作品も同じ系統に置いて読める。
ただし、これは私の読み方である。コンウェイ本人が、これらの作品との関係を述べた証拠は確認できていない。系譜というより、同じ問いに立つ作品群と見るのが正確だろう。
同じ形が次々と斜めに進む様子(イメージ・AI生成)
参考文献
本記事で参照した情報源:
・LifeWiki: Conway's Game of Life
・Wikipedia: Conway's Game of Life
・Wikipedia: John Horton Conway
・Martin Gardner, "Mathematical Games: The fantastic combinations of John Conway's new solitaire game 'life'", Scientific American, October 1970(LifeWiki の記述を通じて確認)
おわりに — 作者が、少し複雑だった理由
歴史的にこの作品が示したのは、規則の少なさと、結果の豊かさは両立するということだった。
コンウェイは2020年4月11日、新型コロナウイルスの合併症で亡くなった。公開された伝記的な記述では、ライフばかりが語られることを、本人は快く思っていなかったとされる。
それでも、本人は自分の仕事に誇りを持っていたという。二つの規則から始まる世界は、いまも誰かの方眼紙の上で動いている。
静かな夕暮れに残る、小さな図形(イメージ・AI生成)
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