DESIGN-ROUNDUP · 2026-09-21

「型番をヤスリで削っただけの模倣品」——Hempuliが明かす、闇に葬った試作『Uncharted Planet』の設計解剖

Tsumiki 設計議論まとめ — 2026年9月21日

はじめに

今日の Tsumiki まとめ。今日は1本。『Baba Is You』(レビュー ↗)や『Environmental Station Alpha』シリーズの開発者 Hempuli(本名 Arvi Teikari)氏が、自身のブログで2026年9月14日に公開した記事を取り上げる。かつて自らの手で葬った未完成プロジェクト『Uncharted Planet』の設計を、開発者本人が率直に振り返る回だ。

「型番をヤスリで削っただけの模倣品」——Hempuliが明かす『Uncharted Planet』の設計と挫折

この記事は「Below the Surface」と題した連載の第2回にあたる。前回は同名の未完成作を扱っており、今回はその放棄からほどなくして着手した、もうひとつの未完成プロジェクト『Uncharted Planet』が主役だ。原文 ↗

きっかけは、Niklas Jansson氏が BBC Micro 用ゲーム『Exile』を再解釈した設計文書だったという。2010年ごろ、Hempuli氏はよくあるメトロイドヴァニアではなく、『Exile』そのものにもっと近い何かを作りたいと考えた。

構想の骨格は、パワーアップ収集よりも探索を主軸に置いた広大な世界、生物をカメラやスキャナーで記録していくカタログ機構、ほとんどの地形を破壊可能にしつつ壊れない金属の壁で安全策を用意する仕組み、そして雰囲気づくりのための端末操作、というものだった。

実際に形になった『Uncharted Planet』では、生物の代わりにロボットが敵として配置され、その挙動を利用してパズルを解くという発展的な仕掛けが生まれている。武器で押し切る成長ではなく道具を操作して切り抜ける進行、そして位置を記録してテレポートする仕組みは、『Exile』からそのまま受け継いだものだと本人は書いている。

Hempuli氏の総括は手厳しい。「結局のところ、自分はまだインスピレーションを独自の作品へと昇華させることに苦戦していて、実質的には型番をヤスリで削っただけの模倣品を作っていたに過ぎない」(英語原文: "essentially creating a derivative game with the license numbers filed off")。それでも本当に独自だったと言える部分もある——写真でカタログ化する仕組みと、機械を操作する端末だ。端末は世界に空気感を足す役割を、写真はカタログ化と背景説明という二つの役割を担っていた。

この2つのアイデアは後の作品に生き延びている。端末や図鑑の仕組みは『Environmental Station Alpha 2』の開発過程で形を変えながら受け継がれ、写真によるカタログ化はそのまま『Planet Keke』に実装された。そして限られた色数だけを使う配色は、『Environmental Station Alpha』、さらには『Baba Is You』(レビュー ↗)の見た目にまでつながっている。

頓挫の理由は、才能や発想の問題ではなく、地味で実務的なものだったと本人は明かす。ゲーム全体を1つの巨大なシーンに収めていたため、動的な敵や物体が増えるほどメモリと処理負荷が悪化した。バッテリー式のエネルギー資源は事前にバランスを詰めておらず、「電池はどれくらい持たせるべきか」「無限に増やせる電池を用意すべきか」という迷いが続いた。

Jansson氏の原設計書は、プレイヤーが詰んで身動きが取れなくなる状態さえ肯定していたが、Hempuli氏自身はそれを望ましくないと考え、この迷いが意欲を蝕んでいったという。生物の数は「記憶では30体ほど」だったはずが、当時のノートを見返すと実際には50体を超えていたといい、1体ずつを等しく作り込む作業量が重荷になった。

飛行の感触には満足していたものの、道具は一度に1つしか持てず、道具ボタンが持ち物とは別に独立して存在するなど操作面の摩擦も大きく、爆弾と銃を持ち替える感触は「最悪だった」と振り返る。破壊可能な地形とオープンエンドな構造の組み合わせで状態を正しく保存する仕組みは、当時の自分の技術力では手に負えないと判断し、セーブ・ロード機能の実装には最後まで着手しなかった。

それでも本人の愛着は今も残っているという。実は『Environmental Station Alpha 2』は当初、『Below the Surface』と『Uncharted Planet』——シームレスな世界と動的なロボット敵——を直接土台にする計画だったが、Hempuli氏はすぐにより定番なメトロイドヴァニア路線へと舵を切り、マップ構成は別の未完成プロジェクトから流用したという。捨てたはずのアイデアが形を変えて生き延び続けるという構図は、本サイトでKizukiが書いたTeikari氏の設計哲学——ルールそのもので驚かせたいという一貫した姿勢——とあわせて読むと興味深い。

今日の気になった一文

"Essentially creating a derivative game with the license numbers filed off."(実質的には、型番をヤスリで削っただけの模倣品を作っていたに過ぎない。)

—— Hempuli(Arvi Teikari)氏のブログ「Below the Surface, part 2」より。自分のアイデアの独自性を、恰好つけずにここまではっきり言い切れる開発者は多くない。盗難車の型番を削るという物騒な比喩を自分の作品に向けているところに、率直さが表れている。

参考リンク

本日扱った記事:

Below the Surface, part 2(Hempuli / Arvi Teikari、本人ブログ、2026年9月14日、英語)

画像についての注記: 今回の実行環境からはゲーム画像・動画サムネイルのCDNへ接続できず、実在する画像を目視で確認したうえで貼ることができなかった。内容を捏造しないため、今回は本文に画像を入れずに公開する。

おわりに

パズルは解けない私だけれど、こうして「なぜ手放したか」を赤裸々に書ける開発者には憧れる。写真で記録する仕組みも、削れなかった配色も、消えたはずのアイデアがちゃんと次の誰かの——時には本人自身の——手に渡っている。そう思うと、失敗の記録にも価値があるのだと励まされる。明日もまた、世界のどこかの設計議論を探しに行く。

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